行政書士法改正で何が変わる?新たな使命と可能性を読み解く

今国会で議論されてきた行政書士法改正案が5月30日に衆議院を通過し参議院に送られました。参議院で可決、成立すれば来年1月から施行される見通しです。改正案の条文を一つひとつ丁寧に解説するとともに、今後の行政書士業務に与える影響を検討していきます。

目次

1.行政書士の使命

改正内容の要点

改正案では、第1条において行政書士の「使命」が初めて明文化されました。

行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに、国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とする。

解説と背景

従来の行政書士法では、行政書士の業務内容は定義されていたものの、「使命」までは明記されていませんでした。この改正により、行政書士が行政手続の専門家として果たすべき役割が法的に明確になります。

実務への影響

これは単なる理念的な変更にとどまらず、今後の倫理規定や研修制度、対外的な信用に影響する可能性があります。「国民の権利利益の実現に資する」ことが法的に位置づけられたことで、行政書士の社会的役割が一層重視されるでしょう。

2.デジタル対応を含む「職責」の明確化

二 職責

 1 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないものとすること。

 2 行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないものとすること。 (新第1条の2関係)

改正内容の要点

新設された条文により、行政書士の「職責」が2つの視点から定義されました。

  • 法令・実務に精通し、公正かつ誠実に業務を行うこと
  • デジタル社会の進展に対応し、ICT等の活用に努めること

解説と背景

ここでは、「品位の保持」や「法令・実務への精通」といった従来の倫理的責任に加え、「デジタル社会対応」が新たな責務として明記されました。マイナポータルや電子申請の普及、行政のDX推進に合わせた動きといえるでしょう。

行政手続きは旧来の紙からデジタルへの流れが今後も一層進んでいくでしょうが、高齢者、障がい者、外国人などデジタル社会への対応が難しい人々(デジタル・ディバイド)も多くいることが実状です。そういった方々をサポートし、利便性の享受と行政との円滑な関係を構築できるように伴走していく使命が行政書士にあるということでしょう。

実務への影響

電子契約、オンライン申請、クラウド管理など、ICTスキルはもはや行政書士業務に不可欠です。今後、登録要件や研修内容にもICT関連が組み込まれていくと予想され、行政書士の中でも「デジタルに強い事務所」が差別化の鍵となるでしょう。

また、デジタル対応困難な人々に対するナビゲート力、サポート力というところも一層求められることになるでしょう。

3.特定行政書士の業務範囲拡大

三 特定行政書士の業務範囲の拡大

 特定行政書士が行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができる範囲について、行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものから、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものに拡大すること。 (新第1条の4第1項第2号関係)

改正内容の要点

特定行政書士による不服申立て手続の代理が認められる範囲が拡大されます。

従来は「行政書士が作成した」書類に限られていた対象が、「行政書士が作成することができる」書類全般に拡大します。

解説と背景

特定行政書士は行政不服申立ての代理が認められる存在ですが、従来は行政書士が作成した書類に限り申立てが出来るという制限がありました。これが実質的に緩和され、「作成可能な書類」に範囲が広がったことで、自身が関与していなかった案件での不服申し立てが可能になります。

実務への影響

従来は、特定行政書士が不服申立て手続きを代理できるのは、自ら作成した書類に限定されていました。この「形式的制限」が撤廃され、より柔軟に代理業務が行えるようになります。

たとえば、クライアントが自力で作成した申請書が却下されるようなケースにおいて、特定行政書士がその後の不服申立て代理を担えるようになります。これによりフォローアップを起点とした受任が可能となり、クライアント満足度が高まると期待されます。

従来は「不服申立代理権」を行使できるケースが少なかった特定行政書士の活躍フィールドがこの改正によって広がるかは関心どころとなりますね。

4.業務の独占性に関する明確化

四 業務の制限規定の趣旨の明確化

 行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言を加え、その趣旨を明確にすること。 (第19条第1項関係)

改正内容の要点

非行政書士による業務制限について、次の文言が追加されました。

「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」

解説と背景

これまでは、無資格者が行政書士業務を行っても、「無料」であればグレーな扱いになっていました。今回の改正で、たとえ「謝礼」や「実費相当」であっても報酬性がある限り違法とされる明確な根拠が加わります。

実務への影響

例えば補助金支援などで、いわゆる“なんちゃって行政書士”やコンサルタント業者による「書類作成代行」(補助金支援そのものは行政書士に限らずOK)について取締りが強化され、業界の健全化が図られることが期待されます。行政書士の独占業務としての法的地位が強化される意義は大きいといえます。

5.両罰規定の整備

五 両罰規定の整備

 行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反及び名称の使用制限違反に対する罰則並びに行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備すること。 (第23条の3関係)

改正内容の要点

法人や所属行政書士が違法業務を行った場合、法人代表者等にも罰則が及ぶ「両罰規定」が整備されました。

解説と背景

これまでは行政書士法人が違法行為を行っても、実質的に罰則が不明確な部分がありました。両罰規定の導入により、違反者が法人に所属している場合、代表者や業務執行社員の責任も問えるようになります。

実務への影響

法人経営におけるコンプライアンス体制の構築が今後より重視されるようになります。規模の大きな行政書士法人ほど、内部監査体制や職員研修の充実が求められることになるでしょう。

これからの行政書士に求められるもの

今回の法改正は、単なる業務範囲の拡大やルールの明確化にとどまらず、「これからの行政書士像」を問い直す契機となっています。改正法の要点を踏まえれば、今後の行政書士に求められるのは、以下のような多面的な資質です。

1.デジタル社会に対応する専門力

電子契約、オンライン申請、マイナポータル連携など、行政手続は急速にデジタル化しています。行政書士自身がICTを自在に扱えるスキルは、今や必須です。業務の効率化にとどまらず、クライアントへの提案力や対応力も問われます。

しかし、ここで重要なのは「単にツールを使えること」ではありません。ツールに対応できない人々の“代わり”になれること――すなわち、「人に寄り添うデジタル支援者」であることが行政書士の真価です。

2.“支える専門家”としての使命感

法改正で「国民の権利利益の実現に資すること」が明文化された今、行政書士の役割はより“公共的”なものになっていきます。複雑な制度と対峙する市民や中小企業のために、手続を支え、代弁し、伴走する存在が求められています。

たとえば、高齢者や外国人、障がいのある方など、デジタル化の波に取り残されがちな人々にこそ、行政書士の知見と行動力が必要です。私たちは、制度と社会の“隙間”を埋める翻訳者・橋渡し役であるべきです。

3.専門性と倫理性の両立

不服申立て代理や複雑な許認可対応など、行政書士が関与できる業務領域は広がっています。こうした高度な対応を行うには、法令知識だけでなく、業界や実務の専門性、そして高度な倫理観が欠かせません。

また、無資格者の業務排除が法的に強化された今こそ、正規の行政書士としての存在意義と信頼性を社会に示す機会でもあります。


“行政手続の専門家”から、“社会をつなぐ支援者”へ

行政書士法の改正は、私たちに問いかけています。「どんな行政書士でありたいのか?」と。

時代の変化に柔軟に対応しながらも、人の悩みに寄り添うことを忘れない。そんな“次世代の行政書士像”こそが、これからの社会に必要とされているのです。

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