<創業・スタートアップ経営基礎講座>第8回「起業関連のさまざまな支援策」
1. はじめに
起業を志すとき、多くの方が直面するのは「資金」「人脈」「情報」の不足です。
こうしたハードルを乗り越えるために、国や自治体ではさまざまな支援策を用意しています。たとえば、融資や補助金といった金銭的な支えだけでなく、専門家による相談窓口や、コワーキングスペースなどの拠点整備まで幅広く揃っています。
これらの制度を知り、うまく組み合わせて活用できれば、事業の立ち上がりを大きく加速させることができます。逆に「制度の存在を知らなかった」「申請時期を逃した」という理由で利用できないケースも少なくありません。
そこで本記事では、全国共通で利用できる代表的な創業支援策を整理したうえで、あわせて茨城県や水戸市の独自制度についても紹介します。地域で起業を考える方にとって、実際に役立つ情報をまとめました。
※本記事は公開時点の情報に基づいています。制度の内容は変更されることがありますので、必ず最新情報を公式サイトでご確認ください。
本記事は 中小企業診断士兼行政書士が解説する『やりたい!をカタチにする 創業・スタートアップ経営基礎講座』 の第8回です。
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2. 全国共通の公的支援策
起業直後の方にとって、まず頼りになるのが国や自治体が用意している公的な支援制度です。代表的なものを3つご紹介します。
(1) 特定創業支援等事業
- 自治体や商工会議所などが実施する「創業塾」や「セミナー」に参加すると、創業に必要な知識を体系的に学べます。
- 修了すると、会社設立時の登録免許税が軽減されたり、日本政策金融公庫などでの融資が有利になる場合があります。
- 各自治体によって開催時期や対象が異なるため、地域ごとの確認が必要です。
(2) 日本政策金融公庫「新創業融資制度」
- 創業者向けに、無担保・無保証人で最大3,000万円程度まで借りられる制度です。
- 起業準備資金、運転資金、設備投資資金など幅広く利用できます。
- 融資を受けるには、事業計画書をしっかりと作成することがポイントです。
(3) 信用保証協会「創業関連保証」
- 創業時に民間の金融機関から融資を受けたい場合、信用保証協会が保証人の役割を担う制度です。
- 保証料の軽減措置や、創業特例枠が設けられているケースもあります。
- 金融機関・保証協会・創業者の三者で相談しながら進める形になります。
3. 全国共通の補助金・助成金
融資と並んで、創業者にとって心強いのが「補助金・助成金」です。まず返済の必要がなく、自己資金を補う形で使えるのが大きなメリットです。ただし、申請書類の作成や審査があるため、計画性と準備が求められます。代表的なものを紹介します。
(1) 小規模事業者持続化補助金
- 全国の商工会議所・商工会が窓口となる補助金。
- 販路開拓や広告宣伝、ホームページ制作費、展示会出展費用などに使えます。
- 補助率は原則2/3以内、補助上限は50万円〜200万円(特定の枠ではさらに上限拡大あり)。
- 創業まもない小規模事業者でも申請しやすいのが特徴です。
(2) ものづくり補助金
- 新しい設備導入やサービス開発など「生産性向上の取組み」を支援する補助金。
- 補助上限額は数百万円〜1,000万円超、補助率は1/2〜2/3程度。
- 創業直後よりは、事業を拡大していきたい段階で活用しやすい制度です。
(3) 事業再構築補助金
- 新分野への進出や大胆な事業転換を支援する大型補助金。
- 補助上限は数千万円規模と大きい一方、採択審査が厳しく、申請準備にも時間がかかります。
- 成長段階のスタートアップや、中小企業の新規展開を後押しする性格が強い制度です。
4. 支援策比較表(全国版・要点整理)
| 区分 | 制度名 | 主な対象 | 使い道 | 金額/補助率 | 返済義務 | 審査・難易度 | スピード感 | 窓口/関係機関 | ひと言ポイント |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 公的講座 | 特定創業支援等事業 | 起業予定者~創業5年未満 | 創業塾・セミナー受講 | ― | なし | 低 | 中 | 自治体・商工会/商工会議所 | 免許税軽減や融資優遇の“パスポート”に |
