「戦う組織」への変貌──変革型リーダーシップに学ぶ、水戸ホーリーホックの快進撃

当事務所の地元、茨城県水戸市をホームタウンとする水戸ホーリーホックが今季、J2リーグで快進撃を続けています。執筆時点の6月19日では首位のジェフ千葉と勝ち点差なしの2位に躍進し、設立以来初めてのJ1リーグも夢ではない状況になっています。例年は下位に沈み、育成型クラブという評価が先行していたこの地方クラブが、なぜここまで変貌を遂げたのでしょうか──。

その答えは、組織の“外”ではなく“内”にあります。
中心にいるのは、クラブに選手時代から20年近く在籍してきた指導者、森直樹監督。彼のリーダーシップは単なる采配やモチベートではありません。選手・スタッフ・経営陣・サポーターにまで影響を及ぼす「組織変革の推進者」として、いま注目を集めています。

本稿では、中小企業診断士の視点から、森監督の手腕を変革型リーダーシップ論の4要素に基づいて読み解き、地方企業や中小組織の変革に役立つヒントを探ります。

(参考記事:フットボリスタ「成長」から「勝ち切る」へ。育成の水戸を戦う集団へと変えた森直樹監督の意識改革)


目次

変革型リーダーシップとは何か?

「変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)」とは、部下の心に火をつけ、組織の価値観や文化そのものを変えるようなリーダーシップのスタイルです。

ポイントは、「上司が指示を出して、部下が動く」という単純な関係ではないということです。
変革型リーダーは、以下のような影響を組織に与えます:

  • ただ業務をこなすのではなく、「この仕事にどんな意味があるか」を考えさせる
  • 部下が自ら判断し、動きたくなるような雰囲気をつくる
  • 失敗を恐れず、挑戦する姿勢を評価する
  • 一人ひとりの個性や状況に応じた働きかけを行う

つまり、チームの「やらされ感」を「自ら動く力」に変えるのが、変革型リーダーシップです。

これは、特に変化の激しい時代において、ただ命令に従う組織では成果が出にくくなっている今、非常に重要な考え方といえます。

アメリカの組織心理学者バーナード・バスは、この変革型リーダーシップを次の4つの要素に分類しています:

  1. 理想化された影響力(Idealized Influence)
     → 自ら模範となり、信頼される存在になる
  2. 鼓舞的動機づけ(Inspirational Motivation)
     → 組織に明るい未来像を示し、やる気を引き出す
  3. 知的刺激(Intellectual Stimulation)
     → 部下の発想や考えを尊重し、挑戦を促す
  4. 個別的配慮(Individualized Consideration)
     → 一人ひとりに目を配り、成長を後押しする

これらを実践することで、リーダーは単なる管理者ではなく、 組織全体を進化させる「変化の触媒」 になります。

そして、まさにこのスタイルを体現しているのが、水戸ホーリーホックの森直樹監督なのです。


① 理想化された影響力:自らの言動で組織の象徴に

森直樹監督は、現役時代に水戸でCBとしてプレーし、引退後もユース・トップのコーチを経て監督に就任した、生え抜きの指導者です。その経歴だけでもクラブにとって象徴的な存在ですが、彼の“リーダーとしての影響力”は行動と言葉によってさらに強化されました。

就任後、真っ先に行ったのはチームスローガンの変更です。

旧:「すべては成長のために」
新:「やりきる 走りきる 勝ちきる」

近年は前田大然や伊藤涼太郎、小川航基など海外で活躍する選手を育て、育成を重視するクラブ文化が、逆に「勝てなくても仕方がない」という空気を生んでいた。その風土に対し、「勝つことこそが成長の目的」と価値基準を再定義しました。このように、リーダー自身が行動と価値観の基準を示すことで、チーム内の信頼を得る典型例となっています。


② 鼓舞的動機づけ:ビジョンと言葉で組織を動かす

スローガンの刷新は、単なる言い換えではなく、組織のマインドセットを変える施策でした。

森監督は、選手やスタッフにこう問いかけたといいます。

「成長するだけでいいのか? 俺たちは勝つためにここにいるんだよな?」

この言葉が、これまで“育成”の名のもとに曖昧だった行動の目的に明確な指針を与えました。
水戸ホーリーホックの選手たちは今、「どうすれば勝てるか」を自分で考え、判断し、実行するようになってきています。これは、単に監督の指示に従うのではなく、自発的に動く組織への転換です。

小規模企業や地域組織においても、抽象的な理想やスローガンではなく、「明日、自分は何をすべきか」が伝わるビジョンが必要です。森監督の“鼓舞”はその模範例です。


③ 知的刺激:勝利と育成の両立という難題に挑戦

水戸ホーリーホックは「育成型クラブ」として、前田大然や伊藤涼太郎といった選手を輩出してきました。一方で、「育てること」と「勝つこと」は両立しにくいとされてきたのも事実です。

森監督は、この“二律背反”を組織全体の知的課題と捉えました。

  • 育成はあくまで「勝つための手段」
  • 若手を起用するにも、状況に応じた判断と準備が必要
  • チームとして守備構造・連動性を高め、若手の武器を最大化

こうした方針の下、選手たちはピッチ内外で「考えること」を求められています。
これはまさに、思考停止からの脱却と知的挑戦の場の創出であり、現場で考え続ける風土の醸成でもあります。


④ 個別的配慮:選手一人ひとりへの目配りと育成

森監督の指導は、チーム全体のマネジメントだけでなく、個々の選手への配慮にも及びます。ユース出身者や出場機会の少ない選手に対しても、練習中やベンチでの声かけ、役割の明確化を欠かさず行っており、全員がチームの一員であるという意識を保てるよう支えています。

若手だけでなく、ベテランにも個別のフィードバックや相談機会を設けることで、選手は「見られている」「信頼されている」という感覚を持ちます。これは、モチベーションだけでなく、離脱・流出リスクの抑制にもつながる重要な要素です。


ステークホルダーとの連携も変革型の延長線にある

変革型リーダーシップは、組織内だけで完結するものではありません。水戸ホーリーホックでは、以下のようにクラブ全体が外部との関係性を再構築しています。

これらはすべて、森監督の内部変革と連動し、「クラブとは何か」「何を目指しているのか」を地域社会に伝える活動です。リーダーの想いと行動が、組織の枠を超えて社会的価値に転化されている好例です。


地方の中小組織こそ、変革型リーダーシップが必要だ

変革型リーダーシップは、単なる「優秀な上司」や「カリスマ」ではありません。
それは「組織の文化・目的・働き方を再定義し、メンバーを自己超越へ導く存在」です。

森監督は、育成型クラブという誇りを否定せず、「勝つために育てる」という価値観へと進化させました。その過程で、言葉を変え、組織の空気を変え、関係者との信頼を築き、選手の思考を促しました。

中小企業や地方組織にとっても、環境の変化に適応し、自らの文化を見直す局面は少なくありません。そのとき必要なのは、スキルよりも「組織を変える覚悟と信念を持ったリーダー」です。

水戸ホーリーホックの快進撃は、地方の変革型組織がどのようにして力を発揮し得るか──その実践例として大きな示唆を与えてくれます。

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