分断の時代に、私たちはどう対話すべきか―参政党の躍進を考える


はじめに:可視化された「分断」

今回の参議院選挙の結果は一つの衝撃をもって受け止められました。
特に注目を集めたのが、外国人排斥的なスローガンを掲げ、14議席を獲得した参政党の躍進です。
一部報道では、その伸長に驚きの声があがり、SNSでは「この国はどこへ向かうのか」「隣人が急に他人に見えた」といった投稿も見受けられました。

けれども、この結果は突然現れたものではありません。
むしろ、これまで社会の奥底で静かに、けれど確実に進行してきた“分断”が、とうとう表面化したとも言えます。
本記事では、行政書士として法制度と向き合う視点から、この分断がなぜ生じ、どう向き合うべきかを掘り下げてみたいと思います。


なぜ分断は深まったのか? ―社会の奥にある「声なき不満」

今回の選挙における参政党支持層の多くは、都市部の若年層や地方の中高年層でした。
一見すると対極に見える層が、なぜ同じ「極論」に魅かれたのか。
そこには共通する一つの感情があります。

「もう、自分たちの声なんて誰も聞いてくれない」

これは極端な主張を求めた結果ではなく、何度も「常識」や「制度」に裏切られた結果としての“あきらめ”ではないでしょうか。

経済的な不安の蓄積

・働いても豊かになれない
・物価ばかりが上がり、税負担も重くなる
・年金制度の持続性にも疑問がある

制度への不信感

・政治家の不祥事が繰り返される
・霞が関や永田町は「遠い世界」の話に見える
・マスコミは偏向しているように感じる

「グローバル化」がもたらした孤立感

・多様性や国際協調が「一部の人たち」の言葉に聞こえる
・地域の文化や伝統が軽視されているという感覚

こうした感情が積み重なった結果、「常識」や「制度」に懐疑的な政治勢力へと票が流れる土壌が形成されていったのです。
「外国人排斥」というスローガンが受け入れられたのは、実は外国人への憎しみが原因ではなく、「誰も自分の不安に向き合ってくれない」という孤独と焦燥の表現だった可能性があるのです。


「敵」を設定することで生まれる一体感

興味深いのは、こうした政治運動が「敵」を設定することで団結を生み出すという構造です。

  • 外国人
  • 既得権益者
  • エリート
  • マスコミ

これらを「脅威」として語ることで、支持者同士の間には疑似的な一体感が生まれます。
しかし、その「団結」は、対話ではなく排除によって得られたものであるため、結果として社会の分断を深めてしまいます。


対話とは「同意」ではなく「理解」すること

では、こうした分断にどう向き合えばよいのでしょうか。
行政書士という制度の担い手として、私が大切にしたいのは、「対話」の回復です。

ここで言う対話とは、「正しい情報を教えてあげること」ではありません。
むしろ逆です。まず相手の話を聞き、なぜそのように感じているのかを理解することから始まります。

  • 「なぜその政党に期待を寄せたのか」
  • 「どの場面で“制度に見捨てられた”と感じたのか」
  • 「どんな社会を望んでいるのか」

これらを「正しい/間違っている」でジャッジするのではなく、その背景にある文脈を共有することが、分断を乗り越える第一歩となります。

対話の障害となるもの

  • 「相手は無知だ」「洗脳されている」という態度
  • データや事実で相手を“言い負かす”構え
  • 対話の主導権を常に自分が握ろうとする姿勢

対話は、常に対等な立場でこそ成立します。
そしてそれは、制度の説明にあたる行政書士としての姿勢にもつながるはずです。


「制度」が果たすべき本来の役割とは

私たち行政書士は、法令に基づいて手続きを行うことを仕事としています。
しかし、そこで本当に大切なのは「書類を整えること」ではなく、制度の意味を伝えることです。

制度は誰のものか?
法律は誰のためにあるのか?

それは間違いなく、声を上げられない人々のためにあるべきものです。
にもかかわらず、「制度は自分を守ってくれなかった」「制度は自分の敵だ」と感じる人が増えているのだとしたら、それは制度側の発信力の不足であり、私たち実務者の説明不足でもあるのかもしれません。


おわりに:分断の向こうにある希望

今回の選挙結果は、単に「極端な政党が票を伸ばした」というニュースではなく、この国に横たわる“希望の欠如”の表れだったのではないでしょうか。

  • 誰かのせいにしなくても生きていける社会
  • わからないことを素直に聞ける空気
  • 違う意見の人とでも話せる余白

こうした社会の土壌をもう一度耕すには、制度の言葉ではなく、人の言葉で語ることが求められます。

行政書士として、制度のプロとして、まず私たちが「話を聞く側」になる。
その積み重ねが、きっと分断を乗り越える一筋の道になると、私は信じています。

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