住宅宿泊管理業の再委託とは?ホストが知っておきたいルールと管理業者チェックポイント
住宅宿泊管理業の「再委託」、ホスト側から見るとかなり分かりづらいテーマですよね。
「掃除は自分でやっちゃダメなの?」「駆け付け代行サービスって合法なの?」と不安になりやすいところです。
今回は、ホストの方向けに、
- 法律・ガイドラインがどこまでを認めているのか
- ホスト自身はどこまで関わってよいのか
- 管理業者や清掃会社と契約するときに何を確認すればよいのか
を、できるだけ実務寄りに整理してみます。
この記事のゴール
この記事を読み終えたときに、次の三つがスッキリしている状態を目指します。
- 「再委託」とは何を指しているのかが、ざっくりイメージできる
- 「ホストが掃除したら違反なの?」というモヤモヤが、ある程度整理できる
- 管理業者や清掃会社と話すときに、何を聞けばよいか分かる
細かい法解釈は専門家や行政との確認が必要ですが、ホストとして「危ない匂いがする運営」と「筋の通った運営」の見分けがつくようになるのがゴールです。
そもそも「再委託」とは何か
登場人物を整理する
まずは、登場人物を整理しておきます。
- 住宅宿泊事業者(ホスト)
物件の所有者・賃借人で、民泊の届出をした人です。 - 住宅宿泊管理業者
遠隔のホストなどから「管理」を引き受ける、登録制の事業者です。法第35条などの規制を受けます。 - 再委託先
管理業者から「清掃」「駆け付け」など一部の業務を頼まれる、清掃会社や地元の事業者などです。
図にすると、イメージはこうです。
- ホスト → 管理業者(ここが法律上の「委託」)
- 管理業者 → 清掃会社・駆け付け会社など(ここが「再委託」)
「再委託」と「単なるツール利用」の違い
最近は、
- タブレットでのセルフチェックイン
- コールセンター型の駆け付け代行サービス
- スマートロック管理サービス
など、ITツールや外部サービスが増えています。
ここで大事なのは、
- サービス提供会社に「仕事を丸ごと任せている」のか
- 管理業者が主体で運営していて、「道具として使っているだけ」なのか
という違いです。
- 料金を払って、実際の対応をしてもらっているなら「再委託」に近い
- 管理業者が全体を設計し、ツールはあくまで「道具」に過ぎないなら、単なるツール利用
というイメージで考えると整理しやすくなります。
法律とガイドラインの枠組み
「全部丸投げは禁止・一部の再委託は条件付きでOK」
住宅宿泊事業法第35条は、次のようなルールを定めています。
管理業者は、ホストから委託された管理業務の「全部」を他人に再委託してはならない
ただし、国土交通省の民泊制度ポータルが示すとおり、
管理受託契約に「一部の再委託」を認める定めがある場合には、その範囲で再委託は可能
という整理になっています。
また、ガイドラインでは、
- ホストは一つの届出住宅について、一の管理業者に委託しなければならない
- 管理業務を複数の者に分割してホストがそれぞれと契約することは認めない
- 管理業務の一部をホスト自ら行うことも、原則として認めない
- ただし、管理業者が他の者に管理業務の一部を「再委託」することは差し支えない
とされています。
つまり、
- ホストは「一社の管理業者に丸ごと委託する」のが原則
- その管理業者の側で、「清掃だけ地元の会社に頼む」など一部再委託を組み立てることはOK
という構造です。
管理業者が自ら行うべき「中核業務」の例
では、「どこまでなら再委託してよいのか?」という話になります。
国のガイドラインでは、「再委託は一部に限る」としつつ、趣旨として「名義貸しや全部丸投げを防ぐため」と説明しています。
そこからすると、管理業者が自ら行うべき「中核業務」のイメージは、例えば次のようなものです。
- 法令に沿った運営方針を決めること
- 届出内容の管理(変更・廃止の届出など)
- 宿泊日数、いわゆる「年間180日ルール」の管理
- 行政への定期報告・帳簿の整備
- 近隣からの苦情やトラブルがあったときの窓口になること
- 再委託先の選定・監督を行うこと
これらまで丸ごと他人に振ってしまうと、「自分では何もしていない管理業者」に近づいてしまい、ガイドラインの趣旨に反する危険ゾーンです。
NGパターン「自分では何もしない分割再委託」
例えば次のようなケースは、相当危うい形です。
- 書類上はA社が管理業者だが
- 清掃はB社
- 駆け付けはC社
- 宿泊者対応や帳簿はD社
- A社は、実質的には紹介と名義貸しだけ
このような「自分では何もしていない管理業者」は、ガイドラインが禁じる「全部再委託」や名義貸しと評価されるおそれが高く、ホストとしても巻き込まれたくないパターンです。
ホストが誤解しやすいポイントQ&A
Q1 ホストが掃除をしてはいけないのか?
