建設会社がぶつかる「成長の壁」組織成長モデルで読み解く転換点

「人数が増えると現場がうまく回らなくなった」
「昔はスムーズだったのに、最近トラブルが多い」
そんな声が経営者や現場監督から聞こえてきたら、あなたの会社は「成長の壁」に差し掛かっているのかもしれません。

今回は中小企業診断士の立場から、建設業の組織成長を「グレイナーの成長モデル」という理論を使って解説します。
段階ごとに起きやすい問題と、その乗り越え方を建設会社のリアルな姿を交えて見ていきましょう。


グレイナーの組織成長モデルとは?

アメリカの経営学者ラリー・グレイナーは、組織は成長に応じて「進化」と「革命(危機)」を繰り返すと説きました。

そのプロセスは以下の5段階に分かれます:

  1. 起業者段階(Creativity)
  2. 共同体段階(Direction)
  3. 公式化段階(Delegation)
  4. 精巧化段階(Coordination)
  5. 協働段階(Collaboration)

では、建設業に当てはめて各ステージを見ていきましょう。


① 起業者段階:社長が職人であり営業マン

特徴

多くの建設業者がここからスタートします。
現場経験のある社長が一人親方として独立、数人の職人や家族を巻き込んで現場を回し始める段階です。

事例

茨城県のあるリフォーム業者。元は社長1人で地元の仕事を請けていたが、紹介が増えて職人2人とパート事務員を雇用。
現場も営業も請求もすべて社長が見ていた。

危機:リーダーシップの危機

社長の手が回らなくなり、段取りミスや請求漏れが発生。
「俺が全部やらないと現場が動かない」状況は限界を迎える。

対応策

信頼できる事務員や現場責任者に仕事を明確に割り振り、意思決定の枠組みを整備することが必要。


② 共同体段階:初めての組織化と中間管理職

特徴

組織化のはじまり。現場ごとのリーダー(主任クラス)を配置し、工程管理や資材発注の一部を任せ始めます。
事務所には総務や営業担当が入り、社内会議が始まる頃です。

事例

5人規模から10人規模になった土木会社。
現場ごとに「担当主任」を立て、日報の提出と週次会議を導入。現場の管理は任せるようになった。

危機:自律性の危機

現場が「もっと自由にやらせてほしい」と反発。
一方、社長は「現場任せで品質がバラバラだ」と不安を感じる。

対応策

共通のルール(品質基準や報告体制)を整え、社長が指示を出すのではなく方針を示す立場になることで組織が安定していきます。


③ 公式化段階:現場への権限移譲と拠点の拡大

特徴

支店や営業所を開設し、各エリアごとに現場管理・営業・工程管理を任せる体制になります。
役員や幹部が複数現れ、経営と現場が分かれ始めます。

事例

茨城県内で3拠点を展開する舗装業者。
各拠点に所長を置き、現場の原価管理も任せるようになったが、本社と現場の情報共有にギャップが生まれる。

危機:統制の危機

「営業が勝手に取った仕事を現場が押し付けられる」
「各所長のやり方が違いすぎて社員が混乱する」
など、本社と拠点、部門同士の対立が起きやすくなります。

対応策

原価管理・工程表・品質管理などに共通フォーマットを導入し、「やり方を揃える」必要があります。


④ 精巧化段階:制度の整備と情報の複雑化

特徴

ISO認証の取得、社内研修制度、等級制度、MBOの導入など、組織を制度で整えようとする段階です。
コンプライアンス意識も高まります。

事例

ゼネコンの下請として数十人規模に成長した会社。
ISO9001と建設キャリアアップシステム(CCUS)を全社員に導入、定期面談と研修を制度化した。

危機:官僚制の危機

「帳票ばかりで仕事が前に進まない」
「現場の判断よりもルールが優先されて臨機応変に動けない」
現場から制度疲れの声が上がります。

対応策

制度を目的化せず、“現場の助けになる制度か?”を常に点検する視点が求められます。


⑤ 協働段階:プロジェクト型・情報共有型組織へ

特徴

階層のないプロジェクト制、クラウドを活用した情報共有、個人の裁量とチームの柔軟性が両立した状態。
若手とベテランが役職に関係なく協働します。

事例

BIMやクラウド型工程管理を導入した先進的な建設会社。
プロジェクトごとにチームが組まれ、営業・設計・現場管理がフラットに連携。

危機:飽和・混乱の危機

「誰が責任をとるのか分からない」
「情報は共有されているけど、指示系統が曖昧で動きづらい」
といった混乱が起きることも。

対応策

自律と責任が表裏一体であることを共有し、透明性と評価制度のバランスをとることが大切です。


まとめ:自社の“成長の壁”を見つけよう

グレイナーの成長モデルは、建設業にも見事に当てはまるフレームワークです。
「うまくいかない原因」が、社長や社員の能力ではなく、組織の構造と成長段階のミスマッチにあることは珍しくありません。

あなたの会社は今、どのステージにいますか?
そして、次の成長のために何を手放し、何を得る必要があるでしょうか?

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