民泊新法の「180日ルール」でも利益を出す!住宅宿泊事業の収益最大化ロードマップ
住宅宿泊事業(いわゆる「民泊新法」の民泊)で、きちんと利益を残していくのは簡単ではありません。
年間180日の営業日数制限に加え、管理委託費や清掃費、OTA手数料がかさんでいくと、
「思ったより稼働しているのに、手元にお金が残らない…」
という状況になりがちです。
とはいえ、収益の「構造」と「打ち手」を整理していけば、同じ物件でも手残りを大きく変えていくことは十分に可能です。
ここでは、調査データや実務の感覚を踏まえつつ、住宅宿泊事業者が収益を上げるためのポイントを、できるだけ実務寄りに整理してみます。
1.住宅宿泊事業で「収益を上げる」とは何か
まずは、ざっくりとした収益構造の整理からです。
宿泊事業の収益は、基本的には次のように分解できます。
- 売上
=「1泊あたりの単価」×「宿泊日数(稼働日数)」
+「オプション・付帯サービスなどの追加収入」 - 利益
= 売上
−「固定費(ローン・家賃・通信費・保険など)」
−「変動費(清掃費・リネン費・光熱費・OTA手数料など)」
住宅宿泊事業の場合は、ここにさらに「年間180日まで」という稼働上限がかかります。
つまり、
- 180日の枠の中で、どれだけ単価と付帯サービスで売上を厚くできるか
- 同時に、清掃・管理の仕組み化などで運営コストをどこまでコントロールできるか
この二つが、収益アップの大きな方向性になります。
2.価格戦略で「取りこぼし」を減らす
2-1.ダイナミックプライシングの考え方
一年を通して、同じ料金のままにしていないでしょうか。
収益性の高いホストの多くは、何らかの形で「ダイナミックプライシング(需要に応じた価格調整)」を取り入れています。
例えば次のようなイメージです。
- 地域のイベント(スポーツ大会・フェス・コンサート・花火大会など)の期間は、料金を強気に設定する
- ゴールデンウィークや夏休み、年末年始は「繁忙期料金」を明確に分ける
- 予約が入りにくい平日やオフシーズンは、早期割引・連泊割引で稼働率を確保する
最近は、価格自動調整ツールを使って、周辺相場や需要を踏まえた料金を自動で提案してくれるサービスもあります。
「自分で毎日価格調整するのは無理」という場合は、ツールに基本値を任せて、最後の微調整だけ自分で行う形も現実的です。
さらに、初心者の方におすすめなのが、
- 「近くのビジネスホテルの価格をチェックする」
というアナログな方法です。
同じエリア・同じようなグレードのビジネスホテルが、
平日と休日、通常期と繁忙期で、どのくらい料金を変えているかを定期的に確認しておくと、
- どこまで値上げしても受け入れられそうか
- 逆に、安くしすぎて「もったいない」状態になっていないか
が感覚として掴みやすくなります。
2-2.長期滞在・ワーケーション向け料金を用意する
年間180日の上限を意識すると、「短期の泊まり替え」で日数を使い切るよりも、
一定期間まとめて借りてくれるゲストを確保した方が、収益面で有利になるケースが多くなります。
そのための具体策としては、
- 7泊以上・14泊以上・30泊以上などで、段階的な連泊割引を設定する
- 「30泊ワーケーションプラン」「長期滞在プラン」など、長期ゲスト向けのプラン名を明示する
- 清掃頻度を調整しつつ、長期滞在でも快適に過ごせるよう、リネン交換・ゴミ出しのルールを分かりやすく決めておく
といったものが挙げられます。
リモートワークが広がった今は、
「日中はオンライン会議、夜や休みに観光」というニーズも多いため、
- 安定したWi-Fi
- 作業用デスク・チェア
- コンセントの数と位置
など、仕事がしやすい環境を整えると、長期ゲストの獲得につながりやすくなります。
3.付加価値で「1泊あたりの満足度」を高める
3-1.宿泊に「小さな+α」をのせる(法令に配慮した形で)
宿泊費だけで勝負しようとすると、どうしても価格競争に巻き込まれがちです。
そこで有効なのが、過度なコストをかけずに満足度を上げる「おもてなし」を工夫することです。
例えば、次のようなものが考えられます。
- ウェルカムサービス
地元のお菓子やドリップコーヒー・お茶パックなどを、無料サービスとして用意する。
特別なことをしなくても、「長旅お疲れさまでした」という気持ちが伝わるだけで、レビューの印象は大きく変わります。 - レンタル品の充実
貸し自転車、ボードゲーム、プロジェクター、ホットプレートやたこ焼き器などの調理家電など、