一番よくある疑問がこれです。
ガイドライン上は、
- ホストが管理業務の「一部を自ら行う」のは認めない
- 管理業務は一の管理業者に一括で委託する
という建付けになっています。
ただし、実務上は少しグラデーションがあります。
- 問題になるのは、「誰の指示・責任として」やっているか
- 管理業者のスキームの中で、ホストが「清掃要員の一人」として再委託を受けている形なのか
- それとも、管理業者を通さずにホストが勝手に清掃業者を手配しているのか
といった違いです。
ホストが掃除という「作業」を行うこと自体が、即違法というわけではありません。
しかし、
- 管理業者が把握していない
- 清掃の品質管理や事故対応の責任があいまい
- 実態として「管理業務の一部をホストが担っている」状態になっている
となってくると、ガイドラインの想定から外れていく可能性が出てきます。
「自分も動きたいんだけど…」という場合は、
- 管理業者はその前提でスキームを組んでいるのか
- 再委託契約の一つとして位置づけられているのか
- 自治体の解釈とも矛盾しないか
を、必ず管理業者や専門家と事前にすり合わせしておくのがおすすめです。
Q2 再々委託(孫請け)はどこが危ないのか?
現場ではよく、
- 管理業者 → 清掃会社(一次再委託)
- 清掃会社 → 個人事業主に再々委託(孫請け)
といった流れも見られます。
法律上、「再々委託を禁止する」という明文規定はありませんが、
再委託については「管理業者が責任をもって指導監督せよ」という考え方が一貫して示されています。
つまり、
- 再々委託が重なるほど、
- 誰が現場を見ているのか
- 誰が指示を出すのか
- トラブル時に誰が説明できるのか
が分かりにくくなり、結果として管理業者の監督責任が問われやすくなります。
ホストの立場からは、
- 再々委託を認めているのか
- 認めているなら、どういう条件・仕組みで監督しているのか
- 何かあったとき、ホストの窓口はあくまで管理業者で一元化されているか
といった点を、契約前に確認しておくと安心です。
Q3 ITツール・駆け付け代行サービスは再委託なのか?
最近多いのが、
- コールセンターや警備会社の「駆け付け代行サービス」
- タブレット端末でのチェックイン・チェックアウト管理
- スマートロック連携のシステム
などを組み合わせた運用です。
ここでのポイントは、
- その会社が、管理業務の「一部を実際に行っている」のか
- それとも、単にシステムを提供していて、運用の主体は管理業者なのか
という点です。
ホストとしては、
- そのサービスを使うとき、「誰が何の責任を負うのか」
- トラブルが起きたとき、「誰が現場に行くのか」「誰が行政に説明するのか」
を確認しておくと、再委託なのかツール利用なのかの線引きがイメージしやすくなります。
再委託できる業務・できない業務
再委託されやすい典型業務
管理業者が再委託しやすい業務として、例えば次のようなものがあります。
- 清掃・リネン交換
- ゴミの分別・一時保管・集積所までの運搬
- 設備の簡易点検・消耗品の補充・軽微な修繕
- チェックイン立会い・鍵の受け渡し
- 緊急時の駆け付け(騒音・設備トラブルなど)
- 宿泊者名簿の作成補助(記入案内、システムへの入力など)
いずれも、「現場での作業」が中心であり、最終的な責任やルールづくりは管理業者が握っているべき領域です。
名簿作成の「補助」と「管理責任」の違い
宿泊者名簿まわりは、特に線引きがあいまいになりがちです。
- 補助のイメージ
- 宿泊者に記入してもらった内容を、所定の様式やシステムに入力する
- 管理業者が決めたルールに従って、必要項目を漏れなく集める
- 管理責任のイメージ
- 何をどこまで記録するかという「ルール」そのものを決める
- 名簿をいつまで・どのように保管するかの方針を決める
- 行政への報告書を作成し、内容を最終確認して提出する
