「小規模事業者持続化補助金」採択率はどれくらい?数字から“通る計画書”の傾向を読む

目次

1. はじめに

「小規模事業者持続化補助金って応募しても本当に採択されるのかな?」
そんな疑問を持つ方は多いでしょう。実際、採択率は回を重ねるごとに変動しており、書類の完成度次第で明暗が分かれています。

この記事では、第16回の採択結果を起点に、“通る計画書”の共通パターンを整理してみます。


2. 第16回の採択率を数字で確認

中小企業庁の発表によれば、第16回の応募件数は7,371件、そのうち採択されたのは2,741件。
採択率は37.2%でした。

前回よりやや低下しており、「書けば誰でも通る」という状況ではないことがわかります。競争が激しくなっている今こそ、審査の視点を理解して臨む必要があります。


3. 審査は何を見ているのか?

採択されるかどうかは「計画の総合力」で決まります。公募要領に示されている審査の観点は以下の通りです。

  • 基礎審査:要件を満たしているか、提出書類に不備がないか。
  • 計画審査
    • 自社の経営課題や強みを適切に把握しているか。
    • 目標と施策が一貫しているか。
    • 実現可能性・費用対効果が妥当か。
    • 補助事業終了後も継続的に成果を出せる体制か。

形式的に様式を埋めるだけでは不十分で、「なぜ」「どうやって」「どんな成果が出るか」を数字と根拠で示すことが重要です。


4. 採択事例名から見える“通る傾向”

第16回の採択事例一覧を眺めると、いくつかの共通点が浮かび上がります。

  • デジタル販路の拡大(ECサイト構築、SNS広告活用など)
  • 来店体験の改善(内装改修や導線の工夫)
  • 設備投資と販促施策を組み合わせた計画

つまり「設備購入だけ」では弱く、販路開拓と一体で設計されている計画が多く採択されています。


5. “通る計画書”の共通パターン

採択される計画書には、次のような骨格があります。

  1. 自社の強み×顧客課題の一点突破
    誰に・何を・どう売るのかを一文で表現できる。
  2. 市場検証の証拠
    客観的データや調査を引用し、仮説の裏付けを示す。
  3. 販路開拓を主語にした施策
    設備や広告は“手段”。ゴールは販路の拡大。
  4. 収益計画の具体性
    売上・粗利・回収月を月次で提示。費用対効果を数値で説明。
  5. 費目の妥当性
    相見積や根拠資料を整え、対象・対象外を明確にする。
  6. 継続性
    補助事業後も自走できる運用体制を示す。

6. 落ちる計画書の典型例

6-1. 強みやターゲットが曖昧

  • :「地域の皆さまに愛されるお店を目指します」
    → 誰がターゲットなのか不明確。20代学生なのか、子育て世代なのかで施策は変わるのに、対象がぼやけている。
  • 改善の方向性:「30代共働き家庭をターゲットに、仕事帰りに立ち寄れる惣菜販売を強化する」など具体的に。

6-2. KPI(数値目標)がない、または根拠が薄い

  • :「売上を伸ばしていきたい」「顧客を増やす」
    → “どれくらい”伸ばすのか、“どうやって”増えるのかが書かれていない。
  • 改善の方向性:「新規顧客を月30人獲得し、年間売上を120万円増加させる(根拠:既存客単価×来店回数から試算)」など具体数値を示す。

6-3. 設備購入だけで終わっている

  • :「最新のコーヒーマシンを導入する」
    → 機械を買っただけでは販路開拓にならない。補助金の趣旨に合致しにくい。
  • 改善の方向性:「最新マシン導入で新メニューを開発し、SNS広告と連動して新規顧客を獲得」など、設備と販促をセットで説明する。

6-4. 費用の根拠不足や対象外経費の混入

  • :「広告宣伝費 100万円」
    → 内訳がなく、見積書や施策の紐付けが不明。さらに補助対象外の人件費まで混在。
  • 改善の方向性:見積添付と「費目—目的—効果」の対応表を作成し、補助対象範囲を明示する。

6-5. 運用体制が不明確

  • :「Webサイトを新しく作ります」
    → 誰が更新するのか、継続的に運用できるのかが不透明。審査側から「補助事業後に効果が継続するか」疑問を持たれる。
  • 改善の方向性:「スタッフ2名を対象に運用研修を行い、月1回の更新ルールを社内マニュアル化する」など具体的に示す。

6-6. ストーリーが一貫していない

  • :「新規顧客獲得」と書いておきながら、実際の施策は既存客向けの店内改修に偏っている。
  • 改善の方向性:課題→施策→成果が一本の線でつながるように整理する。

7. 3枚で作れる計画骨格の手順

時間がない事業者でも、次の3枚を整えれば骨格はできます。

7-1. 1枚目:「誰に・何を・どう売るか」を一枚図にする

内容:ペルソナ(顧客像)、提供価値、販売チャネルをまとめる。

  • 解説:審査員がまず知りたいのは「この事業は誰に向けて、どんな課題を解決するのか」。ここが曖昧だと、どんなに立派な設備投資を書いても“筋が通らない”と評価されます。
  • コツ:箇条書きでも構いません。たとえば「ターゲット=30代共働き世帯/提供価値=夕食を短時間で用意できる惣菜/販路=EC+店舗受取」と書ければ十分伝わります。

7-2. 2枚目:KPI設計表(Before/After・月次推移・回収見込み)

