民泊の一元管理システムとは?2026年度稼働予定の新ルールをやさしく解説
2025年11月28日付の報道で、観光庁が「登録なしで営業する違法民泊を仲介サイトから排除するため、民泊新法・特区民泊・旅館業法(簡易宿所)を一元的に管理する新システムを、来年度早い時期の稼働を目指して構築する方針」を示したと伝えられました。

同じ時期に、大阪市の特区民泊新規受付終了や、東京都豊島区での営業日数・エリア制限など、各地で規制強化のニュースも相次いでいます。


こうした動きを踏まえつつ、この記事では真面目に運営しているホスト・オーナーの方向けに「何が変わりそうか」「今のうちに何をしておくと安心か」を整理します。
観光庁が構想している新しい「一元管理システム」(仮称)は、2026年度早期の稼働を目標に検討が進められています。
いきなり「システム」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、イメージとしては、
- 民泊に関する公的な許可・届出情報を1か所に集めて
- それを民泊仲介サイトや宿泊予約サイトと照合できるようにして
- 違法民泊や番号貸しなどをふるい落とす
といった仕組みになる見込みです。
「ちゃんと届け出しているのに、どう影響するの?」という声が多そうですので、順番に見ていきます。
1. 一元管理システムで何が変わりそうか
まずは、新システムの大まかなイメージです。
※現時点では「方針段階」であり、最終的な仕様は今後のシステム設計・公募等の過程で具体化されていく予定です。
1-1. 3つの制度を「1つの地図」にのせる構想
民泊と似た形態の宿泊は、現在大きく3つの制度に分かれています。
- 住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)
- 国家戦略特区の「特区民泊」
- 旅館業法上の「簡易宿所」
今までは、
- 民泊新法:観光庁・都道府県等
- 特区民泊:各特区の自治体
- 簡易宿所:厚生労働省・保健所ルート
と、それぞれ別々に管理されてきました。
新しい一元管理システムでは、これら3つの許可・届出情報を横断的に検索・確認できる共通データベースを整備し、そこから仲介サイト・OTA(宿泊予約サイト)と情報連携していく方向性が示されています。
1-2. サイト掲載情報との「自動照合」がポイント
報道ベースの情報によれば、
- 一元管理システムに登録された「公的な」許可・届出情報と
- Airbnb などの民泊サイトや、各 OTA に掲載されている物件情報
を機械的に照合し、
- 番号が存在しない
- すでに廃止・抹消されている
- 住所や部屋番号が明らかに違う
といったケースを検出しやすくする構想が示されています。
その結果として、仲介サイト側が掲載停止・非表示などの対応を取りやすくなることが期待されていますが、具体的な照合方法やチェック項目は、今後のシステム仕様の検討・公募の過程で固まっていく予定です。
「違法民泊を一網打尽にする魔法の箱」というよりは、
・これまで紙台帳や縦割りで見えにくかった情報を、デジタルでつなぎ直す
・その基盤の上で、サイトや自治体が動きやすくなる
という“土台づくり”と捉えておくのが現実的だと思います。
2. なぜ今こんな仕組みを作ろうとしているのか
背景には、いくつかの事情が重なっています。
2-1. 違法民泊・番号貸しの長年の課題
ここ数年、次のような運用が問題視されてきました。
- 全く届出・許可を取らずに「闇民泊」として営業
- 届出をした人が自分では運営せず、第三者に「番号だけ貸す」
- 一度行政指導を受けても、名義やサイトを変えて再登場する
紙ベース・バラバラの台帳管理では、こうした実態を追い切るのに限界があります。
そこで、公的な登録情報をデジタルで一元化し、予約サイトと機械的に突き合わせる基盤を作ることで、「そもそも番号が存在しない」「とっくに廃止届が出ている」といった物件を、システム上で見つけやすくしようとしている状況です。
2-2. 縦割り行政では全体像が見えない
もう一つの課題は、「宿泊キャパ」「無届け・グレー物件の偏在」などの全体像が見えにくいことです。
制度ごとに担当省庁・自治体が分かれている結果、
- あるエリアにどれくらい宿泊施設があるのか
- どこに無届け・グレー物件が集中しているのか
