中小建設業が経審Y点を効率的に上げる方法

目次

はじめに

経営事項審査(経審)のY点は、会社の財務の健康状態を数値化したものです。入札参加を目指す建設業者にとって、この点数は避けて通れません。
しかし、数字や会計に苦手意識を持つ経営者も多く、「どうやってY点を上げたらいいのか分からない」という声をよく聞きます。

ここで重要なのは、やみくもに全ての指標を改善しようとしないことです。なぜなら、Y点を構成する8つの指標のうち、上位4つが全体の約77%を占めるからです。
つまり、影響度の高い指標だけを重点的に改善すれば、限られた時間と労力でも大幅な点数アップが可能になるのです。

さらに、この4つの指標を改善することは、単に経審のためだけでなく、会社の資金繰りや長期的な経営安定にも直結します。そこで今回は、純支払利息比率・総資本売上総利益率・自己資本比率・負債回転期間の4つに集中し、数字が苦手な方でも理解できる実務的な改善策を詳しく解説します。


経審Y点と8つの指標の全体像

まずは全体像を知ることから始めましょう。Y点は以下の8指標で構成されます。

  1. 純支払利息比率(利息負担の割合)
  2. 負債回転期間(負債が売上の何か月分にあたるか)
  3. 総資本売上総利益率(資産を使って稼いだ粗利の効率)
  4. 売上高経常利益率(売上に占める経常利益の割合)
  5. 自己資本対固定資産比率(固定資産を自己資本でどれだけ賄っているか)
  6. 自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)
  7. 営業キャッシュフロー(事業で生み出した現金の額)
  8. 利益剰余金(過去の利益の蓄積)

しかし、全ての影響度は同じではありません。寄与度の高い順に並べると、

  • 純支払利息比率:約29.9%
  • 総資本売上総利益率:約21.4%
  • 自己資本比率:約14.6%
  • 負債回転期間:約11.4%
    この4つで全体の77.3%を占めます。残りの4指標は合計でも22.7%です。

つまり、まずは上位4つに集中することが最も効率的なのです。


1. 純支払利息比率の改善方法

指標の意味

純支払利息比率は、売上に対する利息支払いの割合です。金利が高かったり借入残高が多いと、この数字は悪化します。つまり、「借入金のコスト負担度合い」を示す指標です。

改善の方向性

  • 支払利息そのものを減らす
  • 売上や粗利を増やして利息負担の割合を下げる

短期(〜3か月)でできること

まず、金利引き下げ交渉を行いましょう。なぜなら、金融機関は他行の条件を意識しており、競争環境次第で金利を見直す余地があるからです。他行の金利条件を調べ、比較表を作成し、交渉材料として提示します。

さらに、高金利ローンの返済・借換えも即効性があります。たとえば、年利8%のカードローンを年利2%の銀行融資に借り換えるだけで、年間の利息負担は大幅に減ります。

また、余剰資金の一部返済も有効です。ただし、運転資金に必要な額は必ず残すことが重要です。

中期(〜1年)でできること

借入金の用途別管理を徹底します。設備投資は長期、運転資金は短期と分けることで、金利と返済計画のバランスを最適化できます。さらに、与信管理を強化し、請求・回収を早めて借入依存度を下げます。

長期(1年以上)でできること

粗利を増やし、同じ利息額でも比率を下げる「体質改善」です。結果として、財務面の健全性が高まり、金融機関との取引条件も改善されやすくなります。


2. 総資本売上総利益率の改善方法

指標の意味

総資本売上総利益率は、会社の全資産を使ってどれだけ効率的に粗利を稼いでいるかを示します。つまり、「資産の稼ぐ力」を表す数字です。

改善の方向性

  • 粗利額を増やす
  • 不要な資産を減らす

短期(〜3か月)でできること

最低利益率ルールの設定が有効です。たとえば、「粗利率15%未満の案件は受注しない」と決めるだけで、赤字案件を避けられます。
また、追加工事や変更工事の即日請求も重要です。後回しにすると回収漏れや遅延の原因になるためです。さらに、未請求案件の棚卸しも効果的です。追加や変更分が未請求になっていないか、すべて確認しましょう。

中期(〜1年)でできること

案件別の損益を見える化します。つまり、どの案件が利益を生み、どの案件が損失を出しているかを把握するのです。これにより、受注判断が精度高く行えます。

遊休資産を売却したり、リース化することで総資本を減らすことも効果的です。

長期(1年以上)でできること

元請比率を引き上げ、粗利率を改善します。また、高付加価値工事へのシフトによって、資産効率をさらに高められます。


3. 自己資本比率の改善方法

指標の意味

自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合です。高いほど返済不要の資本が多く、経営の安定度が高まります。

