高市政権が進める裁量労働制の拡大 中小企業はどう備えるか

約40年ぶりとなる労働基準法の大幅な改正案に向けた議論が進められています。2026年中の労働基準法改正案の提出はいったん見送られたと報じられていますが、労働時間規制をめぐる議論が終わったわけではありません。
勤務間インターバル、つながらない権利、14連勤問題、名ばかり管理職など、これまで議論されてきたテーマに続き、今度は裁量労働制の見直しが改めて注目されています。
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で定めた時間を働いたものとみなす制度です。
うまく使えば、専門性の高い人材が自分の裁量で働きやすくなる制度です。
しかし一方で、制度の趣旨を誤って使えば、長時間労働や未払い残業代、従業員の健康問題につながるおそれもあります。
特に中小企業にとって注意したいのは、裁量労働制が「残業代を減らすための制度」と誤解されやすい点です。
この記事では、裁量労働制の見直しをめぐる政府・経団連・連合の動きを整理しながら、中小企業が今から確認しておきたい労務管理上のポイントを解説します。
労基法改正案は見送りでも、労働時間規制の議論は続いている
当サイトではこれまで、2026年労基法改正に関連する論点として、勤務間インターバル、つながらない権利、14連勤問題、名ばかり管理職、労働時間規制緩和などについて整理してきました。
関連記事として、以下の記事もあわせてご覧ください。
今回の裁量労働制の見直しは、これらの議論と切り離された話ではありません。
むしろ、労働時間規制をどう考えるかという大きな流れの中で、「働く時間をどこまで会社が管理するのか」、「成果や専門性に応じた働き方をどこまで認めるのか」という問題が、改めて浮かび上がっているといえます。
裁量労働制とは何か

裁量労働制とは、業務の性質上、仕事の進め方や時間配分を大幅に労働者本人の裁量に委ねる必要がある場合に、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。
たとえば、実際には9時間働いた日でも、労使で定めたみなし時間が8時間であれば、労働時間は8時間と扱われます。
逆に、実際には6時間で仕事を終えた日でも、同じく8時間働いたものと扱われます。
ただし、ここで大切なのは、裁量労働制はどのような仕事にも使える制度ではないということです。
現在の裁量労働制には、大きく分けて次の2種類があります。
1つ目は、専門業務型裁量労働制です。
研究開発、システムエンジニア、デザイナー、コピーライター、公認会計士、弁護士、税理士、M&Aアドバイザーなど、一定の専門業務が対象とされています。
2つ目は、企画業務型裁量労働制です。
企業の事業運営に関する企画、立案、調査、分析などの業務について、労働者本人に大きな裁量がある場合に使われる制度です。
経団連の資料でも、裁量労働制は「業務の性質上、その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務」に使う制度であり、導入にあたっては労使協定や労使委員会の決議、健康・福祉確保措置、本人同意、同意撤回手続などが必要とされています。
つまり、裁量労働制は、会社が労働時間管理を手放す制度ではありません。
「裁量労働制にすれば残業代を気にしなくてよい」
「本人に任せていることにすれば、細かい管理はいらない」
「とりあえず企画っぽい仕事だから対象にできる」
このような理解は危険です。
政府が裁量労働制の見直しを進める背景
高市首相は、2026年2月20日の施政方針演説の中で、働き方改革の総点検を踏まえ、裁量労働制の見直し、副業・兼業時の健康確保措置の導入、テレワークなど、柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進めると述べています。

