2025年建設業の倒産件数が過去最多水準に。仕事はあるのに倒れる「増収倒産」の正体と対策

帝国データバンク(TDB)の調査によると、2025年の企業倒産は1万261件(前年9,901件比3.6%増)と、4年連続で前年を上回り、12年ぶりに年間1万件を超えました。
その中で建設業は、2,021件(前年比6.9%増)。12年ぶりに2,000件を超え、しかも4年連続で増加し、過去10年で最多水準です。
ここでやっかいなのは、「不況で仕事がないから倒れた」という単純な話に収まらない点です。むしろ、中小建設会社・職別工事業者ほど「受注があるのに苦しい」状態に入りやすい一年でした。
1. 2025年に何が起きたか(仕事があるのに倒れる構造)
建設業の倒産増加について、TDBは背景として、人件費の急騰、工期の延長、建材価格の上昇などのコストアップが重なった一方で、価格(請負単価)への転嫁が追いついていない点を挙げています。
売上が伸びても、同時に、立替・人件費・資材費・外注費が先に出ていき、入金までのタイムラグで息切れしやすい状況です。
実際、TDBは「倒産企業の中にも売り上げを伸ばした業者が多数ある」一方で、手元資金に余裕がなく、増収ゆえに増える運転資金需要に対応できず倒産を押し上げたケースがある、と述べています。
要するに「走れば走るほどガス欠になる」状態で、これは本当に笑えない話です。
2. 倒産を押し上げた“3つの積み重ね”
2025年に苦しさが出やすかった要因は、だいたい次の3点が“同時に”来たことです。
- コストアップが複数同時に来た
人件費・資材・外注費が上がり、しかも工期が延びると現場の「張り付き」コストが増えます。 - 工期延長が資金繰りに直撃しやすい
延びた分だけ支払いが先行し、回収が遅れるほど運転資金が薄くなります。 - 多重下請け構造で“転嫁の最後尾”になりやすい
価格交渉力の差が出やすく、末端ほど飲み込みが増えがちです
3. どの領域が苦しいか
業種細分類別では、建設業倒産2,021件の内訳として、TDBは次を示しています。
- 総合工事:627件
- 職別工事:965件
- 設備工事:429件
ここであらためて「小規模」「業歴の浅い」層と書いているのは、読者の方に“自分ごと”として読んでもらうためです。数字としても、苦戦ははっきり出ています。
- 負債規模別では、5,000万円未満が57.7%(1,167件)で最多です。
- 業歴別では、5~10年未満が22.8%(460件)と増加基調で、創業間もない時期にコロナ禍を経験し、財務の蓄積が薄いままコスト急騰にさらされた可能性が指摘されています。
「腕がある/仕事がある」と「倒れない」は別物になりやすい、というのが2025年の嫌なポイントです。
4. “主因”で見ると、見落とされがちなリスクが見えてくる
倒産要因の分析でも、2025年の特徴が出ています。
- 人手不足倒産:113件(前年99件→113件)
- 物価高倒産:240件(前年250件→240件。ただし高水準)
- 経営者の病気・死亡:78件(2000年以降で最多)
また、全業種で見ても人手不足倒産は427件証明され、初めて400件を超えて過去最多を大幅更新しています。
物価高倒産も全業種で949件と、2年連続で過去最多更新です。
この手の数字は「景気が戻れば自然に消える」より、体制整備ができているかどうかで差がつきやすい類のものなので、早めに“仕組み側”から手を打つのが現実的です。
5. 倒れやすい会社に起きがちな“連鎖”
下記は倒れやすい会社に起きがちな連鎖です。
- 受注はある(むしろ増えている)
- 立替が増える/工期が延びる
- 追加工事・仕様変更の精算が遅れる(または言い出しにくい)
- 月末の支払いが先に来る
- 運転資金が薄くなる
- 「次の現場を回して取り返す」思考になり、さらに立替が増える
6. いま自社を棚卸しするなら