改善の方向性

  • 自己資本を増やす
  • 不要な資産を減らす

短期(〜3か月)でできること

役員借入金の資本化を検討します。これにより自己資本が増加します。また、利益をできるだけ会社に残す方針を明確化します。

中期(〜1年)でできること

赤字案件の受注抑制、不採算部門の縮小、不要資産の売却による総資産圧縮を行います。

長期(1年以上)でできること

増資や劣後ローンなどを活用して資本を強化します。結果として、金融機関からの信用が高まり、融資条件が有利になります。


4. 負債回転期間の改善方法

指標の意味

負債回転期間は、負債が売上の何か月分にあたるかを示します。短いほど健全で、資金繰りも安定します。

改善の方向性

  • 負債を減らす
  • 売上や回収を早める

短期(〜3か月)でできること

着手金や出来高請求の徹底により、資金流入を早めます。また、高利短期債務を長期低利に借り換えて負担を軽減します。

中期(〜1年)でできること

遊休資産を売却し、その資金で負債を返済します。さらに、長工期案件ではマイルストーン請求を導入し、途中で資金回収できる体制を整えます。

長期(1年以上)でできること

ストック型ビジネス(定期保全・修繕契約など)を導入し、売上を安定化させます。


即効性のある「仕訳ルール改善」によるY点対策

実は、資金繰りや利益額を変えなくても、決算書の勘定科目区分を見直すだけでY点が改善するケースがあります。これは経営状況分析機関が指標計算の際に科目ごとの数字を使うためです。決算書を作る前に顧問税理士に下記の点が考慮されているか確認してみましょう。

代表的な改善例

  1. 支払利息割引料の分解
    • 支払利息と手形割引料が「支払利息割引料」として混在している場合、手形割引料部分を「手形売却損」など別科目に移す。
    • これにより支払利息額が減り、純支払利息比率が改善します。
  2. 受取利息配当金の適正区分
    • 受取利息・受取配当金が雑収入に混ざっている場合、正しい科目に移す。
    • 経審ではこれらが支払利息と相殺されるため、純支払利息が減少します。
  3. 保証料や融資手数料の整理
    • 保証協会付き融資の保証料は支払利息に含めない。
    • 融資手数料も同様に、利息と別に処理することで数値が適正化します。
  4. 決算整理仕訳の工夫
    • 受取配当金は発生時点で適正科目に計上し、期末一括計上を避ける。
    • 金利負担要素は利息と手数料に正しく振り分ける。

ポイント:こうした仕訳整理は、資金繰りや実際の経営には影響を与えず、短期間でY点を改善できる「見え方」の戦略です。

90日で実行する即効策チェックリスト

これまでのおさらいとなりますが、下記の項目はY点全体を短期的に向上させる対策です。

  1. 銀行に金利引下げ交渉を申し込む
  2. 未請求案件を全て請求する
  3. 見積テンプレを更新し、最低利益率を設定する
  4. 遊休資産の売却計画を立てる
  5. 案件別損益の簡易集計を開始する

NG対策例とその理由

下記の対策は経審上は一見効果はあるものの、逆効果になってしまう可能性があるものです。

1. 決算日前だけの一時返済による見かけの改善

決算日直前に借入金を一時的に返済し、負債を減らして指標を良く見せる方法です。確かに、自己資本比率負債回転期間が一時的に改善する可能性があります。

しかし、この手法はあくまで「帳簿上の一瞬の改善」にすぎません。翌期に再び借り入れれば元の数値に戻るため、実質的な財務改善にはなりません。さらに、金融機関からは「見せかけの決算対策」として信用低下につながるリスクもあります。

なぜNGか

  • 数値改善が一時的で、根本的解決にならない
  • 金融機関に不信感を与える可能性がある
  • 短期間での資金移動による手数料・利息負担が増える

2. 無理な在庫削減で現場遅延を招く

材料や部品の在庫を一気に減らせば、総資産が減って自己資本比率が上がる可能性があります。ですが、現場で必要な資材が不足すれば工期が遅れ、違約金や追加コストが発生する恐れがあります。

特に建設業では、現場の段取りと資材の供給は密接に連動しています。適正在庫を下回る削減は、工程全体のリスクを高めます。

なぜNGか

  • 工期遅延による違約金・追加費用の発生
  • 現場の稼働率低下で売上が減少
  • 短期的な財務改善よりも長期的損失が大きくなる可能性

3. 支払サイトを不自然に延長する

仕入先への支払いを意図的に遅らせれば、負債回転期間の改善や資金繰りの一時的好転は期待できます。しかし、支払条件を守らないことは取引先の信頼を損ない、場合によっては取引停止や仕入価格の引き上げを招きます。

また、支払いの遅延は債務不履行と見なされることもあり、法的リスクも伴います。特に地域密着型の建設業においては、仕入先との関係悪化は経営基盤そのものを揺るがす危険性があります。

なぜNGか

  • 地域での評判低下が受注機会を減らす
  • 仕入先との信頼関係を失い、取引条件が悪化
  • 法的トラブルや契約解除のリスク

まとめ

経審Y点を効率的に上げるには、上位4指標に集中するのが近道です。つまり、純支払利息比率・総資本売上総利益率・自己資本比率・負債回転期間の改善だけで、全体の77%を押さえられます。さらに、これらの改善は会社の経営基盤を強化し、長期的な安定にもつながります。

まずは90日で実行可能な即効策から着手し、その後中長期的な改善に移行しましょう。結果として、Y点の向上だけでなく、資金繰りや信用力の改善にもつながるはずです。

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