初回経審申請の流れと必要書類一覧
はじめに
「経審って何から始めればいいの?」「必要書類が多すぎて、どう準備すればいいか分からない」
このような不安の声を、建設業者の方からよく耳にします。
実際、経営事項審査(以下、経審)の初回申請は、非常に煩雑で時間もかかります。そのため、最初から正しい流れを理解し、計画的に準備を進めることが重要です。
とはいえ、すべての工程を一人で調べながら対応するのは大変です。
そこで今回は、茨城県の最新手引き(令和7年4月改訂版)に完全準拠した形で、初回申請の具体的な流れや必要書類を丁寧に解説します。
関連記事: まず経審の基本を理解したい方は、「経審とは何か?建設業者が知っておくべき基本知識」をご覧ください。
この記事では、茨城県の最新の手引き(令和7年4月改訂版)に準拠して、初回経審申請の流れと必要書類を分かりやすく解説します。
この記事で分かること:
- 初回申請の具体的な手順とスケジュール
- 必要書類の詳細一覧と準備方法
- 申請前の事前準備チェックリスト
- よくある注意点と対策方法
1. 初回経審申請の全体的な流れ
1-1. 経審は2ステップで進む
経営事項審査は、大きく次の2段階で構成されています:
- 経営状況分析(Y評点):登録機関へ申請
- 経営規模等評価申請(P点):茨城県へ申請
その後、審査を経て「結果通知書」が交付されるという流れになります。
✅ 申請ルール:決算終了後6ヶ月以内に申請する必要があります。
さらに、公共工事へ継続的に参加するには、毎年の受審が必要です。
1-2. スケジュール感を把握しよう
初回申請に必要な準備期間の目安は以下のとおりです:
| 準備項目 | 所要期間 |
|---|---|
| 書類準備 | 約2〜3ヶ月 |
| 社会保険の整備 | 約1〜2ヶ月 |
| 技術職員の証明書類 | 約1ヶ月 |
このように、複数の準備が同時進行で必要になるため、早めの着手がカギになります。
とくに、社会保険関係や技術職員の要件確認は、申請のボトルネックになりがちです。
2. 事前準備(申請前に必要な手続き)
2-1. 経営状況分析の実施
まず行うべきは、「経営状況分析」の申請です。
これは民間の登録分析機関(全国11社)に対して行い、「経営状況分析結果通知書」を取得する必要があります。
- 必要期間:2〜3週間
- 取得物:経営状況分析結果通知書(原本)
⚠ 注意:建設業許可を取得していない場合、経審は申請できません。
2-2. 建設業許可との整合性チェック
経審の申請対象業種は、すでに許可を取得している業種と一致していることが必要です。
そのため、許可通知書の再確認と、更新期限のチェックも必須です。
2-3. 令和7年度の重要な改正点
そして、令和7年度から下記の改正が開始となりました
資本性借入金の取扱い(令和7年7月1日運用開始):
- 一定の要件を満たす借入金を自己資本相当額として評価
- 経営状況分析(Y評点)に影響
- 事前に登録経営状況分析機関での確認が必要
2-4. 社会保険加入状況の整備
また、社会保険については下記の加入ルールがありますので整備を進める必要があります。
加入義務:
- 雇用保険:労働者1人以上で加入義務
- 健康保険・厚生年金保険:法人事業所または常時5人以上雇用の個人事業所で強制適用
茨城県の指導方針:
- 初回未加入確認時:口頭指導と申し送り書交付
- 関係部局への通報実施
- 建設業許可更新への影響あり(令和2年10月1日より加入が許可要件)
3. 申請方法の選択
経審の申請には、主に2つの方法があります。それぞれに特徴がありますので、事前に比較して適切な方法を選びましょう。
3-1. 電子申請(推奨)
最近では、電子申請システムの利用が推奨されています。
理由としては、書類提出が一部省略できたり、結果通知が早かったりと、さまざまなメリットがあるからです。
- 使用システム:建設業許可・経審電子申請システム
- 必要な準備:
- GビズID(「Gビズプライム」)の取得(申請に数日かかります)
- 操作に慣れておくこと
- 書類のスキャンやPDF化など、デジタル準備
✅ メリット:審査期間が郵送より約2週間短縮される可能性があります。
3-2. 書面での申請(郵送・持参)