| 融資 | 新創業融資制度(日本政策金融公庫) | 新規創業者 | 運転・設備 | 上限3,000万円程度 | あり | 中(計画重視) | 中 | 日本政策金融公庫 | 無担保・無保証人可。計画書がカギ |
| 融資+保証 | 創業関連保証(信用保証協会) | 創業者・中小企業 | 金融機関からの借入 | 金融機関条件次第 | あり | 中 | 中 | 金融機関+信用保証協会 | 保証で借入ハードルを下げる |
| 補助金 | 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | 販路開拓・広告・HP等 | 上限50~200万円/補助率2/3 | なし | 中(書類審査) | 低~中 | 商工会議所・商工会 | 初めての補助金に向く定番 |
| 補助金 | ものづくり補助金 | 中小企業等 | 設備導入・開発 | 数百万円~1,000万円超/1/2~2/3 | なし | 中~高 | 低~中 | 事務局(公募要領参照) | 生産性向上の投資向け |
| 補助金 | 事業再構築補助金 | 中小企業等 | 新分野展開・事業転換 | 数千万円規模/最大2/3 | なし | 高 | 低 | 事務局(公募要領参照) | 大型だが要件・準備が重い |
5. 自治体独自の創業支援(茨城県・水戸市)
茨城県の主な制度
- 地域課題解決型起業支援事業(起業支援金)
県内の地域課題解決に資する起業・第二創業を補助。人件費・設備費・広報費等が対象。年度ごとに公募。 - 創業支援融資(茨城県制度融資)
県・金融機関・信用保証協会が連携する創業向け制度融資。保証料軽減や金利優遇が設定される場合あり。
水戸市の主な制度
- 水戸市 創業期支援補助金
市内で創業する事業者の販促・備品等を補助。創業後5年未満は通算3回まで申請可能。 - 特定創業支援等事業(創業塾・証明書発行)
受講修了で登録免許税軽減・融資優遇の対象。開催時期や証明書発行は市公式サイトを確認。 - 中心市街地出店支援(空き店舗対策・開設促進補助など)
中心市街地での店舗・事務所開設を補助。年度や予算により内容が変動。
6. インキュベーション施設・コワーキングスペース
起業したばかりの方にとって、「オフィスをどう確保するか」は悩みどころです。自宅やカフェで仕事を始める方もいますが、仕事専用の場所があることで信用力が増し、人脈づくりや情報収集の機会も得やすくなります。
そこで活用できるのが インキュベーション施設 と コワーキングスペース です。
- インキュベーション施設は、創業者向けに低廉な賃料で事務所を提供し、あわせて専門家の相談や経営支援プログラムを備えている拠点を指します。
- コワーキングスペースは、起業家やフリーランスがデスクや会議室をシェアする形態のオフィスで、月額制やドロップインで気軽に利用できるのが特徴です。
いずれも「単なる場所貸し」ではなく、交流や相談の場を通じて起業を後押しする仕組みが整っている点に価値があります。
全国例
- WeWork
世界各地に展開する大型コワーキング。法人利用にも対応。 - Startup Hub Tokyo
東京都運営の創業支援拠点。相談、イベント、ネットワーキングが充実。
茨城県内(主に水戸周辺)
- コワーキングスペース水戸ワグテイル(管理運営:一般財団法人 水戸市商業・駐車場公社)
コワーキング・創業相談・イベントを提供。公共系の創業支援機能を持つ。 - BIZcomfort 水戸
水戸駅直結。登記・会議室・ポストオプションありのコワーキング&レンタルオフィス。 - M-WORK(いいオフィス水戸 by M-WORK)
中心市街地のコワーキング/シェアオフィス。イベントや起業支援も展開。 - シェアオフィス SSS
会議室・セミナールーム併設。固定席・バーチャルオフィスなどプランが多様。 - つくばスタートアップパーク(つくば市)
入居・相談・イベントを一体で提供する地域拠点。
