建設業がISO認証を取得するメリット – 初心者向け完全ガイド

建設業界では近年、ISO認証の取得を検討する企業が増えています。しかし、認証制度について詳しくない方にとっては「そもそもISOって何?」といった疑問を持つことも多いでしょう。この記事では、建設業におけるISO認証取得について分かりやすく解説します。

目次

認証制度とは

認証制度とは、企業や組織が特定の基準や規格を満たしていることを、第三者機関が客観的に証明する仕組みです。とくに、建設業界でよく知られているのは、ISO(国際標準化機構)が定めた国際規格による認証です。

簡単に言えば、「うちの会社はこの分野でしっかりとした管理システムを構築しています」ということを、外部の専門機関がお墨付きを与えてくれる制度です。これにより、取引先や官公庁から信頼を得やすくなります。

ISO9001とは

ISO9001は「品質マネジメントシステム」に関する国際規格です。つまり、製品やサービスの品質を継続的に向上させるための仕組みづくりに関する基準です。

建設業では、工事の品質管理、顧客満足度の向上、継続的な改善活動などが評価の対象となります。具体的には、工事手順の標準化、品質記録の管理、不具合発生時の対応プロセスなどが求められます。

品質管理というと難しく聞こえますが、要は「いい仕事を継続的に提供するための仕組みを作り、それを実際に運用していますよ」ということを証明する認証です。

ISO14001とは

次に、ISO14001は「環境マネジメントシステム」に関する国際規格です。つまり、企業活動が環境に与える影響を最小限に抑え、環境保護に積極的に取り組むための仕組みづくりに関する基準を定めています。

建設業では、廃棄物の適切な処理、騒音対策、CO2削減への取り組み、資源の有効活用などが評価されます。近年、環境への配慮がますます重要視されています。そこで、この認証を取得することで環境に配慮した企業としてのアピールができます。

エコアクション21とは

エコアクション21は、環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムです。ISO14001と同様に環境への取り組みを評価する制度ですが、中小企業でも取り組みやすいように簡素化されているのが特徴です。

ISO14001に比べて取得費用が安く、要求事項も分かりやすく整理されています。そのため、初めて環境認証を取得する企業にとっては取り組みやすい選択肢といえます。ただし、国際的な認知度はISO14001に劣ります。

経審での加点について

また、経営事項審査(経審)において、これらの認証は技術力(W点)で加点評価されます。

W点での加点

  • ISO9001、ISO14001:各5点
  • エコアクション21:3点

主観点での効果 一部の自治体では経審の主観点(技術提案や企業の信頼性を評価する部分)においても、これらの認証は間接的にプラス評価につながる可能性があります。発注者によっては、ISO認証取得企業を優遇する傾向があり、入札参加資格や総合評価での加点要素として考慮されることもあります。

認証取得の方法

また、ISO認証の取得は専門的な知識が必要なため、コンサルタントの支援を受けることをお勧めします。

一般的な取得プロセス

  1. 現状分析とギャップ分析:現在の管理体制と認証要求事項との差を明確化
  2. マネジメントシステムの構築:規程類の整備、責任者の任命、体制づくり
  3. 内部監査の実施:システムが適切に運用されているかチェック
  4. 認証機関による審査:書類審査と現地審査を経て認証取得
  5. 継続的な維持・改善:年次サーベイランス審査と3年ごとの更新審査

コンサルタント費用は規模にもよりますが、ISO9001で約80万円〜150万円、ISO14001で約100万円〜180万円程度が目安となります。また、認証取得までの期間は通常6か月〜1年程度です。

日々の業務でやるべきこと

ISO9001(品質マネジメント)

  • 品質記録の作成・保管:工事ごとの品質チェックリスト、検査記録の適切な管理
  • 是正・予防措置:問題が発生した際の原因分析と再発防止策の実施
  • 内部監査:定期的な内部チェックと改善活動
  • マネジメントレビュー:経営陣による定期的なシステム見直し
  • 教育・訓練:従業員への品質意識向上のための教育実施

ISO14001(環境マネジメント)

  • 環境目標の設定・管理:CO2削減、廃棄物削減などの具体的目標設定と実績管理
  • 環境法規制の遵守:関連法令の把握と遵守状況のチェック
  • 環境影響評価:工事が環境に与える影響の事前評価と対策実施
  • 廃棄物管理:建設廃棄物の分別、適切な処理業者への委託
  • 環境教育:従業員への環境意識向上のための教育実施

これらの活動は日常業務に組み込む必要があり、全社員の協力が不可欠です。

コストパフォーマンス

ISO認証の取得・維持には相応の費用がかかります。単純に経審での点数アップだけを目的とする場合、他にもより低コストで効率的な施策があることを認識しておく必要があります。

例えば、技術職員の資格取得支援や若年技術者の雇用、建設機械の保有などの方が、投資対効果の面では優れている場合があります。

ISO認証をお勧めするケース

  • 他の経審対策をすでに実施済みで、さらなる評価向上を目指したい
  • ISO本来の目的である品質向上や環境配慮に真剣に取り組みたい
  • 大手企業や官公庁からの受注拡大を狙っている
  • 会社のブランド価値向上を重視している

メリット

  1. 経審での加点効果 W点で最大10点の加点により、総合評定値の向上が期待できます。
  2. 受注機会の拡大 ISO認証を入札参加資格の条件とする発注者も増えており、受注機会の拡大につながります。
  3. 企業の信頼性向上 第三者機関による客観的な評価により、社会的信頼度が向上します。
  4. 業務の標準化・効率化 管理システムの構築により、業務プロセスの標準化と効率化が図れます。
  5. 従業員の意識向上 品質や環境に対する従業員の意識が向上し、会社全体のレベルアップが期待できます。
  6. リスク管理の強化 体系的な管理システムにより、品質事故や環境問題などのリスクを低減できます。

デメリット

  1. 取得・維持費用の負担 初期投資として100万円以上、年間維持費として30万円程度の費用がかかります。
  2. 事務作業の増加 記録作成、内部監査、文書管理などの事務作業が増加します。
  3. 全社的な取り組みが必要 経営陣から現場作業員まで、全社員の理解と協力が不可欠です。
  4. 継続的な改善活動 認証取得後も継続的な改善活動と定期的な審査対応が必要です。
  5. 形式的な運用のリスク 認証維持だけを目的とした形式的な運用に陥る可能性があります。

まとめ

ISO認証は建設業にとって有効な経営ツールの一つですが、その取得には相応の投資と継続的な努力が必要です。単純な経審対策として考えるのではなく、会社の本質的な品質向上や環境配慮への取り組みと位置づけることが重要です。

そして、認証を検討する際は、自社の経営戦略や現在の経審対策の進捗状況を踏まえ、費用対効果を十分に検討することをお勧めします。また、取得後の維持・改善活動を継続できる体制づくりも同時に考えておくことが成功の鍵となります。

ISO認証は「取得することが目的」ではなく、「活用することで会社を良くする手段」として捉え、自社に本当に必要かどうかを慎重に判断しましょう。

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