営業所等技術者がいない会社の採用活動の注意点

営業所等技術者がいない会社の採用活動
目次

1. 建設業許可の壁「技術者不在」という現実

建設業許可の取得は、事業拡大や信用力向上に直結する大きなステップです。しかしながら、多くの事業者がこの過程で直面するのが「技術者要件」という壁です。特に、要件を満たす技術者の確保は簡単ではなく、申請を諦めるケースすら見られます。

なぜここまで難しいのでしょうか。それは、単に資格や経験を持つ人を雇えば良いわけではなく、「実務経験証明書」を確実に取得できる人材でなければならないからです。つまり、採用時の見極めを誤ると、せっかく採用しても許可が下りないというリスクがあるのです。

そこで本記事では、行政書士としての実務経験を踏まえ、技術者採用を成功させるための具体的な戦略とチェックポイントを徹底解説します。この記事を読むことで、採用段階から許可取得後の定着まで、失敗を防ぐために必要な全体像がつかめるはずです。


2. 基礎知識編:まず知っておくべき技術者要件

営業所等技術者と監理技術者の違い

まず最初に、建設業許可において必ず理解しておくべき基本があります。それが「営業所等技術者」と「監理技術者」の違いです。

  • 営業所等技術者(旧:専任技術者)
    各営業所ごとに必ず配置が求められます。常勤し、その業務に専念する必要があります。一般建設業でも特定建設業でも必須であり、建設業許可の根幹を支える存在です。
  • 監理技術者
    一方で、監理技術者は特定建設業において、下請金額が4,500万円(建築一式は7,000万円)を超える工事で現場に配置が義務付けられる人材です。したがって、特定建設業を目指す場合は、より高い要件を満たす必要があります。

資格・実務経験の具体要件

さらに重要なのが「要件を満たす人材の定義」です。

  1. 国家資格の保有者
    一級建築士や一級施工管理技士など、建設業法で定められた資格を有する人。
  2. 実務経験者
    一定年数の経験が求められます。たとえば、大卒指定学科で3年以上、高卒指定学科で5年以上、その他の場合は10年以上の実務経験が必要です。

ただし、ここで問題となるのが「実務経験をどう証明するか」です。最終的に申請書に添付する実務経験証明書は、前職の会社から発行してもらわなければなりません。つまり、いくら経験があっても証明書が出なければ無意味になってしまうのです。


3. 採用ルート別戦略編:技術者確保の4つのルートと特徴

技術者確保の手段は大きく4つに分けられます。それぞれの特徴を理解し、慎重に選択する必要があります。

3-1. 一般採用(求人募集)

ハローワークや転職サイトを活用する最もオーソドックスな方法です。幅広い人材にアクセスできる一方で、注意点もあります。とりわけ重要なのは、応募者が実務経験証明書を取得できるかどうかです。求人票には「建設業許可のための営業所等技術者候補」であることを明記し、面接段階で証明書発行について確認することが欠かせません。

3-2. 縁故採用(知人・取引先紹介)

紹介による採用は人柄が事前にわかり、ミスマッチが少ない利点があります。ただし、紹介者への配慮から要件確認が甘くなりがちです。したがって、あえて聞きにくいことも丁寧に確認する姿勢が必要です。

3-3. 業界ネットワーク活用

同業者や建設業協会を通じた紹介も有力です。特に、円満退職予定の技術者は証明書取得がスムーズなケースが多く、実務的には非常に有利です。

3-4. 顧問・非常勤契約

定年退職者などとの顧問契約も選択肢です。しかし、営業所等技術者は原則「常勤専任」であるため、勤務実態を厳密に確認する必要があります。


4. 候補者評価の重要ポイント

採用時に見落としがちなポイントは以下の通りです。

  1. 資格・経験の要件適合性
  2. 実務経験証明書取得の実現性
  3. 専任性の確保・長期勤務意向

特に「前職との関係性」は軽視できません。なぜなら、トラブル退職者は証明書発行を拒否されるケースが非常に多いからです。

5. 採用プロセス編:ルート別の選考・交渉のポイント

採用は「人を選ぶ」だけではなく、「条件をすり合わせる」プロセスでもあります。したがって、面接・交渉の段階でどこまで確認するかが許可取得の成否を分けます。

5-1. 一般採用の場合

求人で応募してきた候補者は、技術力や資格は十分でも「証明書が取れない」ケースがあります。
そのため、面接ではスキル確認だけでなく、以下の点を必ず確認しましょう。

  • 業務内容の具体化
    「どんな工事を担当していたか?請負契約の金額規模は?」などを深掘りします。
  • 退職理由の確認
    「円満退職かどうか」を見極める質問が重要です。たとえば、
    • 「退職されたきっかけは何でしょうか?」
    • 「前職との関係は現在も良好ですか?」
  • 証明書発行への協力度
    「前職に実務経験証明書を依頼することにご協力いただけますか?」と明確に聞いておくと、後でトラブルを防げます。

