建設業の下請け企業が価格交渉で使える「フレーミング効果」〜経営者のあなたへ、もっと有利な交渉を!〜
はじめに:その交渉、損していませんか?
建設業界で日々奮闘されている皆さま、本当にお疲れ様です。
とくに下請けとして働く中で、元請けとの価格交渉に苦労しているという声を多く耳にします。
「どうせウチは下請けだから……」と、交渉を諦めてしまっていませんか?
しかし、ちょっと待ってください。
実は人間の心理を活用することで、交渉をより有利に進める方法があるのです。
それが「フレーミング効果」です。
今回は中小企業診断士の視点から、建設業界の下請け企業がこの心理的効果をどう活用できるのか、具体例を交えて分かりやすく、かつ実践的に解説していきます。
そのため、交渉に自信が持てない方も、ぜひ最後までお読みください。きっと役立つヒントが見つかります。
フレーミング効果とは?
まず、フレーミング効果とは何かを理解しておきましょう。
「同じ情報でも、伝え方を変えることで、相手の判断や印象が変わる心理現象」のことを指します。
たとえば、以下の2つの表現を比較してみてください。
- 「この薬は90%の人が治ります」
- 「この薬は10%の人が治りません」
意味は同じでも、前者のほうが安心感があり、ポジティブに聞こえるのではないでしょうか?
このように、人は情報の“枠組み(フレーム)”によって感じ方や意思決定が大きく変わるのです。
つまり、価格交渉でもこの効果を活用することで、相手により前向きな判断を促すことができるのです。
下請け企業が陥りがちな「損のフレーム」
次に、なぜ交渉がうまくいかないのかを考えてみましょう。
多くの下請け企業は、無意識のうちに「損のフレーム」に陥っている可能性があります。
たとえば、次のような思考に心当たりはありませんか?
- 「この価格で受けないと、次の仕事がなくなるかも…」
- 「値上げをお願いしたら、関係が悪くなるかも…」
- 「元請けは他にも業者を知っているから、うちが断っても困らない…」
このような心理は、失うことへの恐れ、つまり“損失回避バイアス”によって生じるものです。
実際、人は利益を得るよりも、損を回避する方を強く選好する傾向があります(これを「プロスペクト理論」といいます)。
したがって、「損のフレーム」で交渉に臨むと、どうしても弱気になり、適正な価格交渉ができなくなってしまうのです。
「得のフレーム」に切り替える具体的な方法
では、どうすれば「損」ではなく「得」のフレームで交渉を進められるのでしょうか?
ここでは、下請け企業の皆さまが実際に使える5つのアプローチをご紹介します。これらは、いずれも交渉相手に“利益”をイメージさせるためのテクニックです。
1. 品質向上という“投資価値”を提示する
たとえば、単に「人件費が上がったので単価を上げてください」と言うのでは、相手にはコスト増=損と映ってしまいます。
そこで、「単価を〇〇円上げていただければ、より熟練した職人を増員でき、施工精度が〇〇%向上します」と伝えるのはいかがでしょうか?
