経審Y点(経営状況分析)改善のためのポイント:中小建設会社が取り組むべき実務的対策

経審 Y点 改善
目次

はじめに:なぜ今、経審Y点の改善が必要なのか

激しい競争が続く建設業界で、公共工事の受注を増やしたり、金融機関からの評価を高めたりする上で、経営事項審査(経審)の重要性はますます高まっています。特に、経営状況分析(Y点)は、会社の財務体質や経営効率を客観的に示す重要な指標です。このY点をいかに改善していくかが、今後の事業拡大のカギを握ります。

「Y点」については一見、難解な数字や専門用語が並びます。しかし、ご安心ください。本記事は、中小の建設会社が、ご自身の会社で実践できる具体的な改善策が中心です。難しい計算式や指標の羅列ではなく、明日から取り組めるヒントを提供します。


Y点とは何か?簡易解説

経審のY点(経営状況分析)は、以下の8つの指標から構成されます。

  1. 純支払利息比率:会社の財務安定性を見る指標
  2. 総資本売上総利益率:会社の収益性を見る指標
  3. 自己資本対固定資産比率:会社の資金調達の健全性を見る指標
  4. 自己資本比率:会社の財務健全性を見る指標
  5. 営業キャッシュフロー:会社の現金創出力を見る指標
  6. 利益剰余金:会社の内部留保を見る指標
  7. 平均売上高経常利益率:会社の継続的な収益力を見る指標
  8. 自己資本対売上高比率:会社の規模と自己資本のバランスを見る指標

これらの指標を総合的に評価し、点数化することで、経審の点数全体に大きな影響を与えます。特に、純支払利息比率総資本売上総利益率は、Y点への寄与度が高いとされています。また、営業キャッシュフロー利益剰余金は、金額そのものが評価されるものです。これらは売り上げ規模の小さい中小企業が一朝一夕に改善できるものではありません。

そこで今回は、中小企業が「優先的に取り組める」という視点から、純支払利息比率総資本売上総利益率を中心に、実務的な改善策をご紹介していきます。


Y点改善のための具体的な対策

1. 純支払利息比率の改善:借入金を見直し、支払利息を抑制する

「純支払利息比率」は、売上高に対する支払利息の割合を示す指標です。この比率が低いほど、財務体質が健全であると評価され、Y点向上に繋がります。簡単に言えば、売上に対して利息負担が少ない会社ほど良い点数になる、ということです。

中小建設会社がこの比率を改善するために、具体的にどのような対策が考えられるでしょうか。

対策1:既存の借入金を見直す

低金利の借り換えを検討する

現在の借り入れ融資の金利が、今の市場金利や貴社の信用力から見て高くないでしょうか。定期的に金融機関に相談してみましょう。特に、以前高金利で借り入れたものや、信用保証協会の保証付融資でも、より有利な条件のものが登場している可能性があります。複数の金融機関に相談し、比較検討することが重要です。

実務イメージ

メインバンクだけでなく、セカンドバンクや信用金庫、信用組合など、複数の金融機関の担当者に「現在の金利より低い金利で借り換えできないか」「返済期間を延ばして毎月の返済額を減らせないか」といった相談を積極的に持ちかけてみましょう。金利交渉の際は、貴社の安定した業績や将来性を示す資料(決算書、受注予定、事業計画など)を提示できるように準備しておきましょう。

返済計画の見直

資金繰りに余裕がある場合は、繰り上げ返済を検討することも有効です。利息は元金に対して発生するため、元金を減らせば支払利息も減少します。ただし、手元資金が少なくなるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

実務イメージ

手元資金の状況を常に把握し、一時的に大きな入金が見込まれる時期などに、一部の借入金について繰り上げ返済が可能か、金融機関に相談してみましょう。特に金利が高い借入から優先的に返済していくのが効果的です。

対策2:不要な借入金を削減する

遊休資産の売却

使っていない土地や建物、重機などを売却して借入金を返済することも検討しましょう。資産を保有しているだけで、固定資産税や維持費、減価償却費などのコストがかかります。これらを売却することで、資金を捻出し、借入金を減らすことができます。

実務イメージ

社内で使用頻度の低い資産や、老朽化して維持費がかかる資産がないか洗い出してみましょう。不動産であれば不動産会社、重機であれば中古重機買取業者などに査定を依頼し、売却益を借入金の返済に充てる計画を立てます。

運転資金の効率化

売掛金の回収を早めたり、買掛金の支払いを適正化したりすることで、運転資金の借入を抑制することができます。入金サイトの交渉や、在庫の適正化なども有効です。

実務イメージ

売掛金:元請けや施主に対し、可能な範囲で入金サイトの短縮交渉をしてみましょう。早期入金インセンティブを提示するのも一案です。また、入金遅延が発生しないよう、請求書発行から回収までの管理体制を強化することも重要です。
買掛金:支払サイトは、自社の資金繰りを考慮しつつ、取引先との良好な関係を損なわない範囲で、最適なサイトを設定しましょう。手形から振込への切り替えで、手数料削減効果も期待できます。
在庫:資材や部品の過剰な在庫は、それ自体が資金を拘束します。必要な時に必要なだけ仕入れるジャストインタイム方式を導入するなど、在庫管理を徹底し、無駄な仕入れを抑えることで、運転資金の借入を減らすことができます。