後者は明らかに「管理業者の中核業務」に属する部分であり、丸投げすると危険です。
ホストとしては、
- 名簿作成の「補助」を誰がやっているのか
- 名簿管理の「責任」は誰が持っているのか
を分けて意識しておくと、再委託スキームの健全性をイメージしやすくなります。
中核業務として残すべき法定義務の例
管理業者が自ら行うべき、典型的な法定義務としては、例えば次のようなものがあります。
- 年間180日ルールの管理(宿泊日数の集計・調整)
- 届出内容の変更・廃止の手続き
- 帳簿書類の作成・備付け・保存
- 行政への定期報告
- 苦情・事故発生時の窓口および対応方針の決定
- 再委託先の選定・監督・指示
ホスト側から見ると、
- これらを全部「やらない」管理業者
- 「いやそこも全部オーナーさんにお任せしますよ」と平然と言う管理業者
は、かなり注意して見た方がよいサインになります。
契約書で押さえたい再委託・再々委託の条項
管理受託契約書(ホストと管理業者)のチェックポイント
ホストと管理業者の契約書を見るときは、最低限次のような点を確認したいところです。
- 再委託に関する基本方針
- どの業務を、どの範囲で再委託する可能性があるか
- 再委託しても最終責任は管理業者にあることが明記されているか
- 再委託先の事前説明・変更通知
- 再委託先の会社名・所在地・連絡体制などをホストに開示すること
- 再委託先を変更する場合、ホストに事前または事後に通知すると決めているか
- 危機管理の条項
- 再委託先が業務を履行しなかった場合、管理業者がどう代替措置を取るか
- 再委託先が明らかに不適切な対応をした場合、ホストから改善や変更を求める手続きがあるか
- 管理受託契約自体を解約したい場合の条件・手続き
このあたりが一切書かれていない場合は、管理業者に「運用ルールを決めていない」か、「決めていても書面化していない」可能性があります。
管理業者と再委託先の契約で盛り込みたいポイント(ホスト目線)
ホストが直接その契約書を手にするとは限りませんが、できれば次のような点を確認したいところです。
- 業務範囲・品質基準
- どこまでやるのか(例: 掃除機がけだけなのか、ベッドメイクまで含むのか)
- 写真報告やチェックリストなど、品質をどう確認するのか
- 緊急時対応
- 夜間・早朝の駆け付けが必要な場合、どこまで対応する契約か
- 連絡フロー(誰が誰に、どの順番で連絡するのか)
- 個人情報・鍵管理
- 宿泊者情報を扱う場合、その保護ルールがどうなっているか
- 合鍵やキーボックスの管理方法
- 損害賠償と保険
- 物損やクレームが発生した場合の責任の範囲
- 必要な保険に加入しているかどうか
- 再々委託の扱い
- 原則禁止か、事前承諾制にしているか
- 許される場合でも、管理業者が把握・監督できる仕組みがあるか
こうした点について、「契約書でどうなっていますか?」と質問したときに、きちんと説明してくれる管理業者は、信頼度が高いと言えます。
ホスト目線の管理業者チェックリスト
① 自社で何をしているのか、書面で説明してもらう
まずはシンプルに、次の三つを一覧にしてもらうイメージです。
- 管理業者が自社で行う業務
- 再委託している(または再委託予定の)業務
- ホスト側には一切やってもらわない業務
これを紙一枚でもよいので書いてもらうと、
- 「この管理業者はちゃんと自分で仕事をしているのか」
- 「どの部分を再委託でうまく回しているのか」
が見えやすくなります。
② 再委託・再々委託の体制を確認する
具体的には、次のような質問をすると、実態がかなり透けて見えます。
- 清掃に来るのは、御社の社員ですか?それとも委託先の会社ですか?
- その委託先が、さらに別の人に仕事を出す(再々委託)ことはありますか?
- 騒音クレームなどがあったとき、最初に電話が行くのはどこですか?
- ホストとして相談したいときの窓口は、常に御社で一元化されていますか?
