アージリスの「成熟・未成熟理論」~若手職人が指示待ちから自発的に動くチームをつくるには~


はじめに|なぜ「指示待ち」が生まれるのか?

「最近の若いやつは、自分で考えない」
「言わないと何もしないし、言ってもやり方を覚えようとしない」

そんな嘆きを、建設業の経営者や現場監督、親方からよく聞きます。
人手不足が深刻化する中で、ようやく確保した若手が戦力にならず、結局ベテランに負担が集中する――そんな現場は少なくありません。

しかし、こうした「指示待ち状態」の若手を生み出している原因は、果たして本人のやる気や能力の問題なのでしょうか?

組織論の権威、クリス・アージリスが提唱した「成熟・未成熟理論」は、人が本来持つ成長力を、組織や上司がどのように引き出すかという視点からこの問題にアプローチします。


成熟・未成熟理論とは何か?

アージリスは、人間は本来「受動的(未成熟)」な存在ではなく、「自立的・主体的(成熟)」な存在へと成長する力を持っていると考えました。
この理論は、人間の成長プロセスを以下のように整理しています。

未成熟の状態成熟した状態
指示待ち自主的に判断して動く
依存的自立的
興味が限定的興味が広く、深い
短期志向長期的視点を持つ
他者に感情を依存自分をコントロールできる

子どもが成長するにつれて、自立し、自分の意思で行動するようになるのと同じように、
職場の人間も、本来は「成熟」に向かうポテンシャルを持っているという考え方です。

しかし、組織のあり方によっては、そのポテンシャルがつぶされてしまいます。
つまり、「やる気がないように見える若手」も、組織や職場文化が未成熟な状態に押し込めている可能性があるのです。


建設業の現場に潜む「未成熟な仕組み」

アージリスは、古い体質の組織では、社員を「未成熟な存在」として扱いがちだと指摘しました。
これは、まさに多くの建設現場に当てはまるのではないでしょうか。

上意下達の文化

「親方が言ったとおりに動け」「余計なことはするな」――
こうした命令型のマネジメントは、若手の「考える力」や「工夫しようとする気持ち」を削いでしまいます。

失敗を許さない空気

「やってみてミスしたら怒られる」「段取りが悪いと全部バレる」――
現場での責任の重さが、挑戦することへのハードルになり、「何もしない方が安全」と思わせてしまいます。

評価される基準が曖昧

頑張っても評価されず、「早く動ける」「怒られない」のような曖昧な基準が主流では、職人は「どう頑張ればいいのか」がわからなくなります。

このように、未成熟な組織構造が、未成熟な人材を生んでいるケースが非常に多いのです。


「成熟した職人」を育てるために|現場でできる4つのアクション

では、どうすれば職人たちが「自分で考えて動ける」状態に育っていくのでしょうか?
アージリスの理論をベースに、現場ですぐに取り入れられる実践的な方法を紹介します。


1.「小さな責任」を持たせる

たとえば、「今日の資材準備は君に任せる」「この区画の施工は責任を持ってやってみてくれ」といった具体的で範囲が限定された仕事を任せてみましょう。

重要なのは、「指示する」のではなく「任せる」ことです。
最初はうまくいかなくても、少しずつ責任を与えることで、「自分の仕事」という意識が芽生えます。


2.「問いかけ」で思考を促す

新人がミスしたとき、「何でこんなことしたんだ!」と叱るのではなく、
「どうすれば防げたと思う?」「次からどうしようか?」と問いかけることで“自分の頭で考える”機会を与えましょう。

「考えること」に慣れていない若手ほど、こうした問いが「思考のきっかけ」となります。


3. 挑戦・工夫を評価する

建設業では、スピードや仕上がりの正確さばかりが評価されがちです。
しかし、成長段階の若手にとっては、「段取りを自分で考えた」「声かけを工夫した」などの姿勢や工夫の評価こそがモチベーションになります。

完璧な結果より、「挑戦したこと」「学ぼうとしたこと」を言葉にして認めてあげましょう。


4.「3年後」のビジョンを共有する

「今の現場をこなす」だけでなく、「このまま成長したら、どんな職人になれるか?」という将来像を伝えることも大切です。

「2年目でこのレベルまで任せたい」「いずれは小規模現場の管理も頼むつもりだ」など、
未来の自分をイメージできるような声かけが、仕事に対する主体性を育みます。


経営者・親方に問われる「育てる視点」

成熟した人材を育てるために最も重要なのは、経営者や親方自身の意識改革です。

  • 「余計なことはするな」ではなく、「考えたうえで動ける人」を育てる
  • 「指示通りにやれ」ではなく、「任せて育てる」
  • 「文句を言う前に手を動かせ」ではなく、「考える力を引き出す」

このように、“教え方”や“関わり方”を変えることが、人材が育ち定着する職場文化をつくる第一歩です。


まとめ|「人が育つ現場」には共通点がある

  • アージリスの「成熟・未成熟理論」は、人は本来、自立し、主体的に行動する力を持っているという前提に立った理論です。
  • しかし、現場の文化や管理の仕方によっては、その力が押さえ込まれ、指示待ちの状態にとどまってしまいます。
  • 経営者や親方が、「任せる・問いかける・挑戦を認める・未来を示す」ことで、現場の人材は“成熟”に向かって育っていきます

目次

次回予告

次回は、アージリスのもう一つの重要な理論「ダブルループ学習」について解説します。
「表面的な改善」ではなく、「根本から考える現場」をつくるにはどうすればいいのか――
建設業の“考える力”を育てるヒントをお届けします。

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