「この宿ならではの楽しみ方」が増える備品を揃えると、価格以外の魅力で選ばれやすくなります。
なお、食事やアルコールの「有料」提供には要注意です。
- 朝食セットや軽食を有料で提供する場合は、飲食店営業許可が必要になるケースが多い
- お酒を販売する場合は、酒類販売業免許が必要になる
といった法令上のルールがあり、無許可での提供は違法となるおそれがあります。
自治体によって細かな運用は異なるため、どうしても有料提供を検討する場合は、事前に保健所や税務署等に相談することをおすすめします。
まずは、
- 許可がなくても問題ない範囲の「無料サービス」
- レンタル品や設備の充実
から着実に整えていくのが、安全かつ現実的な方針です。
3-2.地域体験コンテンツと組み合わせる
地方の住宅宿泊事業では、「地域体験」と組み合わせることで、高付加価値化している例も増えています。
- 近隣の農家さんと提携し、「農業体験付きステイ」を企画する
- 陶芸・木工・ガラスなどの工房と連携し、「体験教室+宿泊プラン」を打ち出す
- 地元ガイドと協力して、町歩きツアーや歴史探訪ツアーをセットにする
こうした体験は、単価アップにつながるだけでなく、レビューやSNS投稿のきっかけにもなります。
ホストが一人で全部抱え込むのではなく、「地域の人と一緒につくるコンテンツ」として考えると、無理なく広げていきやすくなります。
4.集客とリピートで「稼働率」を底上げする
4-1.OTAで選ばれるページ作り
多くのゲストは、まずOTA(AirbnbやBooking.comなど)の検索結果をざっと眺めて、
「良さそうな物件だけ詳しく見る」という行動をとります。
このとき、見直したいポイントは次のあたりです。
- トップ写真は、一番魅力的なカットになっているか
- 室内写真は、明るい時間帯に撮影したものを中心にしているか
- 生活感が出すぎていないか(逆に、まったく生活感がなくて冷たい印象になっていないか)
- 説明文で「この宿は誰に向いているのか」(家族向け・ワーケーション向け・スポーツ遠征向けなど)がはっきり伝わるか
- ハウスルールが、怒り口調ではなく、落ち着いた丁寧な言い回しで書かれているか
レビュー対策としては、
- チェックアウト後に、ひとこと感謝とレビュー依頼のメッセージを送る
- トラブルが起きたときは、早めに誠実に対応し、できるだけ不満を残さないようにする
といった地道な積み重ねが、評価スコアの安定につながります。
4-2.「直販チャネル」とGoogleビジネスプロフィールを育てる
OTAは集客力が高い一方で、手数料が利益を圧迫します。
そこで、中長期的には「直接予約してもらう窓口」を少しずつ用意していくのがおすすめです。
いきなり本格的な予約サイトを作る必要はありません。
ハードルの低い順に並べると、例えば次のようなステップが考えられます。
- Googleビジネスプロフィール(Googleマップ)の登録
施設名・住所・電話番号・写真などを登録しておくことで、
「エリア名+民泊」「施設名」で検索した人に見つけてもらいやすくなります。
ここから公式サイトや問い合わせ先に誘導することもできます。 - LINE公式アカウントの開設
宿泊後のゲストに友だち登録してもらえれば、次回以降はLINEから直接連絡をもらえるようになります。
空室情報や長期滞在プランなどを、必要なタイミングで案内しやすくなります。 - シンプルな自社サイトの作成
高機能な予約システムまでは不要でも、
「施設の紹介ページ+問い合わせフォーム」だけの簡単なサイトがあるだけで、
直接問い合わせ→予約につながる可能性はぐっと高まります。
こうした直販チャネルは、最初は動きが少なくても、
リピーターが増えるほどじわじわと効いてくる部分です。
「OTAだけに頼りきりにならない状態」を少しずつ作っていく意識が、大事なリスクヘッジになります。
5.運営効率とコスト管理で「利益率」を上げる
5-1.清掃・リネン・備品のコスト構造を見直す
住宅宿泊事業では、清掃やリネン、消耗品のコストが、気づかないうちに利益を圧迫しがちです。
例えば、次のような点を一度洗い出してみると良いです。
- 清掃を全て外注しているのか、一部は自分で行っているのか
- リネンはリースか、自前購入+洗濯か(それぞれの費用と手間はどうか)
- アメニティや消耗品は、まとめ買い・定期配送などで単価を抑えられないか
また、毎回の清掃で「ここが掃除しづらい」と感じる場所があるなら、