といったことを一目で把握する方法がなかったのが実情です。
データを一元管理できれば、
- オーバーツーリズムが進んでいる地域
- 無届け物件が多いエリア
などの把握がしやすくなり、政策づくりや取り締まりを効率化したいという狙いも見えてきます。
2-3. 訪日客増と「規制強化」の流れ
訪日客6,000万人時代を見据える中で、
- 「観光は増やしたいが、生活環境の悪化は困る」
- 「ルールを守っている事業者と、そうでない事業者をきちんと区別したい」
という声が、国・自治体・住民の側で強くなっています。
実際に、
といった、かなり踏み込んだ規制強化も進んでいます。
その流れの中で、
- 国:一元管理システムで違法民泊をふるい落とす
- 自治体:営業日数やエリアの制限を強化する
という二段構えの対策が組み合わさりつつある、というのが現在地です。
3. 真面目に運営している民泊事業者への影響
「ちゃんと許可も届出もしているのに、またルールが増えるのか…」と感じるオーナーさんも多いと思います。
ただし今回の仕組みは、真面目に運営している事業者にとってプラスの側面も大きいと考えられます。
3-1. 適法物件の「ブランド価値」が上がる可能性
一元管理システムとサイト側の照合が進めば、
- 無届け民泊
- 番号貸し
- 廃止済み物件の“ゾンビ掲載”
といった物件は、掲載停止・露出減の方向に行きやすくなります。
そうなると、
- きちんと許可・届出をしている物件
- 情報が正確で、トラブルが少ない物件
が相対的に評価されやすくなり、「きちんとやっていること」自体が競争力につながる可能性があります。
3-2. 一方で「うっかり違反」は炙り出されやすくなる
注意したいのは、次のようなケースです。
- 事業廃止・休止・部屋数変更をしたのに、届出の変更が追いついていない
- サイト上の住所・部屋番号・名称が、自治体の登録情報と微妙に違う
これまでは見逃されていた軽微なズレも、機械的な照合の結果として指摘されやすくなる可能性があります。
「悪気はないけれど、形式上は違反」という状態を避けるためにも、
稼働前に一度、届出情報とサイト情報を総点検しておくことが安心材料になります。
4. 新システム稼働までにやっておきたい5つの準備
ここだけ読めば、「今、何をチェックしておけば良いか」が一通り分かるように整理しました。
4-1. 許可・届出情報とサイト情報の「ズレ」をなくす
まずは基本中の基本です。
- 届出番号
- 施設名
- 住所(号数・部屋番号まで)
- 部屋数・定員
などについて、
- 自治体に出している書類
- 民泊仲介サイトの管理画面
- 自社HPやパンフレット
を一度棚卸しして、「全て同じ内容になっているか」を確認しておくことをおすすめします。
特に重要なのは、
- 許可・届出情報とサイト情報の「完全一致」を目標にすること
です。
「まあこのくらいなら通じるだろう」という表記ゆれが、今後はチェック対象になってくる可能性があります。
4-2. 標識・現地表示とオンライン表示の整合
各制度ごとに、
- 玄関などへの標識掲示
- 届出番号や許可番号の表示義務
が定められています。
- 現地の標識
- サイト上の表示(物件ページ、ハウスルールなど)
に矛盾がないか、一度見直しておくと安心です。
特に、簡易宿所と民泊新法を物件や部屋ごとに使い分けているケースでは、
- どの部屋がどの許可なのか
- サイトの説明文と、実際の許可内容が揃っているか
を整理しておくことが大切です。
4-3. 仲介サイトの審査強化への備え
新システムの導入に合わせて、仲介サイト側も、
- 番号入力を必須にする
- 公的データベースとの照合を行う
といった審査強化を進めていく可能性があります。
その際にスムーズに対応できるよう、
- 許可証・届出書の控え
- 物件の権利関係を示す書類(登記簿、賃貸借契約など)
- 管理委託契約書(管理会社が入っている場合)
といった書類は、スキャンしてデータで保管し、すぐ出せる状態にしておくと安心です。
4-4. 内部管理体制・台帳・マニュアルの整備
複数物件・複数サイトで運営している場合は、例えば次のような管理台帳を作っておくと、「うっかり違反」防止に役立ちます。
- 物件ごとの
- 制度区分(新法・簡易宿所・特区など)
- 届出番号・許可番号
- 利用可能日数(民泊新法の180日規制など)