一方で、紙媒体での申請も依然として利用可能です。
- 郵送申請:レターパックプラス(追跡可能)を推奨
- 持参申請:茨城県庁(19階)で平日9:00~11:30/13:00~16:30に受付
ただし、提出ミスや補正のやり取りが増える傾向があるため、電子申請の方が効率的と言えるでしょう。
4. 申請手数料と支払方法
申請には、必ず手数料が発生します。業種数によって金額が異なるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
4-1. 経営規模等評価・総合評定値通知の手数料
| 申請種別 | 電子申請 | 書面申請 |
|---|---|---|
| 基本手数料 | 8,100円 | 同左 |
| 加算額(業種ごと) | 2,300円 × 業種数 | 同左 |
| 評定通知書 | 390円 + 200円×業種数 | 400円 + 200円×業種数 |
たとえば、3業種を申請する場合:
- 電子申請:15,990円
- 書面申請:16,000円
このように、わずかながら電子申請の方が安価になります。
4-2. 支払い方法の違い
| 区分 | 支払方法 |
|---|---|
| 茨城県知事許可業者 | 茨城県収入証紙 または 電子納付 |
| 国土交通大臣許可業者 | 収入印紙 |
💡 電子申請を選択した場合は、電子納付の利用が可能になります(令和7年度より運用開始)。
5. 必要書類一覧
ここでは、初回経審申請に必要な書類をカテゴリ別に整理して紹介します。
チェックリストとしても活用できますので、印刷して活用すると便利です。
まず、各種様式は下記よりダウンロードしてください。
5-1. 基本申請書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書 | ○必須 | 県指定様式 |
| 工事種類別完成工事高 | ○必須 | 審査基準日を含む過去2年間 |
| 工事種類別元請完成工事高 | ○必須 | 同上 |
| その他の審査項目(社会性等) | ○必須 | W項目関連 |
| 技術職員名簿 | ○必須 | 資格証明書添付 |
| 経営状況分析結果通知書 | ○必須 | 原本 |
5-2. 財務関係書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | ○必須 | 審査基準日のもの |
| 損益計算書 | ○必須 | 同上 |
| 株主資本等変動計算書 | △法人のみ | 会社法対象法人 |
| 注記表 | △法人のみ | 同上 |
| 附属明細書 | △該当者のみ | 作成義務がある場合 |
| 納税証明書 | ○必須 | 法人税・消費税等 |
5-3. 技術職員関係書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 技術職員名簿 | ○必須 | 県指定様式 |
| 技術者資格証明書 | ○必須 | 各資格証の写し、有効期限要確認 |
| 実務経験証明書 | △該当者のみ | 実務経験による技術者、様式指定あり |
| 監理技術者講習修了証 | △該当者のみ | 1級監理受講者、5年更新制 |
| 監理技術者資格者証 | △該当者のみ | 同上、建設業振興基金発行 |
| CPD単位取得証明書 | △該当者のみ | 継続教育単位、技術者団体発行 |
5-4. 社会保険関係書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 雇用保険料算定基礎賃金報告書 | ○必須 | 審査基準日を含む年度 |
| 健康保険・厚生年金保険料算定基礎届 | △該当者のみ | 適用事業所のみ |
| 労働保険概算・確定保険料申告書 | ○必須 | 審査基準日を含む年度 |
| 建退共証紙購入実績証明書 | △該当者のみ | 建退共加入者のみ |
5-5. 工事実績関係書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 工事契約書 | ○必須 | 審査基準日を含む過去2年間の主要工事 |
| 工事請負契約約款 | △該当者のみ | 契約書に記載がない場合 |
