茨城での創業をデータで読み解く|開業・廃業・補助金から考える「当たりやすいビジネスモデル」
はじめに:なぜ創業前に「データ」を見るのか
「茨城で本当に食べていけるのかな」
「今さら始めても、もう遅いんじゃないか」
「補助金って、どうせ一部の人しか使えないんでしょ?」
茨城で創業を考えるとき、こんな不安が頭をよぎることはありませんか。
もちろん、最後に決め手になるのは「自分が何をやりたいか」です。
ただ同時に、「やりたいこと」と「この地域で求められていること」の接点がどこにあるのかを、一度立ち止まって見つめ直すことも大切です。
そのとき頼りになるのが、開業率・廃業率・補助金の採択事例といった「客観的なデータ」です。
- どの業種が「参入しやすいけれど辞める人も多い」のか
- 茨城では、どの分野で事業者が増えたり減ったりしているのか
- 県や市が「お金を出してでも増やしたい」と考えている起業テーマは何か
こうした数字を見ることで、「なんとなく不安」だったものが、輪郭のある不安に変わり、対策が立てやすくなります。
この記事では、全国と茨城のデータ、公的支援策、採択事例などを手がかりに、「茨城で“当たりやすいビジネスモデル”をどう考えるか」を一緒に整理していきます。
全国の開業率・廃業率から見る「当たりやすさ」の大枠
開業率・廃業率という“出入りの激しさ”を測るものさし
中小企業白書や小規模企業白書のデータによると、近年の日本全体の開業率・廃業率は、おおむね次のように整理されています。
- 2022年度
- 開業率:全国平均 約3.9%
- 廃業率:全国平均 約3.3%
- 2023年度
- 開業率:3.9%(ほぼ横ばい)
- 廃業率:3.9%(やや上昇)
また、業種別に見ると、
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業(美容室、エステ、各種教室など)
といった分野は、開業率も廃業率も相対的に高い、いわば「出入りの激しい世界」です。一方で、製造業や一部のBtoBサービスなどは、参入障壁がある代わりに、急な出入りが少ない傾向があります。
ここで大事なのは、
「飲食や美容は危ないからやめておけ」
という話ではなく、
「数字の上でも“差がつきやすい世界”なんだ」
という事実を、最初に知っておくことです。
地域によって前提条件は違う
開業率・廃業率には、地域差もあります。
茨城県が公表している資料では、2021年度の都道府県別データとして、次の数字が紹介されています。
- 茨城県の開業率:4.5%(全国平均 4.4%)
- 茨城県の廃業率:2.7%(全国平均 3.1%)
つまり、直近のデータだけを見ると、
- 茨城は「全国平均と比べて、やや“新しく始める人”が多く、やめる人は少ない」状態
と言えます。
一方で、人口減少・高齢化といった構造的な課題も抱えています。
「東京と同じ感覚で起業する」とはさすがにいきませんが、「何をどう仕掛けるか次第でチャンスはある」位置にいる、と捉えられます。
データで見る「茨城県の開業・廃業・休廃業」の現状
「倒産」ではなく「静かな引退」が増えている
帝国データバンクの「茨城県『休廃業・解散』動向調査(2024年)」によると、2024年に休廃業・解散となった茨城県内の企業は1,257件、前年比16.5%増で、3年連続の増加となっています。
その内訳も特徴的です。
- 「資産超過」(資産が負債を上回っている状態)で休廃業・解散した企業:58.8%
- 直前決算が「黒字」だった企業:59.2%
- 「資産超過」かつ「黒字」で辞めた企業:11.8%
つまり、
- お金が尽きて倒産するのではなく、
- まだ余力のあるうちに、自主的に店を畳むケースがかなり増えている、
ということです。
小さな食堂の「黒字廃業」ストーリー
たとえば、県北のある町で長年続いた小さな食堂の話です(実在の統計をもとにしたイメージです)。
- ご夫婦2人で40年以上営業
- 常連さんも多く、最後まで赤字にはならなかった
- ただ、後継者はおらず、仕込みも重くなってきた
- 建物の老朽化もあり、「元気なうちにやめよう」と決断
帳簿上は黒字、借金もほとんどなし。
それでも、「自分たちの世代で終わらせる」という選択をされました。
こうした「黒字廃業」は、数字の上では「マイナス」としてカウントされます。
しかし視点を変えると、
- 引き継げばまだ十分やっていける商売が、
- 後継者不在で静かに消えている
ということでもあります。
創業を考える側から見ると、ここには
「ゼロからつくる創業」と
「誰かの商売を引き継ぐ創業」
という、2種類のスタートラインがあるとも言えます。
補助金・支援策・採択事例から見える「行政が増やしたい起業」
地域課題解決型起業支援事業:応援される起業のカタチ
- 県内の地域課題の解決を目的として