5-2. 縁故採用の場合

紹介による採用は信頼できるメリットが大きい一方、確認不足になりがちです。
特に「親しい人からの紹介だから大丈夫」と思い込み、証明書関連を詰めないまま採用すると、申請が進まなくなることもあります。

  • 紹介者を通じた事前ヒアリング
  • 書面での要件確認
    を徹底し、感情に流されない姿勢が必要です。

6. 実務経験証明書取得サポート:スムーズな証明書取得のための対策

証明書の有無がすべてを左右します。したがって、採用前後の段階で「取得可能性」を見極め、適切にサポートする体制を整えておくべきです。

採用決定前の確認

内定通知前に候補者自身が前職へ相談し、証明書発行が可能か確認してもらいましょう。ここを曖昧にしたまま進めると、後で「出せない」と言われて白紙に戻るリスクがあります。

前職への依頼方法

証明書依頼は候補者本人が行うのが基本です。依頼方法について、以下のような流れをサポートするとスムーズです。

  1. 事前連絡:電話やメールで「証明書発行のお願い」を相談
  2. 正式依頼:所定の様式に記入してもらう
  3. 確認:記載内容に誤りがないか候補者と一緒にチェック

困難な場合の代替手段

  • 雇用保険被保険者証
  • 健康保険証の記録
  • 工事契約書・請求書・見積書

これらを組み合わせることで証明可能な場合もあります。ただし、自治体によって判断が異なるため、必ず行政庁(土木部建築指導課など)に事前相談を行うことが大切です。


7. 契約・条件決定編:トラブルを防ぐ雇用条件の設定

採用後に「証明書が出せない」「他社と兼業していた」といった問題が発覚すると、許可申請が頓挫します。したがって、契約段階でのリスクヘッジが欠かせません。

契約書に盛り込むべき条項例

  1. 証明書取得への協力義務
    「建設業許可申請に必要な実務経験証明書取得に協力すること」
  2. 専任性の確保
    「他社の専任技術者にならないこと」
  3. 勤務実態の明確化
    「常勤勤務であることを前提とする」

これらを明記しておくことで、後にトラブルが起きた場合でも、会社を守ることができます。


8. 許可申請編:採用後から許可取得までの流れ

採用が決まった後は、次の流れで進みます。

  1. 証明書類の取得
    実務経験証明書、住民票、身分証明書などを速やかに揃える。
  2. その他の書類準備
    決算書、財務諸表、会社の定款・登記事項証明書など。
  3. 行政庁への申請
    書類を一式揃えて提出。審査には通常1〜2か月程度かかります。
  4. 補正対応
    行政庁から指摘が入った場合は速やかに補正します。

スケジュール管理の目安として、採用決定から許可取得まで最低でも3〜4か月は見込んでおくのが現実的です。


9. 採用後フォロー編:長期定着と良好な関係維持

採用した技術者が短期間で辞めてしまうと、再び「技術者不在」となり、許可要件を満たさなくなります。つまり、定着こそが許可維持のカギです。

定着のための工夫

  • キャリアパスを示す
    技術者が将来どう活躍できるかを明確にすることで、モチベーションを高められます。
  • 待遇の透明性
    給与・手当・評価基準を明確にして、不信感を抱かせない。
  • コミュニケーションの重視
    前職との関係性も尊重し、円満な立場を守ってあげることで安心して働けます。

会社にとってのメリット

定着した技術者は、許可維持に直結するだけでなく、取引先からの信用を支え、現場でも会社の顔として活躍してくれます。したがって、採用後のフォローは単なる「人事管理」ではなく、「会社経営の基盤強化」として捉えるべきです。


10. トラブル事例と対処法

  • 前職が証明書を拒否した場合 → 行政庁に相談し代替書類を提示。
  • 前職が廃業していた場合 → 雇用保険証・給与明細・契約書類を集め代替証明を検討。

11. 成功のチェックリスト:失敗を防ぐ7つのポイント

  1. 内定前に証明書発行の可否を確認
  2. 前職との関係性を重視
  3. 採用ルートを慎重に選択
  4. 要件確認を徹底
  5. 情に流されず客観的に評価
  6. 雇用契約に協力義務を明記
  7. 行政書士に早めに相談

まとめ

建設業許可における技術者採用は、単なる人材確保ではなく「証明可能な技術者」をいかに見極めるかが核心です。実務経験証明書という壁を乗り越えられるかどうかが、許可取得の成否を分けます。

だからこそ、早い段階で行政書士に相談し、採用から申請までを伴走してもらうことが最も確実な方法です。もし採用や許可取得に不安がある場合は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。

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