2. 総資本売上総利益率の改善:利益率を高め、資産を効率的に活用する

「総資本売上総利益率」は、会社の保有する総資産が、どれだけ効率的に粗利益(売上総利益)を生み出しているかを示す指標です。この比率が高いほど、収益性が高いと評価され、Y点向上に繋がります。

中小建設会社がこの比率を改善するために、具体的にどのような対策が考えられるでしょうか。

対策1:売上総利益(粗利益)率の向上

粗利益とは、売上高から売上原価を差し引いたものです。この粗利益率を上げるためには、「売上単価を上げる」か「原価を下げる」かの2つのアプローチがあります。

受注単価の適正化・向上

安易な安値受注は避け、適正な利益を確保できる受注単価を設定することが重要です。貴社の強みや専門性をアピールし、単価アップ交渉の根拠としましょう。また、顧客との関係性を強化し、信頼を得ることで、価格以外の付加価値を認めてもらうことも有効です。

実務イメージ
見積もり段階:過去の類似案件の原価実績を詳細に分析し、適正な利益を上乗せした見積もりを作成します。単に他社に合わせるだけでなく、自社の技術力や品質、工期遵守といった強みを具体的に提示し、価格競争だけでなく価値競争に持ち込みましょう。
顧客との交渉:特に技術力や難易度の高い工事、特殊な工法を要する工事など、貴社にしかできない(あるいは得意な)分野での受注は、価格交渉が有利に進む可能性が高まります。
利益目標の設定:各工事案件ごとに、具体的な粗利益目標を設定し、営業部門と現場部門が一体となってその達成を目指す体制を構築しましょう。

原価管理の徹底とコスト削減

工事の原価を詳細に分析し、無駄なコストを徹底的に削減することが重要です。資材費、労務費、外注費など、費目ごとに改善の余地がないか検討しましょう。

実務イメージ
資材費
:複数の仕入れ先から相見積もりを取り、価格交渉を粘り強く行いましょう。また、共同購入や大量購入による割引、あるいは汎用品への切り替えなども検討できます。適切な在庫管理で、資材のロスを減らすことも重要です。
労務費:作業効率の向上や、残業時間の削減など、生産性を高める取り組みが必要です。適切な人員配置や、多能工化を進めることも有効です。
外注費:複数の協力会社から見積もりを取り、適正価格で発注する。長期的な視点で信頼できる協力会社とパートナーシップを構築し、共同でコスト削減に取り組むことも可能です。
重機・車両費:リースと購入の比較検討、燃費の良い車両への切り替え、アイドリングストップの徹底など、細かな点にも目を向けましょう。
実行予算の厳格な運用:工事開始前に詳細な実行予算を組み、実績との差異を常にチェックし、乖離があれば速やかに原因を究明し対策を講じる体制を構築しましょう。工事途中の予実管理を徹底することで、手遅れになる前に対応できます。

対策2:総資本(資産)の効率的な活用

総資本売上総利益率の分母である「総資本(総資産)」を効率的に活用することも重要です。無駄な資産を抱え込まず、スリムな経営を目指しましょう。

固定資産の効率化

不要な固定資産は売却し、賃借に切り替えることも検討しましょう。例えば、自社で所有している重機や車両をリースに切り替えることで、多額の初期投資を抑え、資産を圧縮することができます。これにより、総資産が減少し、同じ粗利益額でも総資本売上総利益率が向上します。

実務イメージ
現在保有している重機や車両で、使用頻度が低いものや、型が古く維持費がかさむものがないか確認しましょう。もしあれば、売却してその資金を有利子負債の返済に充てるか、運転資金に回すことを検討します。必要な機材は、必要な時だけレンタルやリースで調達することで、自社資産をスリム化できます。

流動資産の適正化

売掛金や在庫などの流動資産も、過剰に抱え込むと資金が滞留します。これらを適正な水準に保つことが、資産の効率的な活用に繋がります。

実務イメージ

  • 売掛金:前述の通り、回収サイトの短縮や回収強化によって、売掛金の滞留期間を短縮します。
  • 棚卸資産(在庫):過剰な資材のストックは資金を拘束し、劣化や陳腐化のリスクも伴います。適切な発注管理と在庫管理によって、在庫水準を最適化しましょう。

3. 営業キャッシュフローと利益剰余金について:長期的な視点での取り組み

「営業キャッシュフロー」や「利益剰余金」は、企業の継続的な収益力や財務基盤の強さを示す重要な指標です。これらは、売上高や利益を積み重ねることで徐々に増えていくものであり、一朝一夕に大きく改善することは難しいのが実情です。