この流れから見ると、政府側の狙いは、単に労働時間制度を緩めたいというだけではなく、専門性の高い人材や時間で一律に管理しにくい業務について、より柔軟な働き方を広げたいというものだと考えられます。
たとえば、次のような狙いです。
- 専門人材が自律的に働ける環境を整える
- DX、AI、新規事業開発など、時間管理になじみにくい仕事に対応する
- 成果や創造性を重視する働き方を広げる
- 生産性を高め、賃上げにつなげる
- 人手不足の中で、労働力をより有効に活用する
政策目的としては、前向きな面があります。
しかし、ここで注意したいのは、「柔軟な働き方」と「長時間労働になりやすい働き方」は紙一重だという点です。
本人に本当に裁量があり、仕事の進め方や時間配分を自分で決められるのであれば、裁量労働制は働きやすさにつながる可能性があります。
一方で、業務量も納期も会社が決め、上司の指示通りに働き、実際には長時間労働になっているにもかかわらず、制度上だけ「裁量がある」とされるのであれば、それは柔軟な働き方とはいえません。
経団連が対象業務拡大を求める理由
経団連は、裁量労働制の拡充を求める提言を公表しています。
その中では、柔軟で自律的な働き方をさらに広げるため、裁量労働制の対象業務を拡大する必要があるという考え方が示されています。
経団連が追加を求めている業務としては、たとえば次のようなものがあります。
- 裁量労働制の対象とならない業務が一部混在する業務
- 課題解決型提案業務
- シェアードサービス業務
特に注目されるのが、課題解決型提案業務です。
経団連は、特定の顧客向けの商品・サービスを企画、立案、調査、分析し、それに基づいて開発・提案まで行う業務について、裁量労働制の対象に加えることを求めています。ただし、単なる商品販売のみを行う営業所で働く場合は含まれないとしています。
つまり、すべての営業職を裁量労働制にしたいというより、顧客の課題を分析し、解決策を企画・提案するような、いわゆるソリューション型の業務を想定していると考えられます。
また、シェアードサービス業務についても、単なる定型的な事務処理ではなく、グループ会社の人事や経営に関する企画・立案・調査・分析を行うような業務を対象にすべきだとしています。
経団連側の主張を中立的に整理すると、こうなります。
近年は、AI、DX、新規事業開発、コンサルティング型営業、グループ経営管理など、労働時間の長さだけでは成果を測りにくい仕事が増えています。
そのため、従来のように「何時から何時まで働いたか」を中心に管理する制度だけでは、現場の働き方に合わない場面がある、という考え方です。
この点自体は、理解できる部分があります。
ただし、問題は、その制度を中小企業の現場で適切に運用できるかどうかです。
制度の建前はきれいでも、現場での使われ方が雑だと、きれいな制度が一気に危ない道具になります。包丁と同じです。料理にも使えますが、振り回すものではありません。
連合が対象業務拡大に反対している理由
一方で、労働団体の連合は、裁量労働制の対象業務拡大や要件緩和に反対する姿勢を示しています。
報道によれば、連合は2026年5月18日、裁量労働制の対象業務拡大や導入要件の緩和に反対する要請を厚生労働大臣に行っています。要請では、長時間労働を助長しかねない対象業務の安易な拡大や要件緩和を行うべきではないこと、勤務間インターバル制度の義務化などが求められています。

連合側の懸念は、主に次の点にあります。
- 裁量労働制のもとで長時間労働が見えにくくなる
- 本人に十分な裁量がないまま制度だけ適用される
- みなし労働時間と実際の労働時間が大きくずれる
- 残業代削減の手段として使われるおそれがある
- 健康確保措置が形だけになる
- 休息時間や生活時間が削られる
特に中小企業に関係が深いのは、本人に裁量があるように見えて、実際にはあまり裁量がないというケースです。
たとえば、次のような働き方です。
- 出勤時刻も退勤時刻も実質的に決まっている
- 上司から毎日細かく指示を受けている
- 業務量や納期を自分で調整できない