7. 起業家コミュニティ・専門家相談
制度や資金をうまく活用するためには、情報のアンテナを張り続けることが大切です。そのためには、起業家同士の交流や専門家への相談を積極的に取り入れることをおすすめします。
(1) 起業家コミュニティ
- 商工会議所・商工会
創業者向けの講座や相談窓口を設けており、補助金申請や経営計画作成のサポートも受けられます。 - よろず支援拠点(中小企業庁の無料相談窓口)
経営・資金・販路開拓など幅広いテーマに対応できる専門家が常駐。何度でも無料で相談可能です。 - 起業家ネットワーク・勉強会
各地域でイベントや勉強会が開催され、他の創業者と交流することで新しい気づきを得られます。
(2) 専門家との連携
- 行政書士
法人設立や許認可の手続きに強みがあり、事業開始時の法務的なサポートを受けられます。 - 中小企業診断士
経営計画や資金繰り、補助金申請の相談に適しています。 - 税理士・社会保険労務士
会計や労務管理といった日常的な経営基盤を支える専門家です。
起業初期は孤独になりがちですが、相談できる相手がいることで視野が広がり、課題解決のスピードも早まります。制度や補助金を探すのと同じくらい、信頼できる人とのつながりを持つことが重要です。
8. 実務で押さえておきたいポイント
起業関連の支援策は魅力的ですが、実際に利用する際には次の点に注意が必要です。
- 申請期限と対象条件を必ず確認する
補助金や助成金は公募期間が決まっており、年度ごとに条件が変わることもあります。そのため、締切を逃さないよう、スケジュールを早めに組み立てることが重要です。 - 複数の支援策を組み合わせて活用する
一つの制度に頼るのではなく、融資・補助金・施設利用を組み合わせることで、資金面と環境面の両方を安定させることができます。 - 「支援を受けること」が目的化しないようにする
補助金や助成金はあくまで事業を進めるための手段です。まず事業計画を軸に据えて、必要な支援だけを選択することが大切です。 - 申請には手間と専門知識がかかることを前提にする
申請書類の作成には時間がかかり、専門的な用語も多く出てきます。まずは必要に応じて専門家のサポートを受けることで、スムーズに進めやすくなります。
9. まとめ
起業関連の支援策は、全国共通で利用できるものから、自治体独自のものまで多岐にわたります。
- 全国的には「特定創業支援等事業」「日本政策金融公庫の新創業融資」「小規模事業者持続化補助金」などが代表的です。
- 茨城県・水戸市においても「起業支援金」「創業支援融資」「創業期支援補助金」といった制度が整備されています。
- さらに、水戸ワグテイルや夢ぷらざ、BIZcomfort水戸といった施設を活用することで、場所や人脈の面からもサポートを得られます。
制度や施設はあくまで「事業を前に進めるための道具」です。そこで、大切なのは、自分の事業計画に合ったものを選び、無理なく活用していくことです。
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| 第4回 法務・契約の基礎 | 契約トラブルを防ぐための基本知識と、押さえておくべき契約書のポイントを紹介します。 |
| 第5回 経営戦略・計画を作る | SWOT分析などを使いながら、事業の方向性を定めるための戦略づくりを学びます。 |
| 第6回 マーケティング・市場戦略を考える | 顧客ニーズをどう捉え、競合とどう差別化するか。マーケティングの基本を解説します。 |
| 第7回 広報・PR | SNS・ホームページ・プレスリリースなど、発信を通じてファンを増やす方法を紹介します。 |
| 第8回 起業関連のさまざまな支援策 | 補助金・助成金・融資制度など、創業時に使える支援策をわかりやすくまとめます。 |
| 第9回 はじめての会計 | 会計の基本構造を理解し、経営判断に役立つ数字の見方を身につけます。 |
| 第10回 価格転嫁の基礎 | 適正な利益を守るための価格設定と、取引先との交渉の考え方を解説します。 |
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