建退共・中退共、どっちがいいの?徹底比較で最適な選択を

建退共vs中退共

社員の退職金制度を整えたい――そう考えたとき、建設業者の多くが迷うのが「建退共」と「中退共」のどちらを選ぶかです。
どちらも国が運営する公的な共済制度で、掛金が全額損金算入できるなど大きなメリットがあります。
しかし、制度の仕組みや対象範囲、経審(経営事項審査)での扱いなど、実務上の違いを理解せずに選んでしまうと、思わぬ不整合が生じることもあります。

この記事では、両制度の特徴を丁寧に整理し、実際に建設業者がどちらを選ぶべきかを判断できるよう、制度比較と考え方を詳しく解説します。


目次

建退共とは

制度の概要

建退共(建設業退職金共済制度)は、建設現場で働く人のために設けられた退職金制度です。
事業主が日ごとの掛金を負担し、従業員が退職した際に建退共本部から退職金が支払われます。
国が運営するため信頼性が高く、建設業界では広く普及しています。

対象者と掛金の仕組み

  • 対象者:建設現場で働く従業員、一人親方
  • 掛金方式
     以前は「証紙を購入し共済手帳に貼る」方式が主流でしたが、現在は電子申請方式も整備されています。
     日ごとに掛金を支払う仕組みのため、勤務日数の管理が欠かせません。

メリット・デメリットの詳細解説

  1. 経審での加点
     建退共に加入している事業者は、経営事項審査(W点)で加点対象となります。特に公共工事を受注する会社にとっては、信頼性の証明となる制度です。
  2. 元請企業からの信頼向上
     多くの元請業者は、下請け業者に建退共加入を求めています。加入していないと見積参加を断られるケースもあるため、取引上の信用を得る意味でも有効です。
  3. 助成制度の活用
     新規加入時には、掛金の一部を国が助成してくれる制度があります。ただし、助成対象となるためには一定の条件を満たす必要があります。
  4. 事務負担と対象制限
     証紙購入や貼付作業が必要な場合があり、慣れないうちは事務負担が大きく感じられるでしょう。さらに、事務員や役員は加入対象外です。

これらを整理すると、次のようになります。

項目メリットデメリット
経審・信頼性経審W点で加点、元請信頼度向上加入が事実上の条件になる場合も
助成制度掛金助成制度あり要件を満たす必要あり
事務負担電子申請で軽減傾向証紙管理が残る現場も
対象範囲現場作業員・一人親方も加入可事務職・役員は対象外

中退共とは

制度の概要

中退共(中小企業退職金共済制度)は、業種を問わず中小企業の従業員を対象とした制度です。
事業主が毎月の掛金を銀行口座から振替で納付し、従業員が退職時に中退共から退職金を受け取ります。
掛金の額は従業員ごとに固定で設定できるため、制度設計がシンプルで運用しやすい点が特徴です。

対象者と掛金の仕組み

  • 対象者:業種を問わず中小企業の従業員(建設業含む)
  • 掛金方式:従業員ごとに月額固定額を設定し、口座振替で自動納付

メリット・デメリットの詳細解説

  1. 業種・職種を問わない柔軟性
     事務職・営業職・役員なども加入可能で、会社全体の退職金制度として一元化できます。
  2. 事務負担が少ない
     口座振替により自動的に掛金が引き落とされるため、経理作業が非常に簡単です。
  3. 福利厚生としての効果
     退職金制度の整備は従業員の安心感につながり、採用・定着率の向上にも寄与します。
  4. 経審への影響
     建退共ほどの直接的な加点はありませんが、「福利厚生制度の整備」として評価対象となります。

整理すると、以下の通りです。

項目メリットデメリット
対象範囲業種・職種を問わず導入可能建設業特化ではない
対象職種事務員・役員も加入可能
事務負担掛金自動振替で手間が少ない
経審との関係福利厚生面で評価対象建退共ほどの加点効果は薄い

建退共と中退共の比較

両制度の特徴を踏まえ、具体的な違いを文章で整理します。
建退共は「建設業専用」で現場労働者に焦点を当てた制度。一方、中退共は「業種横断型」で、会社全体の制度として構築しやすい設計です。
掛金の算定方法も異なり、建退共は「日数ベース」、中退共は「月額固定」。
また、経審・助成金・将来の事業展開における柔軟性にも違いがあります。

比較項目建退共中退共
対象事業建設業限定業種不問
対象範囲現場作業員・一人親方事務員・役員を含む全従業員
掛金方式日数ベース(証紙・電子)月額固定(口座振替)
助成制度新規加入時の補助あり掛金補助制度あり(要件あり)
経審評価W点で有利福利厚生として評価対象
事務負担証紙管理あり事務負担ほぼなし

どちらを選ぶべきか?4つの判断軸から考える

ここからが最も重要な部分です。
建退共と中退共の選択は、会社の性質と方向性で変わります。
次の4つの視点から、自社に合う制度を見極めてください。


1. 公共工事を受注するかどうか

公共工事を請け負う、あるいは今後入札参加を目指す企業であれば、建退共がほぼ必須です。
建退共は経審のW点に直結し、元請企業からの信頼にもつながります。
加えて、建退共未加入の企業は入札・見積りの段階で不利になることもあります。
経審・公共工事を視野に入れるなら、建退共一択と言えるでしょう。


2. 運用の簡便さを優先するか

事務手続きの負担を減らしたいなら中退共。
建退共の証紙方式は管理コストが大きく、電子化が進んでも現場運用では煩雑さが残ります。
一方、中退共は月額固定・自動振替で完結。経理担当が少ない小規模事業者でも続けやすい制度設計です。


3. 従業員構成(事務職・現場職の割合)

現場従業員が中心の会社なら建退共。
事務職や総務職が増えている会社なら中退共の方が適しています。
両制度を併用することも可能で、現場=建退共、事務=中退共という運用もよく見られます。
ただし、同一人物を両制度に重複加入させることはできません。


4. 将来的な事業拡大を見据えるか

今後、リフォーム・不動産・製造など建設業以外に事業を広げる予定がある場合は、中退共の方が柔軟です。
建退共は建設業専用のため、他業種従業員には適用できません。
事業拡大・法人化・採用強化などを視野に入れている場合、中退共を軸に設計する方が将来の変更コストを抑えられます。


総括:短期的メリットより「経営戦略との整合性」で選ぶ

建退共は、建設業の信頼性・公共工事での競争力を高める制度。
中退共は、組織経営や人材定着を見据えた柔軟な退職金制度。

経審の加点や公共工事を重視するなら建退共、
採用力・社員定着・事業の多角化を重視するなら中退共。

退職金制度は一度導入すると長く続くものです。
「いま便利かどうか」だけでなく、数年後の事業の姿と照らし合わせて選ぶことが重要です。


導入・申請サポート

建退共・中退共の導入には、申込書類の作成や掛金設定、加入者区分の判断など、細かな実務があります。
つむぎ行政書士事務所では、建設業許可や経審と整合を取りながら最適な制度設計をサポートしています。

  • 制度選択の比較・助成金の活用アドバイス
  • 加入申請書類の作成・提出代行
  • 経審W点との連携・経営事項審査対策

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