- 顧客対応の時間も会社の都合で決まる
- 休日や夜間にも対応を求められる
- 成果責任だけ重く、権限や処遇は伴っていない
このような状態で裁量労働制を導入すると、従業員から見れば「裁量」ではなく「責任だけ重い働き方」になってしまいます。
裁量労働制という名前なのに、裁量がない。これはかなり本質的な問題です。

厚生労働省は実態調査を予定している
現時点で、裁量労働制の対象業務拡大が正式に決まったわけではありません。
厚生労働省は、2026年5月13日に開催された労働政策審議会労働条件分科会で、「裁量労働制に関する実態調査案」を資料として示しています。
つまり、今後の制度見直しに向けて、まずは実際に裁量労働制がどのように運用されているのか、労働者にどの程度の裁量があるのか、長時間労働や健康確保措置の実態はどうか、といった点を把握していく段階だと考えられます。
労働時間規制の見直しは、形を変えながら続いています。
中小企業としては、法改正が決まってから慌てるのではなく、今のうちに自社の働き方や労務管理を点検しておくことが現実的です。
中小企業が特に注意すべきポイント
裁量労働制の見直し議論は、すぐにすべての中小企業に直接影響するものではないかもしれません。
しかし、議論の方向性を見ると、中小企業が今から確認しておきたいポイントはかなりあります。

1. 対象業務に本当に該当するか
まず確認すべきなのは、その業務が本当に裁量労働制になじむ業務かどうかです。
「企画」「提案」「コンサルティング」「プロジェクト」などの言葉が入っていれば、何でも対象になるわけではありません。
たとえば、営業職であっても、定型的なルート営業や、会社が決めた手順どおりに商品を販売する業務は、裁量労働制になじみにくいと考えられます。
一方で、顧客の課題を分析し、提案内容を設計し、実行方法まで自分で考えるような業務であれば、裁量性があると評価される余地があります。
大事なのは、職種名ではなく実態です。
「営業部だから対象外」
「企画部だから対象」
という単純な話ではありません。
2. 本人に実質的な裁量があるか
裁量労働制で最も重要なのは、本人に実質的な裁量があるかどうかです。
具体的には、次のような点を確認する必要があります。
- 業務の進め方を本人が決められるか
- 時間配分を本人が決められるか
- 上司から細かい指示を受け続けていないか
- 業務量や納期について一定の調整余地があるか
- 成果を出すための方法を本人が選べるか
ここが弱いと、制度としてかなり危うくなります。
「裁量労働制です」と言いながら、毎朝9時に出社し、上司から細かく指示され、夜遅くまで残っているのであれば、それは裁量労働制というより、ただの長時間労働になりかねません。
3. 本人同意が形だけになっていないか
裁量労働制を適用するには、本人同意が重要になります。
しかし、中小企業では、同意が形式的になってしまうリスクがあります。
たとえば、次のような状態です。
- 入社時に詳しい説明なく同意書を書かせている
- 断ったら評価が下がりそうな雰囲気がある
- 制度内容を本人が理解していない
- 同意を撤回できることを説明していない
- 書類はあるが、実態として選択の余地がない
これでは、同意があっても実質的な同意とは言いにくくなります。
従業員から見て「断れる雰囲気があるか」は、非常に大事です。
ここがないと、紙の上では同意、心の中では不同意、という非常に扱いづらい状態になります。
4. 労働時間の状況を把握しているか
裁量労働制についてよくある誤解が、労働時間を管理しなくてよいというものです。これは危険です。
裁量労働制でも、健康確保の観点から、実際にどの程度働いているのかを把握する必要があります。
つまり、裁量労働制だからといって、
- タイムカード不要
- 勤怠記録不要
- 深夜労働も把握しない
- 休日の作業も見ない
という運用は危険です。
特に、深夜労働や休日労働が発生している場合には、割増賃金や健康管理の問題も出てきます。
