経管の証明書類が残っていない!? 建設業許可で“経験を証明できない”ときの対処法
建設業許可の申請では、今も「経営経験をどう証明するか」が最も多い相談の一つです。
「昔の契約書を処分してしまった」「親の代の書類が残っていない」——そんな声は珍しくありません。
令和2年改正建設業法により、従来の「経営業務の管理責任者(経管)」制度は廃止され、現在は「常勤役員等(旧経管)」を中心とする経営体制要件へと移行しました。
しかし、経験や実績を証明するための考え方は今も変わっていません。
本稿では、茨城県が令和6年12月に公表した最新の「建設業許可の審査等における留意事項」に基づき、
常勤役員等(経営業務管理責任者等)の経験を証明する際に書類が残っていない場合、どのように立証できるかを解説します。
(※都道府県によって運用や様式が異なる場合があるため、他県で申請する際は各自治体の手引をご確認ください。)
第1章 常勤役員等とは?令和以降の要件を整理
現在の建設業許可制度では、経営業務管理責任者という単独資格は廃止され、「常勤役員等」が経営経験を備えた者として位置づけられています(建設業法施行規則第7条第1号)。
要件は次のいずれかで満たします。
- ① 常勤役員等のうち1名が、当該建設業に関し5年以上の経営経験を有すること
- ② 常勤役員等1名と、その者を直接補佐する者(財務・労務・業務運営の各分野で5年以上の経験)で体制を組むこと
この2つを一般に「Ⅰ体制」「Ⅱ体制」と呼びます。
制度は柔軟化しましたが、依然として常勤役員等の経営経験(または補佐経験)をどう証明するかが審査の核心です。
第2章 証明書類が残っていない場合の扱い
※本章は、茨城県が令和6年12月に改訂した「建設業許可の審査等における留意事項(最新版)」に基づいています。
都道府県によって様式や運用が一部異なるため、他県で申請する際は必ず各自治体の手引・要領をご確認ください。
茨城県の留意事項では、常勤役員等の経営経験を示す書類の扱いが明確に整理されています。
■ 原則:契約関係書類で確認
経営経験の有無は、原則として以下の書類により確認します。
- 請負契約書
- 注文書
- 連続する2期以上の許可通知書(個人事業としての許可実績がある場合)
これらが確認できれば、経営業務に従事していた事実を裏付けるものとして取り扱われます。
■ 例外:やむを得ない場合は「発注者証明書(別紙様式第2号)」を提出
契約書や注文書が残っていない、または署名・押印のない契約書など形式的要件を欠く場合は、「発注者証明書(別紙様式第2号)」の提出が必須です。
これは、元請・下請・取引先など「工事を発注した側」が実際に工事を発注したことを証明する書面であり、代替の主要証明書類として扱われます。
主な注意点は以下のとおりです。
- 証明者欄には必ず電話番号を記載し、行政が電話で事実確認を行うことがあります。
- 2者以上からの証明取得が望ましいとされています。
- 発注者法人が解散している場合は、元代表取締役個人の実印押印で代替可。
- 電子契約やメール送付のみで署名・押印がない契約書も、原則として発注者証明を添付し、必要に応じて電話照会を受けます。
- 外国企業との契約で署名のみの場合も、「原則確認資料として認める」ものの、相手先への連絡で確認が行われることがあります。
- 押印省略は不可(※発注者証明は第三者による事実証明という性質上、押印が極めて厳格に求められる例外的な様式です。証明者欄には必ず電話番号を記載し、押印(または記名)とともに、行政による電話照会が行われることがあります。)。
このように、発注者証明書は「契約書・注文書がない場合の代替主証明」であり、建設業許可の審査上、最も重視される書類のひとつです。
第3章 補強資料の使い方:主要書類を“支える証拠”をどう整えるか
経営経験の立証で中心となるのは、請負契約書・注文書・発注者証明書です。
これらで発注の事実や経営関与が明確に示せる場合は、それで足ります。
しかし、古い書類が一部欠けていたり、押印・日付・金額の不備がある場合には、内容の信頼性を補う目的で「補強資料」を提出することができます。
補強資料は主要書類の代替ではなく、内容の裏付けを補う任意の添付資料です。
1. 請求書・領収書・通帳の写し
金銭の授受を確認できる資料で、取引の実態を補う役割を持ちます。
請求書や領収書、通帳の振込記録などに、発注者名・金額・日付が明記されていれば、建設業としての取引が行われていたことを説明できます。
ただし、これらはあくまで補強資料であり、発注の事実そのものを証明するものではありません。
見積書や請求書のみで押印や署名がない場合は、原則として確認資料としては認められず、発注者証明書(別紙様式第2号)を併用します。
2. 作業日報・工事写真・現場看板
工事の実施状況を示す現場記録です。
特に相当に古い工事や、発注証明書の記載内容を補う場合に、「記載事項の根拠資料」として求められることがあります。
日報や写真には、工期・現場名・発注者名などが分かる形で残っていると望ましいとされています。
単独では決定的な証拠にはなりませんが、発注者証明書や請求書と組み合わせることで、施工実績の信頼性を高めることができます。
3. 経営補佐経験調書(別紙様式第1号)
この調書は、個人事業主の事業承継において、被承継者や配偶者が死亡等で証明困難な場合に用いられるものです。
被承継者の元請・下請業者が証明者となる際に、常勤役員等(経営業務管理責任者等)証明書を補完する資料として提出します。
被承継者の経営を補佐していた実態を明文化するものであり、証明者による署名・押印を要します。
まとめ
補強資料は、主要書類の内容を補うための裏付けです。
書類の組み合わせは、申請者の経歴や立証の難易度によって変わります。
主要書類が整っていれば補強資料は不要ですが、古い記録や形式不備がある場合には、これらを活用することで審査の信頼性を高めることができます。
第4章 個人事業主の事業承継で証明が難しい場合の対応
個人事業主が亡くなった場合や高齢で証明が取れない場合、承継人(相続人や後継者)が経験を証明できず、建設業許可の承継が難しくなることがあります。
このようなケースでは、第3章で触れた経営補佐経験調書(別紙様式第1号)が有効です。
被承継者と共に経営補佐をしていた期間・内容を、元請や下請業者など第三者が証明することで、常勤役員等の経営経験を裏付けることができます。
事業承継では「資料が足りない=不可」ではなく、補佐経験を整理して裏付けを立てる工夫が求められます。
第5章 まとめ:経験は“記録”して初めて証明になる
どれほど豊富な経験があっても、書類がなければ行政上「存在しない」と見なされます。
ただし、主要書類(契約書・注文書・発注者証明)と補強資料を組み合わせることで、実態を説明することは可能です。
書類が足りない=申請できないではなく、どう整えるかがポイントです。
私も行政書士として、不足資料の補完や立証方針の整理を多くサポートしています。
経験を「書類として見える化」することが、許可取得への第一歩です。
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