ここで答えがあいまいだったり、担当者が即答できない場合は、「管理業者自身が全体像を把握し切れていない」可能性があります。
③ 料金と業務範囲のバランスを見る
「安い管理業者=悪」ではありませんが、料金には必ず理由があります。
- 格安なのに、「自社で手厚く全部やります」というのは現実的ではありません
- 逆に、高いのに再委託だらけで、管理業者自身はほとんど動かない、という場合も要注意です
見るべきポイントは、
- どの業務を自社でやってくれているのか
- どこから先が再委託なのか
- その再委託の管理方法が料金に見合っているか
です。
「自分の希望とリスク許容度に合っているか」という観点で考えると、冷静に判断しやすくなります。
地方物件・遠隔運営での再委託活用
駆け付け要件を意識した現地パートナー選び
国のガイドラインでは、
おおむね30分以内程度で駆け付けられる体制
など、現実的な目安が示されています。
地方物件の場合、
- 管理業者は都市部
- 実際の駆け付けや清掃は、地元の事業者に再委託
というスキームが一般的です。
その際の選定基準としては、
- 物件からの移動時間(ラッシュ時を含めて)
- 夜間・休日も対応できる体制があるか
- 連絡手段(電話だけか、チャット等もあるか)
- 「やります」と言うだけでなく、実績があるか
といった点が重要になります。
管理業者が少ないエリアでの工夫
一部の地域では、
- そもそも登録済みの住宅宿泊管理業者が近くにいない
- 現地の不動産会社や大家さんに再委託するしかない
というケースもあります。
このような場合も、
- 「書類上だけ管理業者」「実態は大家さんが全部やっている」
という状態になると、やはりガイドラインの趣旨から外れてしまいます。
ホストとしては、
- 現地で動く人と管理業者の役割分担
- 行政対応や帳簿管理を誰が担うのか
を、最初の段階でしっかり整理しておくことが大切です。
ホスト自身が一部業務を担いたい場合の考え方
「近くに住んでいるし、清掃や草刈りくらいは自分でやりたい」というホストも多いです。
この場合は、
- その業務が「管理業務の中核部分」に当たらないか
- 管理業者の再委託スキームの一部として、きちんと位置づけられているか
- 自治体の解釈と矛盾しないか
を、一つずつ確認する必要があります。
現場のニーズと制度のルールには、どうしてもギャップが生まれがちです。
「何となくみんなやっているから」ではなく、グレーに感じる部分は一度整理してから動く方が、結果的に安心です。
行政対応・監督リスクと記録の残し方
どんなときに行政から指導が入るのか
行政の立入検査や指導は、例えば次のようなきっかけで行われることが多いとされています。
- 近隣住民からの苦情・通報
- 宿泊者からの重大クレームや事故
- 定期報告や帳簿の内容に不自然な点がある場合
再委託まわりが問題になるのは、
- 「現場で誰が何をしているのか」を管理業者が説明できない
- 再委託の契約書が無い、または内容と実態がズレている
といったケースです。
処分のイメージと再委託の関係
法令や公表資料では、
- 指導・改善要請
- 勧告・業務停止命令
- 悪質な場合の登録取消し
などの手段が用意されており、
「再委託の仕方」が雑だと、こうしたリスクに直結しやすくなります。国土交通省+1
ホスト自身が直接処分の対象になるとは限りませんが、
- 管理業者が業務停止になってしまい、運営が止まる
- 行政から「運営の実態」について説明を求められる
といった形で、影響を受ける可能性があります。
どんな記録を、どのくらい保管しておくべきか
管理業者側の義務として、
- 管理受託契約の内容
- 報酬額
- 管理業務の内容
などを帳簿に記載し、保存することが求められています。
ホストとしても、最低限次のような書類は手元に残しておくと安心です。
- 管理受託契約書
- 再委託に関する説明資料やメールのやり取り
- 清掃や駆け付けの実績報告(写真・チェックリストなど)の控え
- トラブルがあったときの対応経過メモ
保存期間については、
帳簿類の保存期間(たとえば3年など)に合わせて、再委託関連の書類も残しておくと、いざというときに説明しやすくなります。
まとめと「こんな場合は要注意」チェックリスト
再委託を上手に使えば、ホストの負担は減らせる
ここまで見てきたように、
- 再委託そのものは、法律で認められたスキーム
- 問題なのは「全部丸投げ」と「責任のあいまいさ」
です。
ホストが構造を理解しておくことで、
- 管理業者と対等にスキームの話ができる
- 「ちょっと危ないかも?」という感覚も持てる
ようになります。
こんな場合は要注意チェックリスト
次のような状態に心当たりがあれば、一度運営体制を見直してみることをおすすめします。
- 管理業者が「自社で何をやっているか」を説明してくれない、または答えが曖昧
- 実際に物件に来る人の会社名や立場が、ホストにもよく分からない
- 再委託・再々委託について契約書に一切触れられていない
- 苦情やトラブルがあったときの窓口が、状況によってコロコロ変わる
- 管理料が極端に安いのに、「なぜ安いのか」を聞いても納得できる理由が出てこない
一つ二つ当てはまるからといって即アウトではありませんが、「これは整理した方が良さそうだな」と感じたところから少しずつ見直していくと、リスクはかなり下げられます。
専門家に相談するときのメニュー例
最後に、「誰かに相談したい」と思ったときのイメージを、ざっくり挙げておきます。
- 現在の運営スキームが、法令やガイドラインの趣旨と大きくズレていないかの簡易診断
- 管理受託契約書・再委託契約書のレビュー
- 行政への事前相談に持っていくための論点整理
- 地方物件・遠隔運営向けの体制設計(駆け付け要件を満たす現地パートナーの組み込み方など)
「何となく不安だけど、どこが問題なのか言語化できない」という状態が、一番ストレスが大きくなりがちです。
気になるポイントがあれば、早めに第三者の目を入れてスキームを整理してしまった方が、
長期的にはホスト自身の安心にもつながります。