「裁量労働制だから全部込み」という雑な運用は避ける必要があります。
5. 長時間労働を防ぐ仕組みがあるか
裁量労働制を導入する場合、長時間労働を防ぐ仕組みが不可欠です。
たとえば、次のようなルールです。
- 一定時間を超えた場合の上司へのアラート
- 深夜・休日労働の事前承認
- 定期的な面談
- 産業医や外部専門家との連携
- 業務量の見直し
- 休暇取得状況の確認
- 勤務間インターバルの確保
裁量労働制は、本人に任せる制度です。
しかし、本人に任せることと、会社が放置することは違います。
むしろ、本人に裁量を与えるからこそ、会社は健康状態や業務量を丁寧に見ていく必要があります。
「任せているから見ない」は、経営者側からすると楽に見えるかもしれません。
しかし、問題が起きたときには「なぜ見ていなかったのか」と問われます。
6. 賃金・評価制度とバランスが取れているか
裁量労働制は、働き方だけを変えればよい制度ではありません。
賃金制度や評価制度とのバランスも重要です。
裁量労働制を導入した結果、従業員から次のように見えてしまうと、不満が生まれます。
- 責任は重くなった
- 労働時間は長くなった
- 残業代は見えにくくなった
- でも給与はあまり変わらない
- 評価基準もあいまい
これでは、従業員の納得感は得られません。
裁量労働制を検討するなら、評価基準、成果の見方、処遇、手当、昇給の考え方もセットで整理する必要があります。
「裁量を与える」のであれば、「処遇もそれに見合っているか」を考える必要があります。
中小企業で起こりやすい危険な運用例
ここで、中小企業で起こりやすい危険な運用例を整理しておきます。
危険な運用例1:企画職だから全員対象にする
「企画」「マーケティング」「営業企画」などの部署名だけを見て、まとめて裁量労働制の対象にするのは危険です。
同じ部署の中にも、本当に裁量が大きい人と、上司の指示に従って資料作成や定型業務をしている人がいます。
制度の対象になるかどうかは、部署名ではなく、実際の業務内容で判断する必要があります。
危険な運用例2:残業代削減目的で導入する
裁量労働制を「残業代を減らすための制度」として導入するのは、最も危険なパターンです。
もちろん、みなし労働時間制である以上、通常の時間管理とは異なる部分があります。
しかし、制度の本来の目的は、専門性や裁量性の高い業務に合った働き方を認めることです。
残業代削減だけが目的になると、従業員の不信感が強まり、トラブルの火種になります。
危険な運用例3:勤怠管理をやめる
裁量労働制を導入した途端、勤怠管理をやめてしまう会社もあります。
これは避けるべきです。
健康管理、深夜労働、休日労働、過重労働防止のためには、実際の労働時間の状況を把握する必要があります。
「制度を入れたから見なくてよい」ではなく、制度を入れたからこそ、健康管理の仕組みを整える必要があります。
危険な運用例4:業務量を見直さない
裁量労働制を導入しても、業務量が多すぎれば長時間労働になります。
本人に裁量があっても、仕事の量が明らかに多ければ、結局は夜遅くまで働くしかありません。
裁量労働制を導入する前に、そもそも業務量が適正か、人員配置が適正か、納期設定に無理がないかを確認する必要があります。
危険な運用例5:評価制度があいまいなまま導入する
裁量労働制では、時間ではなく成果や役割を見る場面が増えます。
しかし、評価制度があいまいなままだと、従業員は何を目指せばよいのか分かりません。
成果を求めるなら、評価基準も明確にする必要があります。
裁量労働制を検討する前のチェックリスト
裁量労働制を導入するかどうか以前に、まずは次の点を確認しておくことをおすすめします。

このチェックリストを見て、「うちはまだ整っていない」と感じる場合、いきなり裁量労働制を導入するのはおすすめしにくいです。
まずは、通常の労働時間管理、残業管理、休日管理、評価制度の整備から始めた方が安全です。
裁量労働制より先に整えるべき労務管理の土台