内容:投資前の現状数値、投資後の目標値、そして売上や利益がどう推移するかを表で示す。

  • 解説:補助金は「お金を渡して終わり」ではなく「投資対効果」を求めています。だから“数字で検証できるか”が最大のポイントです。
  • コツ:難しい財務分析までは不要。
    • Before:来客数300人/月
    • After:来客数350人/月
    • 回収見込み:12ヶ月以内に投資額回収
      といったシンプルな表でも十分です。

7-3. 3枚目:費目—目的—効果—根拠の対応表

内容:補助金で申請する経費ごとに、「何のために」「どんな成果につながるか」「その金額の根拠は何か」を1行ずつ整理。

  • 解説:ここが弱いと「ただ欲しいものを書いただけ」と見られて減点されます。審査員は見積書を見ながら「この投資で本当に成果が出るのか」を判断しています。
  • コツ
    • Web制作費 → 新規顧客獲得のための予約サイト → 来店数増加 → 制作会社見積書添付
    • 広告宣伝費 → 認知度向上のためのSNS広告 → 来店数増加 → 広告代理店見積書添付
      のように費目と成果を一対一で結びつけること。

7-4. なぜ「3ページ」で十分なのか?

  • 書類全体を埋める前に、計画の骨格を3ページで可視化しておくと、後から一貫性のあるストーリーが作りやすい。
  • また、支援機関や専門家に相談するときも、この3ページがあれば「方向性は正しいか?」「数字は妥当か?」とフィードバックを受けやすい。
  • つまり、計画の軸を先に固めるツールとして機能します。

8. カフェの事例で具体化

8-1. 課題の明確化

地方の小規模カフェを例に考えます。

  • 現状:ランチタイムは一定の来客があるが、午後2時~5時の「アイドルタイム」に客足が途絶える。
  • 課題:一日の売上の山谷が大きく、固定費に対して利益率が安定しない。特にスタッフの稼働と売上が釣り合わず、効率が悪い。
  • 補助金を使いたい目的:空白時間を埋め、1日を通じた売上の底上げを図る。

8-2. 施策の具体像

課題に対応するため、次のような施策を組み合わせます。

  1. ECによるテイクアウト予約導入
    • 新たにWebサイトを構築し、テイクアウトメニューをオンラインで予約できるようにする。
    • 昼間来店できない会社員層や、近隣住民が仕事帰りに受け取れる仕組みを作る。
  2. 内装改修による席回転率の改善
    • 客席レイアウトを見直し、二人席を中心に増設。
    • Wi-Fi・電源席を導入して「短時間利用者」と「長時間滞在者」をゾーン分け。
  3. ローカル検索対策(MEO)とSNS広告
    • Googleマップに写真・メニューを充実させ、「カフェ 水戸 テイクアウト」検索で上位表示を狙う。
    • Instagram広告を使い、新メニューやイベントを地域ターゲティングで配信。

8-3. KPI(数値目標)の設定

補助事業の計画書には成果を数字で示すことが不可欠です。例として次のように設定できます。

  • 月間来店客数:+15%(特に14時~17時の客数を増加)
  • 席回転率:+10ポイント(ランチタイムの回転効率アップ)
  • テイクアウト予約数:月50件以上を目標
  • 投資回収期間:12ヶ月以内

こうした数字は「現状のPOSデータ」や「試算シミュレーション」を根拠にして示すのが望ましいです。


8-4. 費用と根拠

補助金対象になる費用と、それぞれの根拠を整理してみましょう。

  • Web制作費:テイクアウト予約機能付きサイトの開発 → 販路開拓の直接手段
  • 内装工事費:客席改修・Wi-Fi設置 → 客単価・回転率向上に直結
  • 広告宣伝費:Googleマップ強化、SNS広告配信 → 認知拡大と新規顧客獲得
  • 備品費:テイクアウト用包装資材、写真撮影用照明 → 計画遂行のための補完的投資

それぞれ「なぜ必要か」「どの成果に結びつくか」を費目ごとに説明することで、審査員が納得しやすくなります。


8-5. 計画全体のストーリー

  • Before:午後の売上が伸びず、固定費負担が重い。
  • 施策:テイクアウト導入+内装改善+デジタル集客。
  • After:空白時間にテイクアウト需要を取り込み、店舗内の稼働効率も改善。
  • 結果:日次売上の安定化、顧客層の広がり、リピーター増加。

このストーリーが一貫していれば、審査側にも「投資に対して成果が見込める」と伝わります。


👉 このように「課題 → 施策 → KPI → 費用根拠 → ストーリー」を具体的に描けば、読者も「自分の業態なら何を置き換えればいいか」と考えやすくなります。


9. よくある誤解

  • 採択=交付決定ではない。交付決定前の発注や支出は対象外です。計画が採択され、交付決定手続きを経てはじめて計画に盛り込んだ機器の購入などが可能となります。

10. まとめ

第16回の採択率は37.2%。決して低すぎるわけではありませんが、簡単でもありません。

今日からできる3ステップは:

  1. 強み×顧客課題を一文でまとめる。
  2. KPIを数字で整理する。
  3. 費用の根拠資料を集め始める。

小さな準備の積み重ねが、次回の採択を引き寄せるカギになります。

ご自身の計画書、客観的にチェックしてみませんか?

第16回の採択率は37.2%。数字だけ見れば厳しさを感じるかもしれませんが、正しく設計された計画書なら十分にチャンスはあります。

  • 「自分の計画は採択される可能性があるのか?」
  • 「補助金のルールや費用の線引きに自信がない…」
  • 「客観的に見て“通る計画書”になっているか確認したい」

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私は、補助金申請書の作成を認められている国家資格=行政書士、そして経営計画の専門家=中小企業診断士として、両方の視点からサポートしています。

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