下記の4つのポイントを早めに棚卸し、対策を講じることが重要です。
6-1. 資金繰り(まず“倒れ方”を潰す)
- 入金サイトと支払サイト:現場ごとのズレを説明できますか
- 立替の上限ルール:これ以上は受けない/条件を変える、の線引きがありますか
- 運転資金の見える化:「売上は増えているのに現預金が減る」を数字で説明できますか
資金繰りで一番怖いのは、「売上が伸びている=安心」と思った瞬間に、足元から崩れることです。請負は、材料費や外注費、人件費が先に出て、入金が後から来る構造になりやすいので、受注が増えるほど“先払い”も増えます。ここを放置すると、会社の体力(現預金)が静かに削られていきます。
実務的には、まず「現場ごとの入金・支払のタイミング」を、ざっくりでよいので並べてみるのが効果的です。難しい管理表は不要で、A4一枚、または簡単な表計算で十分です。例えば、現場ごとに「いつ、いくら支払が発生して、いつ、いくら入ってくるか」を月単位で書き出すだけでも、資金が薄くなる“谷”が見えます。その“谷”が見えた瞬間に、打ち手が決まります(着工金の設定、支払条件の交渉、外注の支払サイト調整、受注量の調整など)。
また、現場が増えるほど効いてくるのが「立替の上限ルール」です。ここは根性論になりがちですが、むしろ逆で、ルールがある会社ほど強いです。たとえば「この現場は立替が○○万円を超えるなら、条件変更(着工金・中間金・単価)を交渉する」「上限を超える場合は、受注しない/開始時期をずらす」など、会社としての“守りの基準”を持つのが現実的です。守りを固めるのは、次の現場を取りにいくための準備です。
6-2. 単価・条件(“頑張り損”を減らす)
- コスト増の扱い:材料・人件費上昇時に、どこまで交渉・反映できる契約になっていますか
- 追加工事の精算手順:口頭変更→請求漏れ、を仕組みで防げていますか
- 工期延長時の扱い:延びたときの負担が誰に乗る契約ですか
2025年型の苦しさは、「忙しいのに利益が残らない」「むしろ忙しいほど苦しくなる」という形で出やすいです。ここで効くのは、気合いではなく、契約・見積・変更管理の“仕組み”です。特に単価転嫁は、交渉力だけでなく「契約に逃げ道があるか」「ルールが事前に書かれているか」で勝負が決まります。
まず「コスト増の扱い」は、材料費や人件費が上がったときに、どの条件なら単価改定を言い出せるのか、を決めておく発想です。完璧な条項でなくても、見積の前提として「材料単価の基準日」「想定工期」「想定人工」を書いておくだけで、後から“根拠”になります。交渉は、感情より根拠が強いです。
次に「追加工事の精算手順」は、現場で一番起きやすい“損の穴”です。口頭で「ついでにこれも」となり、忙しさで書面化できず、請求が曖昧になって、最後に飲み込む。これは会社の能力の問題ではなく、仕組みの問題です。例えば、
- 追加・変更が出たら「その場で写真+メモ」
- 当日中に「簡単な変更確認(メールでOK)」
- 週1で「追加工事一覧」を締める
この3点だけでも、請求漏れは目に見えて減ります。
「工期延長時の扱い」も同様で、延びると現場の張り付きコストが増えるのに、契約上は増えない、となると“頑張った分だけ損”になります。最低限として、工期が延びた場合の費用負担(間接費・現場管理費など)が誰に乗るのかを、社内で説明できる状態にしておくと安全です。
6-3. 人手(足りない前提で設計する)
- 採用より先に:無理な案件を断れる体制(選別受注)がありますか
- 協力会社の固定化:毎回探す構造になっていませんか
- キーマン依存の可視化:1人抜けたら止まる工程がありませんか
人手不足は、採用で解決できるときもありますが、現実には「採用できない期間が続く」ことも多いです。そのため、実務としては “足りない前提で回る設計” に寄せたほうが、倒れにくくなります。ここでいう設計は、根性ではなく、受注の選び方と回し方のことです。