- デジタル技術を活用して起業する人や、
- Society5.0関連分野で第二創業・事業承継を行う人
に対して、起業支援金の支給と伴走支援を行っています。
令和5年度の採択一覧を見ると、例えば次のような事業が選ばれています。
- 地元農産物を使ったパン屋のDXと特産品開発
- 農薬を極力使わない果樹生産と地域ブランドづくり
- 空き家を活用したチャレンジスペースの開設
- 非営利組織のガバナンス強化・事業承継支援
- ハス田の防鳥ネットと食害対策データベースサービス
キーワードを抜き出すと、
- 「地域資源 × 食・観光」
- 「農業 × 付加価値化」
- 「空き家 × コミュニティ」
- 「非営利 × 経営支援」
- 「農業 × 環境・デジタル」
といった組み合わせが目立ちます。
ここから分かるのは、行政が応援したいのは
「地域の困りごとを、自分なりの方法で解決しようとする起業」
だということです。
採択事例の裏側にある「ひとりの起業家」
実際に、地域課題解決型起業支援事業に採択されたあるパン屋さんのケースをイメージしてみます(内容は公表資料を踏まえたイメージです)。
- 元々は東京でパン職人をしていた30代の方
- 「地元の小麦や野菜を使ったパンを作りたい」と、茨城にUターン
- 空き店舗を活用しつつ、ECサイトやサブスクボックスなど、DXも取り入れて展開
- 補助金で、オンライン販売の仕組みや設備の一部を整備
単なる「パン屋さん」ではなく、
- 地元農家と連携し、地域の農産物の販路を広げ、
- DXで販路を広げつつ、観光や関係人口づくりにもつなげる
そんなストーリーがあるからこそ、「地域課題解決型」として評価されていると考えられます。
「街の商売」もちゃんと支援対象になっている
市町村レベルでは、創業支援補助金を設けている自治体も多く、飲食店・美容室・小売・建設関連サービスなど、日常生活を支える事業も数多く採択されています。
「補助金=ハイテク企業だけのもの」というイメージを持っている方もいますが、実際には、
- 地域の中で長く続いていきそうな小さなビジネス
- 地域の困りごとに向き合う事業
も、しっかりと支援対象になっています。
データを踏まえた「当たりやすいビジジネスモデル」4つの視点
ここからは、これまでの数字と事例を踏まえて、
「じゃあ自分のビジネスモデルをどう考えたら良いのか」という話です。
① 高開業×高廃業の業種で戦うなら、「差別化」と「固定費」が命
飲食・美容・小売・各種サービス業は、全国的に見ても開業率・廃業率ともに高い分野です。
この世界で生き残る前提として、最低限意識したいのは次の3つです。
- 差別化の軸がはっきりしているか
- 価格で勝つのか
- 品質・体験で勝つのか
- 立地・営業時間・専門特化でニッチを取るのか
- 固定費の重さをちゃんと把握しているか
- 家賃・人件費・設備投資が、売上見込みに対して無理のない水準か
- いきなり路面店ではなく、間借り・キッチンカー・シェアスペースなどから試せないか
- リピートの設計があるか
- 一見客頼みになっていないか
- 常連さん・ファンが増えやすい仕組み(会員制・サブスク・紹介など)があるか
「好きだからやる」こと自体はとても大事です。
ただ、「どうしたら続けられる形になるか」を一度冷静に分解しておくと、後悔はかなり減らせます。
② 「地域課題」と「補助金テーマ」に寄せる
茨城県や市町村の採択事例を眺めると、
- 地域資源(農産物・伝統産業・観光資源)
- 地域課題(高齢化・空き家・移動手段・子育て)
- 既存産業のDX・高付加価値化
といったキーワードと、起業テーマがきれいに重なっていることが分かります。
もし、あなたのやりたいことが、
- 地域の困りごとを少しでも軽くする要素を持っている
- 地元の資源を活かす形になっている
- 既存事業者の生産性向上や販路開拓に役立つ
のであれば、補助金や支援制度と相性が良い可能性が高いです。
逆に、どうしても地域課題と結びつかない場合は、
- 「補助金に頼らず、小さく速く始める」
- 「融資やクラウドファンディングなど、別の資金調達法を検討する」
といった割り切りも、十分ありだと思います。
③ 自分の経験・専門性とのフィットを見直す
小規模事業者の廃業率が高い背景には、資金だけでなく、
- 経営ノウハウ
- 人材・ネットワーク
- 業界の理解度
といった要素も関わっています。
だからこそ、
「何をやるか」だけでなく
「自分は何を積み上げてきたか」
を、セットで見直してみることが大切です。
例えば、
- 長年営業をしてきた人なら ⇒ 「営業代行」「販路開拓支援」「BtoB営業の研修」
- 製造業の現場改善をしてきた人なら ⇒ 「小さな工場の改善コンサル」
- 介護や福祉の経験がある人なら ⇒ 「家族向けの相談サービス」「高齢者向けの交流事業」
