孤独を抱えがちなベテラン社長こそAIを“壁打ち相手”に ITが苦手でもできる中小企業のAI活用入門

AIを壁打ち相手に

「AIってちょっと得体が知れない」「結局は事務作業を自動化するためのものでしょう?」そんなふうに感じているベテラン経営者の方は多いと思います。

たしかに、AIを使うと

  • お知らせ文やメール文が早く書ける
  • 議事録のたたき台を作ってくれる

といった「事務の効率化」は実現しやすくなります。

でも、本当にお伝えしたいのはそこではありません。
ベテラン社長にとって一番価値が大きいのは、AIを「壁打ち相手」として使うことです。

  • 頭の中のモヤモヤを言語化してくれる
  • 自分の考えにツッコミを入れてくれる
  • 新しい視点や選択肢を出してくれる

こうした使い方が、経営の質にじわじわ効いてきます。

そしてもう一つ、大事なポイントがあります。
キーボードで長い文章を打てなくても大丈夫です。
スマホアプリ版のChatGPTなどを使えば、マイクボタンを押して、電話で若手社員に指示を出すように「話しかけるだけ」で使い始めることができます。ここが、ITが苦手な世代にとっての大きな味方になります。

目次

1. なぜ「事務効率化」より「壁打ち」なのか

多くの解説では、AIは「業務効率化の道具」として紹介されます。
しかし、ベテラン社長にはもっと切実な悩みがあります。

  • 会社の将来について、本音で相談できる相手が少ない
  • 社員には心配をかけたくない
  • 銀行や取引先には弱みを見せづらい
  • 顧問税理士や社労士には、日々のモヤモヤまでは話しづらい

つまり、「経営のことをフラットに一緒に考えてくれる相手」が足りない、ということです。

AIは、ここにうまくはまります。

  • 何度同じことを聞いても嫌な顔をしません
  • 夜中でも早朝でも付き合ってくれます
  • 愚痴半分の相談でも、きちんと受け止めて整理してくれます

もちろん、最終判断は社長にしかできません。
ただ、その前段階の

  • 状況の整理
  • 選択肢の洗い出し
  • 自分の考えの弱点探し

を手伝ってくれる「壁打ち相手」としては、とても優秀な存在です。

2. ベテラン社長とAIの相性が良い理由

2-1. 判断軸と経験は社長が持っているから

AIは「情報やアイデアを整理して出す」のが得意な道具です。
どの選択肢をとるか、どこにリスクを見るかは、やはり社長の経験と勘が必要になります。

ですから、

AI:案を出す係・メモ係・議事録係
社長:何を大事にするか決める係

という役割分担にすると、ベテラン社長の強みが一番活きます。

もっと言えば、「AIは優秀だけど空気の読めない新入社員」だと思っていただくと分かりやすいです。

知識はものすごく豊富ですが、

  • 会社の歴史
  • 社長の想い
  • 社員一人ひとりの事情

は知りません。だからこそ、社長が「最後に判断してあげる」必要があります。

2-2. 社長だけが「経営全体」を語れるから

  • 営業
  • 現場
  • 経理
  • 採用・人事

これらを全部、長年見てきたのは社長ご本人です。
AIに状況を伝えるときも、社長だからこそ会社全体のことを話すことができます

「全体を語れる人」が壁打ち相手としてAIを使うと、返ってくる提案や整理も、かなり実務に近い形になります。

2-3. 周りに言えない本音も、とりあえず出せるから

AI相手には、たとえば

  • 「本当はこの事業を畳みたいと思っている」
  • 「あの取引先の条件は無茶だと感じている」
  • 「後継ぎのことを考えると夜眠れない」

といった、本音ベースの話もしやすくなります。

本音をそのまま出しても大丈夫です。
そのうえで、

「では、その前提で選択肢を整理しましょう」

という形で話を進めてくれるのが、壁打ちAIの良さです。

3. 壁打ちとしての具体的な使い方と

AIへの聞き方(プロンプト)の具体例を紹介します。

※パソコンで打つのが面倒な方は、スマホアプリのマイクボタンを押して、この通りに話しかけるだけでもOKです。
電話で若手社員に指示を出すような感覚で、「今から条件を話します。最後に『以上です』と言いますので、それまではメモを取って聞いていてください」と言ってから話し始めれば十分です。