まず「採用より先に、選別受注」です。これは攻めをやめる話ではなく、“勝てる戦いだけを選ぶ”という話です。具体的には、
- 工期が短すぎる(残業前提になる)
- 追加変更が多いのに精算が弱い
- 支払条件が悪い(立替が重い)
このタイプの案件は、忙しさを増やす割に体力を奪いやすいので、条件変更の交渉ができないなら「受注時期をずらす」「範囲を減らす」など、取り方を変えるのが現実的です。
次に「協力会社の固定化」です。毎回探す状態は、単価も品質も納期も不安定になり、結局トラブル対応の工数が増えます。協力会社を“固定化”するというのは、ベタベタに囲い込むことではなく、「繁忙期に声をかけられる相手を複数持つ」「得意工種ごとに2社目を用意する」という意味です。人手不足の局面ほど、ネットワークの有無がそのまま利益に直結します。
最後に「キーマン依存の可視化」です。これは“優秀な人がいる”こと自体は強みですが、その人が倒れたり辞めたりした瞬間に現場が止まるなら、会社としてはリスクになります。工程ごとに「誰しかできない仕事」がどこにあるかを書き出し、できるところから手順化・引き継ぎ可能化していくのが、堅い打ち手です。
6-4. 経営者リスク(最後にして最重要)
- 不在時の意思決定:誰が、何を、どこまで決められますか
- 連絡導線の文書化:金融機関・主要取引先・外注先の連絡系統が会社に残っていますか
- 許認可・契約・印鑑の管理:属人化していませんか
ここは、気が重いテーマなので後回しにされがちですが、実務的には「最後にして最重要」です。というのも、経営者が不在になったときに止まるのは、現場だけではなく、支払い・契約・意思決定・信用の流れ全体だからです。逆に言えば、ここを整えておくと、会社の“倒れにくさ”が一段上がります。
まず「不在時の意思決定」は、代理の範囲を決めることです。たとえば、
- ○○万円までの発注は誰が決裁できるか
- 追加工事の受諾判断は誰ができるか
- トラブル時の一次対応は誰が担うか
ここが決まっていないと、社内が「社長待ち」になって止まり、外部から見ると“会社が機能していない”ように映ります。緊急時ほど、判断の速さが信用になります。
次に「連絡導線の文書化」です。金融機関・主要取引先・協力会社・現場責任者の連絡先が、個人スマホや個人LINEに偏っている会社は少なくありません。ですが、いざというときにそれが壁になります。最低限、会社としての連絡網(紙でもデータでも)を持ち、更新する運用を作るだけで、緊急時の混乱が減ります。
そして「許認可・契約・印鑑の管理」。ここは地味ですが、止まりやすいポイントです。印鑑や契約書、許認可関連の書類が属人化していると、緊急時に“何も進まない”状態になります。保管場所、持ち出しルール、誰がアクセスできるか、を決めるだけでも効果があります。
最後に一文だけ補足すると、事業承継や緊急時対応は、計画を作っておくだけで、金融機関の見方が変わることがあります。少なくとも「この会社は偶発リスクを放置していない」と説明できるようになります。これは融資や条件変更の相談をするときに、静かに効いてきます。
7. おわりに:守りを固めるのは、攻めるためです
2025年の建設業倒産は、需要の有無というより、コストと人と資金繰りの同時圧力が表に出た年でした。
ただ、見方を変えると「打ち手が見えやすい苦しさ」でもあります。資金繰りと条件設計、そして止まらない体制づくり。ここを一つずつ整えるだけでも、倒産リスクは現実的に下げられます。
「うちの場合、どこから手を付けるべきか分からない」というときは、まず 資金繰り(運転資金)/契約条件(単価転嫁・追加工事精算)/人の詰まり/経営者不在時の手順 を、A4一枚に書き出してみてください。やることが“言葉”になった瞬間から、打ち手が具体化します。
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