- 掲載しているサイト一覧
予約管理をエクセルや手作業だけで行っている場合は、
PMS やサイトコントローラーなど、予約の一元管理ツールの導入も検討の余地があります。
今後、サイト側の仕様変更(番号入力項目の追加など)が増えたとしても、
一つのシステム側で連携・対応しやすくなるからです。
4-5. グレーな運用の棚卸しと是正
最後に少しデリケートな部分ですが、あえて触れておきます。
- 名義だけ借りている
- 実態と届出が食い違っている
- 180日規制のカウントがあいまい
といった「グレーな運用」がある場合、新システム稼働後は一気にリスクが高まる可能性があります。
- そのまま続けるのか
- 是正して「きちんとした事業」として残すのか
を、今のうちに整理しておくことをおすすめします。
ここで大事なのは、「責めるための棚卸し」ではなく、「守りながら続けるための棚卸し」という発想です。
痛みを伴う見直しになる場面もありますが、その先に
- 近隣との関係悪化リスクの低減
- 行政指導や罰則リスクの低減
- 将来の売却・事業承継のしやすさ
といったプラスの面があることも、併せて意識しておくと良いと思います。
5. これからの民泊は「エリア戦略」と「制度設計」がより重要に
大阪の特区民泊終了方針や、豊島区の営業日数・エリア制限などを見ると、「どこで・どの制度を使って・どのくらいの日数で運営するか」によって、同じ民泊でも採算性が大きく変わる時代に入ってきたと言えます。
今後は、
- どのエリアで
- どの制度(新法・簡易宿所・特区など)を使い
- どのくらいの営業日数・単価で運営するのか
という「設計次第」で、
- 稼働率
- 利益率
- 将来の出口(売却・用途変更など)
が大きく変わってきます。
「規制が強くなったからやめる」か「条件の良いところだけ残して組み替える」かは、本来は収支シミュレーションや出口戦略も含めて設計し直すべきテーマです。
「規制で縛られる側」ではなく
「ルールを前提に、どう設計すれば事業として成り立つかを考える側」
に回れるかどうかが、これからの分かれ目になっていくと感じます。
6. 専門家に相談した方が安心なケース
次のような場合は、一度第三者の目で現在の状況を整理してもらうと安心です。
その相手として、行政書士などの専門家に相談されるのも一つの方法です。
- 以前に行政指導や近隣からの苦情があった
- 名義や運営主体が複雑で、自分でも整理しきれていない
- 複数の制度・複数サイトを使っていて、どこかにズレがありそうだと感じている
- 今後、新しい物件を増やしたいが、どの制度で行くべきか悩んでいる
- 大阪・豊島区のような規制強化が、自分のエリアにも広がらないか不安がある
「適法に整えておくこと」は、単にリスクを減らすだけではなく、
- 物件価値
- 口コミ・評価
- 将来の売却・事業承継のしやすさ
といった面でもプラスに働きます。
7. ご相談のご案内(民泊・簡易宿所をご検討の方へ)
当事務所では、
- 住宅宿泊事業(民泊新法)の届出
- 旅館業(簡易宿所)の許可申請
- 既存物件の「コンプライアンスチェック」
- 事業計画・収支シミュレーションのご相談(中小企業診断士として)
などを通じて、「ちゃんと合法的に」「続けられる形で」民泊を運営したい方のサポートを行っています。
- すでに運営中で、今のやり方で大丈夫か不安な方
- これから民泊・簡易宿所を始めてみたい方
- 規制強化のニュースを見て「うちはどうすべきだろう」と感じた方
は、お気軽にお問い合わせください。
一緒に、無理なく・長く続けられる形を考えていきましょう。
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ご相談は、どんな段階でも大丈夫です。
「手続きの流れを知りたい」「自分のケースで進められるか確認したい」「期限までに間に合うかだけ聞きたい」といった内容だけでもお気軽にお知らせください。
つむぎ行政書士事務所では、茨城県全域(水戸市・ひたちなか市・県央エリアを中心に、つくば・土浦など県南エリア、日立など県北エリアも含めて対応)で、建設業許可・産業廃棄物収集運搬業許可などの許認可申請、創業支援、補助金・経営相談をお手伝いしています。
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