| 変更契約書 | △該当者のみ | 契約変更がある場合 |
| 検査調書・引渡書 | △該当者のみ | 工事完成の証明 |
5-6. その他の確認書類
| 書類名 | 必要度 | 備考 |
|---|---|---|
| 建設業許可通知書 | ○必須 | 写し |
| 登記事項証明書 | △法人のみ | 3ヶ月以内のもの |
| 住民票 | △個人のみ | 3ヶ月以内のもの |
| 営業年数を証する書類 | ○必須 | 建設業開始年月日の証明 |
| 防災協定書 | △該当者のみ | 防災活動の証明 |
6. 申請書類作成のポイント
申請書類は、単に「揃えればよい」というものではありません。正確性と一貫性が求められます。
特に以下の点は、審査官が重点的に確認する部分です。
6-1. 工事種類別完成工事高の記載
この書類は、経営規模等評価(X1)に直結する重要資料です。
記載ルール:
- 審査基準日を含む過去2年間の実績
- 業種別に正確に分類
- 金額は税抜きで記載
- 下請工事も含む
注意点:
- 未完成工事は含めない
- 工事契約書との整合性を確認
- 元請・下請の区別を明確にする
6-2. 技術職員名簿の作成
技術職員の記載には、以下の条件をすべて満たす必要があります。
記載要件:
- 審査基準日から遡って6ヶ月を超える雇用期間
- 常勤性(週40時間程度の勤務)
- 社会保険加入(加入事業所の場合)
資格のランク付け:
- 1級監理受講者:6点
- 1級技術者:5点
- 監理技術者補佐:4点
- 基幹技能者:3点
- 2級技術者:2点
- その他技術者:1点
制限事項:
- 1人の技術職員につき申請できるのは2業種まで
- パート・アルバイト等の短時間勤務者は原則不可
6-3. その他の審査項目(W項目)
W項目は、企業としての社会的評価を示す指標です。
したがって、誠実な体制整備がポイントになります。
主要な評価項目:
W1:建設工事の担い手の育成及び確保
- 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況
- 建退共(建設業退職金共済)の加入状況
- 若年技術職員の継続的な育成及び確保
- 働き方改革への対応(えるぼし認定、くるみん認定等)
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用状況
W2~W8:
- W2:建設業の営業年数
- W3:防災活動への貢献の状況
- W4:法令遵守の状況
- W5:建設業の経理の状況
- W6:研究開発の状況
- W7:建設機械の保有状況
- W8:ISO・エコアクション21等の認証取得状況
7. 初回申請で注意すべきポイント
初回の経審では、慣れていないがゆえに見落としやすい落とし穴があります。
以下は、特に注意したい5つのポイントです。
7-1. よくあるミスとその対策
- 業種分類の誤り
→ 工事の内容をもとに、正しい業種に分類しましょう。 - 技術職員の要件不備
→ 雇用期間・常勤性・資格・社会保険加入の有無を再確認。 - 社会保険未加入
→ 加入義務があるのに未加入の場合は、申請が通りません。 - 工事実績の証明不足
→ 契約書・変更契約書・完成検査調書などを適切に整理・保管。 - CCUS未対応
→ 民間工事も含めたCCUSの実施が加点対象です。
7-2. 早めの準備が成功のカギ
- 実務経験証明の作成には1〜2ヶ月かかる場合があります
- GビズIDの取得にも時間がかかるため、決算が確定したらすぐに動き出すのが理想です
7-3. 審査当日の注意事項
茨城県の場合(令和7年度):
- 実施体制:上半期の審査体制が適用
- 審査予約システムによる事前予約制
- 電子申請の場合は対面審査が省略される場合あり
- やむを得ず対面審査を希望する場合は事前案内に従う
持参物:
- 提出書類一式
- 印鑑(訂正印として使用)
- 身分証明書
- 追加資料(指摘事項がある場合)
8. 初回申請チェックリスト
申請直前に慌てないように、以下の項目を一つずつ確認しておきましょう。
チェックリスト形式で整理しましたので、活用してください。
8-1. 申請前確認事項
基本要件の確認
- 建設業許可の有効期限確認(有効期間内であること)