しかし、これらの指標もY点に影響を与えるため、中長期的な視点で改善に取り組むことが不可欠です。

営業キャッシュフロー

本業で稼ぐ現金の力を示す指標です。売上を上げ、原価を抑え、適切な回収・支払サイクルを確立することが、営業キャッシュフローの増加に繋がります。前述の「粗利益率の向上」や「運転資金の効率化」は、結果的に営業キャッシュフローの改善にも貢献します。

実務イメージ
毎月の資金繰り表を作成し、現金の流れを「見える化」しましょう。入金予定と支払予定を正確に把握し、資金ショートを防ぐだけでなく、どのタイミングでどれだけの資金が生まれているかを把握することで、投資や借入金返済の計画を立てやすくなります。

利益剰余金

これまでの利益の蓄積であり、会社の内部留保を示す指標です。利益を出し続け、それを配当や役員報酬などで過度に取り崩さずに内部に留保することで増加します。

実務イメージ
短期的な利益追求だけでなく、中長期的な事業計画に基づいた利益目標を設定し、着実に達成していくことが重要です。節税対策も重要ですが、過度な節税は利益剰余金の蓄積を妨げる可能性もあります。税理士と相談しながら、会社にとって最適な利益水準と節税策を検討しましょう。


Y点改善のための体制作りと継続的な取り組み

Y点の改善は、一度行えば終わりではありません。継続的な取り組みと、社内全体の意識改革が不可欠です。

1. 財務状況の見える化と目標設定

自社の経審点数やY点の現状を正確に把握し、どこに改善の余地があるのかを定期的に分析しましょう。そして、具体的な改善目標を設定し、全社で共有することが重要です。

月次・四半期ごとの試算表チェック

経審の点数は年に一度の決算で決まりますが、日々の経営状況を把握するために、月次や四半期ごとに試算表を作成し、Y点に影響を与える各指標の変動をチェックしましょう。

目標点数の設定

「来期の経審でY点を〇点アップさせる」「純支払利息比率を〇%に下げる」といった具体的な目標を設定し、そのために何をするべきかを明確にします。

2. 社内での意識統一と情報共有

経審の点数改善は、経営者だけでなく、経理、営業、現場の各部門が連携して取り組むべき課題です。各部門の役割と目標を明確にし、情報共有を密に行うことで、より効果的な改善に繋がります。

定期的な会議の開催

財務状況や経審の進捗について、定期的に各部門の担当者が集まり、情報交換や課題共有を行う会議を開催しましょう。

社員への啓発

「なぜY点改善が必要なのか」「自分の仕事がY点にどう影響するのか」を社員に分かりやすく説明し、意識を高めることが重要です。例えば、原価削減の意識を高めるために、具体的なコスト削減事例を共有したり、表彰制度を設けたりすることも有効です。

3. 専門家との連携

行政書士や税理士、金融機関など、外部の専門家との連携も非常に有効です。

  • 行政書士:経審に関する最新情報の提供や、申請手続きのサポートはもちろん、貴社の財務状況を分析し、Y点改善に向けた具体的なアドバイスを提供できます。
  • 税理士:適切な会計処理や税務戦略によって、利益を最大化し、利益剰余金の積み増しをサポートします。
  • 金融機関:低金利融資の提案や、資金繰りに関するアドバイスなど、財務面からのサポートが期待できます。

まとめ:Y点改善は未来への投資

経審Y点の改善は、単に点数を上げるためだけではありません。それは、 会社の財務体質を強化し、収益性を高め、将来にわたる持続的な成長を実現するための「未来への投資」 です。

中小建設会社にとって、日々の業務に追われる中で、こうした経営改善に取り組むことは容易ではないかもしれません。しかし、今回ご紹介した「純支払利息比率」と「総資本売上総利益率」は、比較的取り組みやすく、かつY点への寄与度も高い指標です。

まずは、自社の現状を正確に把握し、できるところから一歩ずつ改善策を実行してみてください。そして、困った時は迷わず、私たち行政書士のような専門家にご相談ください。貴社の経審Y点改善、ひいては事業発展のために、全力でサポートさせていただきます。

ご案内

建設業許可の取得・更新・業種追加などでお困りではありませんか?
「手続きが複雑でわかりにくい」「更新期限が迫っている」「元請から許可番号を求められているのに準備が間に合わない」――そんなときは専門家にお任せください。

つむぎ行政書士事務所では、
茨城県全域(水戸・ひたちなか・那珂・笠間・つくば など)を対象に、建設業許可の新規申請・更新・業種追加・経審への対応まで一貫してサポートしています。

まずは現在の状況と期限だけお知らせください。
「対応できるか」「いつまでに何を準備すべきか」「おおまかな費用感」をお伝えいたします。
この時点では正式なご依頼にはなりませんのでご安心ください。
初回のご相談は無料です。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次