中小企業にとって大切なのは、裁量労働制を導入するかどうかだけではありません。
むしろ、制度改正の有無にかかわらず、次のような労務管理の土台を整えることが先です。

1. 労働時間を正確に把握する
まずは、誰が、いつ、どれだけ働いているのかを把握することです。
タイムカード、勤怠システム、業務日報、PCログなど、方法はいろいろあります。
大切なのは、会社として労働時間の実態を説明できる状態にしておくことです。
2. 残業が多い部署・人を把握する
残業時間を集計すると、特定の部署や特定の人に仕事が集中していることが見えてきます。
この状態を放置したまま裁量労働制を導入すると、長時間労働が見えにくくなるだけです。
まずは、残業が多い原因を確認する必要があります。
3. 休日・連続勤務を確認する
14連勤問題や休日特定の議論とも関係しますが、休日がきちんと取れているかも重要です。
繁忙期だから仕方ない、少人数だから仕方ない、としているうちに、連続勤務が常態化している会社もあります。
制度改正を待つまでもなく、健康管理や離職防止の観点から見直しが必要です。
4. 勤務時間外の連絡ルールを決める
つながらない権利の議論とも関係しますが、退勤後や休日の連絡ルールも重要です。
チャット、LINE、メール、電話がいつでも飛んでくる状態では、従業員は休んでいるようで休めません。
緊急時の連絡は必要ですが、何が緊急なのかを決めておかないと、毎日が緊急になります。
5. 管理職の働き方も確認する
管理職だから労働時間を見なくてよい、という運用も危険です。
名ばかり管理職の問題だけでなく、管理職自身の健康管理も会社の重要な課題です。
部下の残業を減らした結果、管理職に仕事が集中しているというケースもあります。
これでは、問題が別の場所に移っただけです。
裁量労働制は「使えるか」より「使いこなせるか」
裁量労働制の対象業務が今後拡大されたとしても、すべての会社がすぐに使うべき制度になるわけではありません。
大切なのは、制度が使えるかどうかではなく、自社がその制度を使いこなせるかどうかです。
裁量労働制を適切に使うには、次のような前提が必要です。
- 対象業務の整理
- 本人への丁寧な説明
- 適切な同意手続
- 労働時間の状況把握
- 健康確保措置
- 評価制度の整備
- 業務量の管理
- 従業員との信頼関係
これらが整っていない状態で制度だけ導入すると、かえってリスクが大きくなります。
中小企業の場合、制度を導入すること自体よりも、まずは今の働き方を見える化することが大切です。
「誰がどれだけ働いているのか」
「どの業務に負担が集中しているのか」
「本当に裁量を持って働けているのか」
「責任と処遇のバランスは取れているのか」
こうした点を確認するだけでも、かなり多くの課題が見えてきます。
中小企業経営者が今からできること
現時点で裁量労働制の見直し内容は確定していません。
しかし、制度改正が決まってから慌てるよりも、今から少しずつ準備しておく方が安全です。
中小企業経営者が今からできることとしては、次のようなものがあります。

1. 自社の労働時間を見える化する
まずは、残業時間、休日出勤、深夜労働、連続勤務の実態を確認します。
数字を見ると、感覚とは違う実態が出てくることがあります。
「そんなに働かせていないと思っていた」
「この人だけ極端に残業が多い」
「繁忙期の休日出勤が当たり前になっている」
こうした気づきが、改善の出発点になります。
2. 業務内容と裁量の有無を整理する
次に、職種ごと、担当者ごとに、どの程度本人の裁量があるのかを整理します。
同じ「営業」でも、定型的な営業と課題解決型の提案営業では、働き方が異なります。
同じ「企画」でも、上司の指示に沿って資料を作る業務と、事業戦略を自ら立案する業務では、裁量の大きさが違います。
この整理は、裁量労働制を導入するかどうかに関係なく、人事評価や業務分担の見直しにも役立ちます。
3. 長時間労働の原因を確認する
長時間労働がある場合、その原因を確認します。
