2025年行政書士法改正で求められるデジタル化対応の本質
行政書士法が70年ぶりの大改正
行政書士法がついに改正されました。これは1951年の制定以来、実に70年以上ぶりとなる大幅な見直しです。特に注目すべきは、行政手続のデジタル化を見据えた行政書士の役割再定義です。

1951年の制定以来、制度として大きな見直しがなされるのは実に70年以上ぶり。とりわけ注目されているのが、行政手続のデジタル化に伴う実務対応の見直しです。
なぜ今、改正が必要だったのか?
現代社会では、行政サービスの多くがオンライン化されています。しかし一方で、「誰もが平等に使いこなせる」という状況には程遠いのが実情です。だからこそ、今回の改正では、デジタル社会の進展を踏まえた職責が明確化されました。
デジタル社会で明文化された行政書士の職責
2026年1月から施行される改正行政書士法では、新たに下記条文が設けられました。
二 職責
1 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないものとすること。
2 行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないものとすること。 (新第1条の2関係)
まず、行政書士が「国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努める」ことが職責として明文化されました。つまり、行政書士制度の理念的基盤を現代社会に即して更新するものであり、とりわけデジタル化と情報格差という新たな社会課題に行政書士がどう向き合うかを問い直す契機となっています。
行政のデジタル化が急速に進む中、「誰一人取り残さないデジタル社会」の実現が国家的課題となっています。しかしその裏で、高齢者や中小零細事業者を中心に、情報通信技術をうまく活用できない層=いわゆる“デジタルディバイド(情報格差)”の存在がますます顕在化しています。
さて、こうした格差の中で、「制度と現場」「技術と生活」の間をつなぐ専門職としての行政書士の意義は何でしょうか。
デジタルディバイドとは?
ここで注目したいのが「デジタルディバイド(情報格差)」という言葉です。これは、情報通信技術(ICT)を活用できるか否かによって生じる、社会的な格差を指します。
たとえば以下のような方々がその影響を受けています:
- 高齢者や障害のある方
- 日本語に不安がある外国籍住民
- 中小企業の経営者でデジタルに疎い層
このような人々は、電子申請やマイナンバーの手続きに戸惑い、行政サービスにアクセスできないという不安や不公平感を抱えてしまいます。
行政書士が担う意義:制度と市民をつなぐ“翻訳者・橋渡し役”
1. 制度と現場の“ずれ”を埋める中間支援者
まず重要なのは、制度設計側と利用者側のギャップを埋めることです。たとえば、行政が設計した手続きが現場ではうまく機能しないことがあります。そうした“ずれ”を解消する存在として、行政書士は機能します。
2. 公平な行政アクセスの保証人
次に、誰もが等しく行政サービスを利用できるようにする点です。とりわけ、インターネット環境が整っていない方や、デジタルツールに不慣れな方にとって、行政書士の支援は非常に心強いものです。結果として、社会全体の公平性が高まります。
電子申請が進むほど、「ネットが使えないから申請できない」「マイナンバーカードが分からない」という声も増加します。そのため、行政書士が支援に入ることで、すべての人が行政サービスに公平にアクセスできる社会の実現が近づきます。
3. 制度改善のフィードバックループを担う存在
行政手続の現場で実際に困っている人の声を拾い上げ、それを行政機関にフィードバックすることで、より使いやすく、現実に即した制度設計の改善にも貢献できます。
4. 信頼と安心を提供する“媒介者”
電子通知や申請フォームに対して不安や不信を抱く市民も少なくありません。行政書士が間に立つことで、「誰に聞けばいいかわからない」不安の解消につながります。
デジタルディバイドへの支援:具体的な実務像
行政書士が行う支援は、単なる「代行」ではなく、本人ができるようになるための“支援型アプローチ”が理想です。以下のような活動が想定されます:
- オンライン申請に関する入力補助や手順説明
- スマホ・PC操作に関する簡易マニュアルやサポート
- 地域の公民館・商工会等と連携したデジタル相談会の開催
- 高齢者等への「同行支援型」サービス(その場で一緒に手続きを進める)
- 利用者からの意見を行政に伝える仕組みづくり
これらは行政書士にとって単なる新業務の拡張ではなく、公共的使命の体現であり、地域の信頼を獲得する基盤ともなります。
制度を活かすのは「人」の力
いかに制度や技術が整備されても、それを「使える人」と「使えない人」の間に格差があれば、真の意味での公平性は実現しません。行政書士は、法律と手続、そして人の間に立つ専門職として、これからのデジタル社会においてますます重要な役割を担っていくでしょう。
「つなぐ人」が求められる時代に、行政書士の真価が問われています。