基本の形は、

  1. AIに役割を伝える
    • 「経営コンサルタントのように」「人事アドバイザーとして」など
  2. 自社の状況を書く(話す)
    • 業種・規模・売上の柱など
  3. 悩んでいることと、欲しいアウトプットを書く

という3ステップだけです。
ここでは「AIへの聞き方テンプレート(いわゆるプロンプト=魔法の言葉)」をそのまま載せていきます。

3-1. 経営のモヤモヤを言語化してもらう

こんなとき

  • 売上は落ちていないのに、将来が不安
  • このままのやり方でいいのか、ずっとモヤモヤしている

聞き方(プロンプト例)

あなたは、中小企業診断士のような立場で、地方の小さな会社の経営相談に乗る専門家として答えてください。
うちの会社の状況は【業種・社員数・主な売上の柱】です。

最近、次のようなモヤモヤがあります:
【箇条書きで3~5個書く/話す】

  1. まず、私が書いた(話した)内容から、「どんな不安・課題が背景にありそうか」を3つに整理してください。
  2. 次に、それぞれの不安について、「今すぐできる小さな一歩」を1つずつ提案してください。
解答例
ChatGPTの回答例

3-2. 人・組織の悩みを整理する

こんなとき

  • ベテランと若手の温度差が大きい
  • 管理職候補がなかなか育たない
  • 人を増やしたいが、人件費がこわい

聞き方(プロンプト例)

あなたは、中小企業の人事や組織づくりに詳しいアドバイザーとして答えてください。
うちの会社の状況は【業種・社員数・平均年齢など】です。

今、次のようなことで悩んでいます:
【具体的に状況を書く/話す】

  1. 問題になっていそうな点を3つ整理してください。
  2. 「今すぐできる対策」と「半年~1年かけて取り組む対策」を、それぞれ3つずつ提案してください。

3-3. 新規事業・投資の「試し方」を考える

こんなとき

  • ECや新サービスをやるべきか迷っている
  • 補助金を使って設備投資をしたいが、きちんと回収できるか不安

聞き方(プロンプト例)

あなたは、中小企業の新規事業の検討を手伝うコンサルタントとして答えてください。
うちの会社の状況は【業種・売上構成・設備など】です。

これから検討している案は次の3つです:
1)〇〇 2)△△ 3)□□

それぞれについて、

  • 良い点
  • リスクや注意点
  • 小さく試すとしたら、最初の一歩は何か
    を教えてください。

最後に、「今の会社の体力と人員を前提にすると、どれから試すのが現実的か」を理由付きで教えてください。

3-4. 自分の考えに「ツッコミ」を入れてもらう

こんなとき

  • 自分の考えが独りよがりになっていないか確認したい
  • あえて反対意見を出してほしい

聞き方(プロンプト例)

今から、私が考えている方針案を説明します。
あなたは、社外取締役のような立場で、「それは本当に大丈夫か?」という目線でツッコミを入れてください。

【ここに自分の考え・方針案を書く/話す】

  1. この方針の「リスク」や「見落としていそうな点」を5つ挙げてください。
  2. そのうえで、「少し安全側に寄せるとしたら、どのような修正案があるか」を3つ提案してください。

3-5. 社長メッセージやコラムの骨子づくり

こんなとき

  • 社員に向けて、方針を文章で伝えたい
  • 商工会やニュースレター向けに社長コラムを書きたい

聞き方(プロンプト例)

小さな会社の社長として、社員向けのメッセージ文の骨子を作りたいです。

テーマは【例:これから3年間の会社の方針/人を大事にする働き方】です。

  1. まず、このテーマについて社員に伝えたいことを整理するために、私に3つ質問してください。
  2. 私の回答を踏まえて、「見出し」と「各見出しごとの要点(箇条書き)」を作ってください。
  3. そのあとで、A4一枚程度の文章のたたき台を書いてください。

4. 事務作業の効率化は「入口」として軽く押さえる程度で十分です

社長ご本人は、AIをまず「壁打ち相手」として使うのがおすすめです。
一方で、事務作業の効率化は、「社長の口頭指示をもとに事務担当や若手社員がAIを使って進める」くらいの位置づけでちょうど良いと思います。

代表的な使いどころは、次の3つです。

  • 顧客向けのお知らせ文(価格改定・営業時間変更・休業案内など)
  • 角を立てない「お断りメール」の文案
  • 手書きメモからの議事録・打ち合わせメモの整理