- 決算書類の確定(税務申告完了)
- 経営状況分析結果通知書の取得
社会保険関係
- 雇用保険の加入状況確認
- 健康保険・厚生年金保険の加入状況確認(該当者)
- 保険料の算定基礎届等の提出確認
技術職員関係
- 技術職員の雇用期間確認(6ヶ月超)
- 常勤性の確認
- 資格証明書の準備
- 実務経験証明書の作成(該当者)
8-2. 書類準備チェックリスト
申請書類
- 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書
- 工事種類別完成工事高
- 工事種類別元請完成工事高
- その他の審査項目(社会性等)
- 技術職員名簿
財務書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書(法人のみ)
- 注記表(法人のみ)
- 納税証明書
証明書類
- 経営状況分析結果通知書(原本)
- 建設業許可通知書(写し)
- 技術者資格証明書(写し)
- 工事契約書(写し)
手数料
- 茨城県収入証紙の準備
- 金額の確認(業種数に応じて計算)
8-3. 申請方法の選択
申請方法の決定
- 電子申請(推奨:GビズID取得済み)
- 郵送申請(レターパックプラス使用)
- 持参申請(平日の指定時間内)
電子申請の場合
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 電子申請システムの操作確認
- 書類のデジタル化完了
9. 申請後の流れ
申請が完了したら、それで終わりではありません。
というのも、提出後にも複数の確認・評価プロセスが存在するからです。ここでは申請後の流れを時系列で整理します。
9-1. 書類審査と実地確認
まず、提出された書類は茨城県によって審査されます。
- 数値の整合性や記載内容の正確性をチェック
- 技術職員や契約実績の信頼性を確認
必要に応じて、実地審査が行われる場合もあります。
- 工事実績の現地調査
- 技術職員への面談
- 帳簿や関係書類の現場確認
✅ 対面審査は、原則として電子申請では省略されることが多くなっています。
9-2. 評価・結果通知
次に、各種評価項目の点数が算出されます。
- 経営状況分析(Y点)
- 経営規模等評価(X点)
- その他社会性など(W点)
これらをもとに「総合評定値(P点)」が計算され、以下の通知書が交付されます:
- 経営規模等評価結果通知書
- 総合評定値通知書
📅 通知時期の目安:
- 郵送申請:約5~7週間後
- 電子申請:約3~5週間後
9-3. 結果の活用と次年度への準備
経審の結果は、公共工事の入札参加資格審査のために使用されます。
- 国(関東地方整備局など)
- 茨城県
- 各市町村
そのため、通知書を受け取ったら、速やかに必要な自治体へ提出しましょう。
さらに、次年度の経審申請に向けて、以下の準備を始めておくと安心です:
- 評価点の改善計画(特にW項目・X1点)
- 技術者の継続教育や資格取得
- CCUSや社保加入体制の強化
10. まとめ
初回の経営事項審査申請は、多くの書類や準備が必要で確かに大変です。
しかしながら、計画的な準備と正確な理解があれば、必ず乗り越えられます。
ここまでの内容を、成功のポイントとして整理すると以下のとおりです。
✅ 成功のための3つのポイント
① 早めの準備を徹底すること
- 決算確定後、すぐに動き出す
- 書類準備には2~3ヶ月を想定
- 社保整備やID取得などの基盤も並行して進める
② 書類の正確性を確保すること
- 茨城県の最新手引きに沿った作成
- 工事実績や契約内容との整合性を確認
- 技術者の要件や証明資料を徹底チェック
③ 継続的な改善を行うこと
- 経審は一度きりではなく、毎年必要
- 評価項目ごとの改善目標を設定し、PDCAを回す
- 外部支援(行政書士・中小企業診断士)も積極的に活用
経審は、単なる書類審査ではなく、御社の信頼性と成長の証でもあります。
最初の一歩である初回申請をしっかりと成功させることで、公共工事という大きなビジネスチャンスへの道が開かれます。
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