…というように、自分の過去と、これからのビジネスモデルをつなぐ発想が重要になります。
④ 「小さく試してから広げる」時間設計にしておく
もうひとつ大事なのが、「いきなりフルスイングしない」ことです。
- 創業当初は小さく試し、うまくいき始めたところで設備投資を増やす
- いきなり店舗を構えず、イベント出店やオンラインから始める
- 本業をすべて辞めず、一定期間は副業・兼業で様子を見る
最近の大きな補助金(事業再構築補助金や新事業進出補助金など)は、ある程度の規模がある既存企業向けの色合いが強く、創業直後にいきなり狙うには重いものも多いのが現実です。
「まずは小さく立ち上げ、数年後に大きなチャレンジを検討する」
そのくらいの時間感覚を持っておくと、資金繰りやメンタルの負担もかなり軽くなります。
今、茨城で創業するチャンスがある理由
ここまでデータを見てきて、「思ったより厳しいな」と感じた方も、「意外とやれそうかも」と感じた方もいると思います。
個人的には、今の茨城は「工夫しだいでかなり面白い」タイミングだと考えています。理由はざっくり3つです。
1. 黒字のまま辞める事業者が増えている
先ほど見たように、2024年の茨城県の休廃業・解散企業1,257件のうち、約6割が資産超過・黒字の状態で店を畳んでいます。
これは裏を返すと、
「本気で引き継ごうとする人がいれば、まだまだ回るビジネスが残っている」
ということでもあります。
ゼロから店を立ち上げるだけでなく、
- 既存事業の一部を引き継ぐ
- 空き店舗・空き工場・空き家を活用する
といった「事業承継型の創業」も選択肢に入ってきます。
2. 地域課題解決型の起業に、本気で予算がついている
地域課題解決型起業支援事業をはじめ、創業補助金・市町村の支援メニューなど、「地域の困りごとをビジネスで解決する」起業に対して、予算と伴走支援がつき始めています。
昔に比べると、
- 「やる気とアイデアはあるけれど、お金が足りない」
- 「事業計画の作り方が分からない」
という人が、一歩を踏み出しやすい環境になってきたと言えます。
3. つくばエクスプレス沿線など、一部エリアでは人口も増えている
茨城全体で見ると人口減少の流れにありますが、その中でも、つくば市をはじめとする一部エリアでは、人口増加が続いています。
- つくば市の人口増加率は、近年、全国の市区部の中でも上位に入り、令和5年時点で全国1位となった年もあります。
「県全体としては縮小圧力があるなかで、一部のエリアには新しい需要が生まれている」
このアンバランスさは、ビジネスの種でもあります。
チェックリスト:茨城で創業する前に、これだけは整理しておきたいこと
最後に、ここまでの内容を踏まえたチェックリストを置いておきます。
全部にYESがつかなくても大丈夫です。NOがついたところが、これから考えるポイントになります。
- 自分のやりたいことが、どの業種・産業分類に当たるか言葉にできている
- 業種が分かると、開業率・廃業率などのデータが探しやすくなります。
- 茨城全体や自分の市町村の「開業・廃業・休廃業」の状況を、一度は眺めたことがある
- 「増えているのか、減っているのか」「高齢化の影響が出ているのか」をざっくりでも把握できていると、長期戦略が立てやすくなります。
- 地域課題解決型起業支援・市町村の創業補助金の採択事例を確認した
- 自分のアイデアと似た事例があるか、あれば「どこが評価されたのか」を読み取るヒントになります。
- 自分の経験・資格・人脈のうち、「他の人には真似しづらい強み」を言語化できている
- その強みをビジネスモデルにどう埋め込むかを考えることで、単純な価格競争に巻き込まれにくくなります。
- 「小さく試すフェーズ」と「うまくいったら広げるフェーズ」を分けて考えている
- いきなりフル装備で始めるのではなく、「実験 → 検証 → 拡張」の段階を意識できているかどうかで、資金的・精神的な負担が大きく変わります。
行政書士・中小企業診断士として、あなたの一歩を伴走します
ここまで読んで、
- 自分のアイデアが「データ的に見てどうなのか」確認したい
- 補助金に挑戦してみたいけれど、事業計画書の書き方が分からない
- 許認可や開業手続きも含めて、まとめて相談できる相手がほしい
と感じられた方もいらっしゃると思います。
行政書士・中小企業診断士として、例えば次のようなお手伝いができます。
- 事業アイデアの整理(誰に・何を・どのように・いくらで)
- 茨城県や市町村の統計・白書を踏まえた「現実的な数字感」の確認
- 創業補助金・地域課題解決型起業支援・その他支援制度との相性チェック
- 必要に応じた、事業計画書・補助金申請書・許認可申請書類の作成サポート
「やってみたい」という気持ちを、データと制度でしっかり裏打ちして、
一緒に“当たるビジネスモデル”を組み立てていきませんか。