さらに、「結果として、クレーム対応の手間が削減され、御社の品質評価も向上します」といった“相手目線”での利点を添えると、説得力が高まります。
2. 作業効率化によるコスト削減を示す
次に、作業効率の向上によって得られる効果を訴求しましょう。
たとえば、「この作業に〇〇円追加していただければ、現場での作業時間を〇〇時間短縮できます。その結果、工期全体の短縮に繋がり、トータルで〇〇円のコスト削減が見込めます」というように。
このように、直接的な価格交渉ではなく、“付加価値”を添えて提案することで、相手の納得感を引き出すことができます。
3. リスク回避のメリットを強調する
さらに、建設現場には常にリスクがつきものです。だからこそ、リスク回避を交渉材料として活用するのも効果的です。
たとえば、「追加の保険料が必要なので費用を上乗せさせてください」と伝えると、損のフレームで捉えられてしまいます。
一方で、「この追加費用で万が一の事故に備えた万全の体制を整えられます。結果として、万一の損害発生時にも御社の被害額を〇〇円に抑えられ、納期遅延のリスクも回避できます」と言い換えれば、相手にとっての安心材料となります。
つまり、「費用負担」ではなく「保険的投資」として認識してもらえるのです。
4. 競合との差別化を明確に打ち出す
同様に、競合他社との差別化を“得のフレーム”で提示することも有効です。
たとえば、「他社より少し高いですが、うちも頑張っています」ではなく、
「弊社の〇〇技術は他社では真似が難しく、それにより御社のプロジェクトに〇〇という具体的メリットを提供できます」
というように、独自性をメリットとして伝えましょう。
このようにすることで、「価格」ではなく「価値」で判断してもらえるようになります。
5. 長期的なメリットを描く
最後に、「未来の利益」を明確に伝えることも大切です。
たとえば、「今回の仕事は儲けが少ないので、少しでも上乗せを…」ではなく、
「今回の案件を通じて、御社と長期的なパートナーシップを構築できれば、今後の〇〇案件でも協力体制を継続し、調達・管理の負担も軽減できます」
というように、将来にわたるメリットを可視化しましょう。
このように、“長期視点での得”を示すことによって、相手に安心感と将来的な展望を与えることができます。
交渉前に準備すべき5つのポイント
それでは、これらの「得のフレーム」を実際に使いこなすには、どのような準備が必要でしょうか? 以下にポイントを5つに整理しました。
1. 元請けのニーズと課題を調査する
まずは、元請け企業が何を重視しているのか、どんな課題を抱えているのかを徹底的にリサーチしましょう。
そのうえで、「どんな言葉が響くか」を事前に把握しておくことが重要です。
2. 自社の強みを整理する
次に、自社が提供できる価値や独自のノウハウを棚卸ししましょう。
これは、相手に“比較対象”として選ばれるための前提条件です。
3. 数字や実績を用意する
さらに、「〇〇%の削減」や「〇〇円のコスト低減」など、できるだけ定量的な表現を用意することが説得力の鍵になります。
具体的なデータがあるだけで、交渉力が格段に上がります。
4. 複数の切り口を持っておく
交渉は生き物です。一つの論点だけでなく、複数の“得のフレーム”を準備しておくことで、相手の反応に応じて柔軟に切り替えることが可能です。
5. ロールプレイで練習する
最後に、実際の場面を想定してロールプレイを行いましょう。
繰り返し練習することで、自然な言い回しや応酬話法が身につき、本番でも自信を持って交渉に臨めるようになります。
成功事例:基礎工事業者の単価交渉
実際にフレーミング効果を活用して交渉を成功させた事例をご紹介しましょう。
ある基礎工事専門の企業では、長年の取引がある元請けから「従来と同じ単価での受注」を求められていました。しかし、資材費と人件費の高騰により、そのままでは利益が出ない状況でした。
当初は、「これ以上の価格では赤字になるので、値上げさせてください」という、いわゆる“損のフレーム”での交渉を検討していました。
ところが、事前に準備を重ね、「得のフレーム」に切り替えることにしました。
たとえば、次のような提案を行ったのです:
「弊社の高精度な基礎工事は、その後の躯体工事のズレを抑制し、再調整工数を〇〇%削減できます。その結果、工期が平均で〇〇日短縮され、現場管理コストを〇〇円抑えることが可能です。」
さらに、「他社にはない最新の測量機器」と「それを扱える熟練技術者の存在」にも言及し、品質と信頼性を数値で可視化しました。
結果として、元請けは単なるコストアップではなく、“合理的な投資”として受け止め、希望単価に近い価格で契約が成立しました。
このように、「損のフレーム」から「得のフレーム」への転換が、交渉結果を大きく左右したのです。
まとめ:心理学の力で、有利な交渉を実現しよう
建設業の下請け企業として、元請けとの価格交渉に不安を感じる方は少なくありません。
しかし、フレーミング効果という心理学的な視点を取り入れるだけで、交渉の展開が大きく変わる可能性があります。
今回のポイントを振り返ってみましょう:
- 「損のフレーム」から「得のフレーム」へ切り替えること
- 「品質向上」「効率化」「リスク回避」「差別化」「長期的利益」という切り口で伝えること
- 相手のニーズを事前に分析し、準備と練習を重ねること
つまり、「交渉は苦手…」と感じている方でも、少しの工夫と視点の転換で、会社の利益を守る強力な武器を手にすることができるのです。
ご相談はお気軽にどうぞ!
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- 「具体的に自社の強みをどうフレーミングに落とし込めばいいか分からない」
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