家具の配置や収納の仕組みを見直すことで、清掃時間を短くできることがあります。
時間と移動の負担も含めて、トータルで効率を考えていくことが大切です。
5-2.AI・IoT・システムの活用で省力化する
最近は、AIやIoTを活用した省力化の手段も増えています。
- スマートロックで非対面チェックイン・チェックアウトを実現する
- よくある質問には、定型のメッセージやチャットボットで一次対応する
- 清掃スタッフとの連絡にアプリを使い、清掃完了写真や報告を標準化する
すべてを一気に自動化する必要はありませんが、
「特にストレスが大きい作業」から順に仕組み化していくことで、
ホスト自身の時間と気力の余裕が生まれ、その分を戦略や改善に回せるようになります。
6.立地・物件戦略と「次に仕込む物件」の考え方
今運用している物件の立地を変えることはできませんが、
今後も住宅宿泊事業を続けていくつもりであれば、「次に仕込む物件」の選び方が収益に大きく影響します。
チェックしておきたいポイントとしては、
- 観光地・駅・主要施設へのアクセスは良いか
- 周辺にどの程度の競合施設(ホテル・旅館・民泊)があるか
- スーパー・コンビニ・飲食店など、ゲストが生活しやすい環境か
- 駐車場の有無、車移動が前提になるエリアかどうか
などが挙げられます。
地方では、「観光地から車で20〜30分程度の郊外」や、
「工業団地・港湾エリアに近い住宅」など、観光とビジネスの両方を狙える立地が意外な狙い目になることもあります。
7.180日制限を前提に、他用途との組み合わせも検討する
住宅宿泊事業は、「年間180日」という上限が法律で決まっています。
収益を最大化するためには、
- 180日分は、できるだけ高単価・高需要の時期に集中させる
- 残りの日数は、マンスリーマンション利用や一時的な賃貸など、別用途として活用できないか検討する
という発想も出てきます。
ここで重要になるのが、契約形態の選び方です。
通常の賃貸借契約(普通借家契約)を結んでしまうと、借地借家法により借主の権利が強く保護されます。
その結果、
- 契約期間が終わっても退去してもらえない
- 民泊営業に戻したいのに、物件を空けてもらえない
といったリスクが発生します。
そのため、
- 定期借家契約
- 一時使用目的の賃貸借契約
といった契約形態を活用し、「契約終了後には確実に明け渡してもらえる設計」にしておくことが重要です。
ただし、これらの契約にも法律上の要件や書式上の注意点がありますので、実際に導入する際は、不動産の専門家や行政書士・弁護士等に相談しながら進めることをおすすめします。
また、用途地域や建築基準法・旅館業法との関係で、「住宅宿泊事業」「旅館業」「マンスリー利用」「事務所利用」などをどこまで組み合わせられるかは、自治体や物件ごとに条件が異なります。
特に定期借家契約の場合は契約期間を30日未満にしてしまうと、民泊と同じと受け取られ180日規制に引っかかってしまう可能性があります。
具体的なプランを検討する段階では、所管行政庁の窓口への確認もセットで進めると安心です。
8.まとめ:数字と現場感覚、両方を見ながら育てていく
住宅宿泊事業で収益を上げるためのポイントを、あらためて整理すると次のようになります。
- 価格戦略(ダイナミックプライシングや長期滞在プラン)で、「単価」と「稼働」をコントロールする
- 過度な法令リスクを取らずに、ウェルカムサービスやレンタル品・地域体験などで付加価値を高める
- OTAのページ改善とレビュー対策に加え、GoogleビジネスプロフィールやLINE、自社サイトなどで直販チャネルを少しずつ育てる
- 清掃・リネン・備品・システムを見直し、運営コストと手間を抑えて利益率を高める
- 180日制限を前提に、定期借家契約なども活用しながら、物件全体の収益設計を中長期で考える
一度に全部をやろうとすると大変なので、
いま一番のネックが「単価」なのか「稼働」なのか「コスト」なのか
を整理して、優先度の高いところから少しずつ手を打っていくのがおすすめです。
「この物件だと、どんなプラン設計が現実的か」「定期借家契約をどう組み込めばよいか」など、個別事情が絡む部分は、専門家と一緒にシミュレーションしてしまった方が早い場面も多いです。
焦らなくて大丈夫ですので、数字と現場感覚の両方を大事にしながら、じわじわと利益の出る形に近づけていきましょう。
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