「こういうところはAIに投げられる」と頭の片隅に置いておくだけでも、だいぶ気持ちがラクになります。

5. 安心して相談に使うための4つのルール

壁打ちで本音を話すからこそ、最低限のルールを決めておくと安心です。

  1. 実名・金額はぼかして話すこと
    • 「A社」「Bさん」「おおよそ○%」程度でも、壁打ちには十分です。
  2. AIの回答は“意見の一つ”として扱うこと
    • 正解として受け取らず、「そういう見方もあるか」と踏まえたうえで判断します。
  3. 最終的な判断と責任は社長自身が持つこと
    • ここはいつも変わりません。AIはあくまで「整理・提案・たたき台」の役割です。
  4. 1回で正解が出なくても、会話を続けること
    • 初めて使ったとき、少し一般的な答えが返ってきても普通です。
    • 「もう少し詳しく」「具体的には?」「うちのような小さな会社の場合は?」と、人間相手と同じようにツッコミを重ねていくことで、答えの精度が上がっていきます。

この4つだけ意識しておけば、「AIに相談していいのか?」という不安はかなり小さくなりますし、最初の「ガッカリ体験」もだいぶ防ぎやすくなります。

6. つむぎ行政書士事務所としての考え方

AIと人の専門家の役割分担

つむぎ行政書士事務所としては、AIと人の専門家を次のように考えています。

AIの得意なこと

  • 情報や考えの整理
  • 選択肢や視点をたくさん出すこと
  • 文章や資料のたたき台づくり
  • 「論理」と「確率」に基づいて、もっともらしい案を提示すること

人間の専門家(診断士・行政書士など)の得意なこと

  • 数字や制度を踏まえた「現実的な落としどころ」の設計
  • 関係者の利害や感情を踏まえた調整
  • 「その会社・その社長らしさ」を大事にした方針決定の伴走
  • 社長の想い・社員の顔・地域との関係性を含めて、一緒に悩み抜くこと

AIは、あくまで「論理と確率」で答えます。
一方で、人間の専門家は、

  • この社長は何を大事にしているのか
  • この社員にはどんな事情があるのか
  • この地域でこの決断をしたとき、どんな空気になるか

といった、「数字やロジックだけでは測れない部分」も含めて一緒に考えることができます。

イメージとしては、

  1. 社長+AIで、まず頭の中を整理し、選択肢を出す
  2. そのうえで、「ここから先は専門家と一緒に詰めたい」という部分を、人間の専門家に相談する

という二段構えが、いちばん無理がなく、効果も出やすいと考えています。

7. まずは「一つだけ壁打ちテーマを決める」ところから

AIは、社長の代わりに決断してくれる存在ではありません。
ですが、

  • モヤモヤを言語化してくれる
  • 選択肢やツッコミを出してくれる
  • 社長メッセージや文章のたたき台を一緒に作ってくれる

という意味で、ベテラン経営者の「壁打ち相手」としては、とても頼りになるパートナーになりえます。

ITが苦手でも大丈夫です。
キーボードが苦手でも、スマホに向かって話しかけるだけで十分です。

最初の一歩は、次の3つだけです。

  1. まずは一つ、「今いちばん気になっているテーマ(悩み)」を決める
  2. 若いコンサルや信頼できる部下に話すつもりで、AIに状況を説明してみる
    • 打つのが面倒なら、スマホのマイクに向かってそのまま話す
  3. 出てきた答えにツッコミを入れながら、「自分なりの結論」を言葉にしていく

この繰り返しが、社長の思考整理と会社の方針づくりを、少しずつラクにしてくれます。

8. 「AIを社長の壁打ち相手にする設計」を一緒に考えませんか

この記事でご紹介したのは、あくまで一般的な考え方と、そのまま使える「AIへの聞き方テンプレート(プロンプト)」です。

実際には、

  • 会社の規模や業種
  • 社長のタイプ(慎重派か、攻めるタイプか)
  • どこまでAIに任せたいか

によって、「ちょうどいい壁打ちのやり方」は変わってきます。

つむぎ行政書士事務所では、中小企業診断士・行政書士として、

  • 社長のモヤモヤの棚卸し
  • AIに相談するテーマの選び方
  • AIと人の専門家の役割分担の設計
  • 実際の聞き方テンプレート(プロンプト)の作り込み

などを、一緒に整理する個別相談も承っています。2026年に改正される行政書士法でも、職責として「デジタル化の推進役」を期待されています。

お問い合わせフォームやお電話から、どうぞお気軽にご連絡ください。

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