産業廃棄物処理業者が絶対に守るべき4つの法律ルール
産業廃棄物処理業は、社会に不可欠な役割を果たしています。しかし同時に、不適正な処理や不法投棄が深刻な環境問題を引き起こす可能性があることから、廃棄物処理法では厳格な規制が設けられています。
本記事では、処理業者が絶対に守るべき「4つの法的ルール」について、実際の条文を引用しながら分かりやすく解説していきます。
1.受託の禁止(無許可業者は請け負えない)
【条文】
廃棄物処理法 第14条第15項
「産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の収集又は運搬を、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ受託してはならない。」
【解説】
この条文は、「無許可業者が仕事を請けてはいけない」ことを定めたものです。たとえば以下のような行為は明確に違法です。
- 許可を持たない運送会社が産業廃棄物を運ぶ
- 許可を持たない会社が焼却や埋立などの処分を請け負う
ここで特に重要なのは、実際に収集・運搬などの実行行為を伴っていなくても、受託した時点で違法となる点です。つまり、まだ何もしていなくても、「産廃の運搬をやりますよ」と契約・引き受けを行った段階で法令違反が成立します。
また、この規定は産業廃棄物業界に存在する 「ブローカー行為」(自ら処理は行わず他者に丸投げするだけの仲介業) を事実上規制する効果も持っています。許可を持たない者が処理ルートを取りまとめて仲介料を得るような行為は、違法とみなされる可能性が極めて高いです。
【ポイント】
- 「請け負う意思」や「契約締結」だけで違反が成立します。
- たとえ仲介だけでも、許可を持たない者が処理の一端を担うこと自体が違法です。
- 依頼者(排出事業者)も、相手が許可業者であることを確認しなかった場合、排出事業者責任に基づき処罰対象になる可能性があります。
2.再委託の禁止(受けた仕事をまた他人に振ってはならない)
【条文】
廃棄物処理法 第14条第16項
「産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。ただし、事業者から委託を受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従って委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでない。」
【解説】
この条文は、「仕事を請け負った産業廃棄物処理業者が、さらに別の業者に仕事を任せること(再委託)を原則として禁止する」ものです。処理責任の所在を明確にし、不適正な処理や不法投棄の発生を防止するために設けられた重要な規定です。
ただし、政令や環境省令で定める一定の基準を満たす場合に限って、例外的に再委託が認められています。
【例外の具体例】
- 運搬車両が事故や故障で使用不能となった場合、急きょ代替手段として、別の許可業者に再委託することは、政令に定める基準(廃棄物処理法施行規則第8条の9など)に適合していれば可能です。
- 搬入先の処分場が一時的に受入不能となった場合、あらかじめ届出された代替施設に変更し、適正な手続を踏めば例外的に対応可能です。
いずれにしても、マニフェストへの記載や契約書の整備など、厳格なルールに従う必要があります。
【再々委託は禁止】
重要なのは、再委託はあくまで1回限りの例外であることです。再委託された業者がさらに他の業者に業務を委託する、いわゆる 「再々委託」については、いかなる場合であっても認められていません。
これは処理の過程が複雑化し、責任の追跡が困難になるためであり、法律上も明確に禁止されています。
【再委託不能時の対応策】
もし何らかの理由で再委託すら履行できない状況になった場合は、以下のような方法で対応するのが適正です。
- 排出事業者が当初の委託契約を解除する
- 新たな処理業者との間で正式に契約を締結する
- 新しい契約内容を反映したマニフェストを再作成し、適正なルートで処理を行う
こうすることで、法律に則った形で処理業務を継続でき、万一のトラブル時にも責任の所在が明確になります。
3.名義貸しの禁止(自分の名前を他人に使わせてはいけない)
【条文】
廃棄物処理法 第14条の3の3
「産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、自己の名義をもって、他人に産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行わせてはならない。」
【解説】
この規定は、いわゆる「名義貸し」を禁止するものです。たとえば以下のようなケースが該当します。
- 無許可業者が仕事をして、許可業者の名義でマニフェストを発行する
- 実際には業務に関与していない許可業者が、名義だけを貸して報酬を受ける
これらは、表面的には法令を守っているように見えても、実質的には無許可営業と同じです。行政としても、こうした行為は悪質であると判断し、営業停止や許可取消の処分対象となります。
【現場でありがちな誤解】
「うちは名義だけで関わってるから大丈夫」という言い訳は通用しません。名義を貸すだけであっても違法行為です。
4.帳簿の備付けと保存(記録を残す義務)
【条文】
廃棄物処理法 第7条第15項
「一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物処分業者は、帳簿を備え、一般廃棄物の処理について環境省令で定める事項を記載しなければならない。」
第14条第17項
「第七条第十五項及び第十六項の規定は、産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者について準用する。この場合において、同条第十五項中『一般廃棄物の』とあるのは、『産業廃棄物の』と読み替えるものとする。」
【解説】
産業廃棄物を取り扱う業者は、帳簿を作成・保存しなければなりません。これは、業務の透明性を確保し、不適正処理があった場合に追跡できるようにするためです。
帳簿には以下のような情報を記録します。
- 排出事業者名・受託日・産業廃棄物の種類・数量
- 処理方法・処理完了日
- 委託契約書・マニフェストの写しなど
帳簿は、5年間保存する義務があり、行政の立入検査などでも確認されます。
【意外と多い違反例】
- 手書きでメモ書き程度の記録しかしていない
- マニフェストの情報と帳簿の内容が一致していない
こうした場合、指導・改善命令や行政処分の対象となります。
まとめ:処理業の信頼は「法令遵守」によって支えられる
産業廃棄物処理業者は、単なる運送や処分の業務ではありません。環境保全に直結する公共性の高い業務であり、そのために厳格な法律の枠組みが設けられています。
| 項目 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 受託の禁止 | 無許可業者は業務を受けられない | 第14条第15項 |
| 再委託の禁止 | 原則は禁止。例外は政令等の基準に基づく場合のみ | 第14条第16項 |
| 名義貸しの禁止 | 自分の名義で他人に業をさせることは禁止 | 第14条の3の3 |
| 帳簿の備付・保存 | 必要な記録を帳簿に残し、5年間保存 | 第14条第17項(準用) |
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