原因としては、たとえば次のようなものがあります。
- 人員不足
- 業務の属人化
- 顧客対応の偏り
- 納期設定の無理
- 管理職への業務集中
- 会議や報告資料の多さ
- 評価制度が長時間労働を助長している
原因を見ないまま制度だけ変えても、問題は解決しません。
むしろ、制度によって問題が見えにくくなることもあります。
4. 就業規則・社内ルールを確認する
裁量労働制に限らず、労働時間、休日、残業、深夜労働、勤務時間外連絡、テレワーク、副業・兼業などについて、社内ルールを確認しておくことも重要です。
就業規則が古いままになっている会社も少なくありません。
制度改正の議論が進んでいる今は、社内ルールを見直す良いタイミングです。
5. 必要に応じて専門家に相談する
裁量労働制は、労働基準法や労働安全衛生法などと深く関係する制度です。
そのため、実際に裁量労働制の導入を検討する場合には、対象業務の該当性、労使協定や労使委員会の手続、就業規則の整備、本人同意の取得方法、健康確保措置、労働基準監督署への届出などについて、社会保険労務士などの労務の専門家に相談することをおすすめします。
なお、本記事は、中小企業の経営者向けに、裁量労働制の見直し議論や労務管理上の注意点を一般的な情報として整理するものです。
具体的な労働社会保険関係法令に基づく書類作成、届出、提出代行、労務手続の代理等については、社会保険労務士の専門領域となります。
一方で、裁量労働制の議論は、単なる労務手続だけの問題ではありません。
業務の整理、人員配置、評価制度、賃金制度、生産性向上、離職防止、資金繰りなど、経営全体にも関係します。
そのため、中小企業としては、労務面については社会保険労務士に確認しつつ、経営面では自社の業務体制や収益構造もあわせて見直していくことが大切です。
裁量労働制を「使えるかどうか」だけで考えるのではなく、
自社の働き方や経営体制に本当に合っているか
という視点で検討することが重要です。
裁量労働制の議論から見える、中小企業へのメッセージ
今回の裁量労働制の見直し議論は、単に「対象業務が広がるかどうか」という話ではありません。
その奥には、これからの中小企業経営にとって重要な問いがあります。
- 長時間労働に頼らずに利益を出せるか
- 従業員が安心して働ける環境を作れているか
- 専門性の高い人材に見合った裁量と処遇を用意できているか
- 労働時間を減らしながら、生産性を高められるか
- 会社の成長と従業員の生活時間を両立できるか
政府や経済界は、柔軟な働き方や生産性向上を重視しています。
一方で、労働側は、長時間労働や健康被害への懸念を強めています。
この両方の視点は、中小企業にとってどちらも無視できません。
人手不足の中で、会社を成長させる必要があります。
しかし、従業員に無理をさせ続ければ、採用も定着も難しくなります。
これからの中小企業に求められるのは、単に「もっと働いてもらう」ことではありません。
限られた人員で、無理なく成果を出せる働き方を作ることです。
そのためには、労働時間の管理、業務の見直し、評価制度、休息時間の確保、管理職の役割整理などを、少しずつ整えていく必要があります。
裁量労働制の見直し議論は、そのきっかけとして見るべきです。
制度改正を待つ前に、まず自社の働き方を点検しましょう
裁量労働制の対象業務拡大は、現時点で正式に決まったものではありません。
しかし、労働時間規制をめぐる議論は今後も続いていくと考えられます。
労基法改正案が一度見送られたとしても、勤務間インターバル、つながらない権利、連続勤務、管理職の労働時間管理、裁量労働制の見直しといった論点は、形を変えながら再び議論される可能性があります。
中小企業として大切なのは、制度改正のニュースに振り回されることではありません。
まずは、自社の働き方を点検することです。
- 労働時間を把握できているか
- 長時間労働が一部の人に集中していないか
- 休日や休息時間が確保されているか
- 管理職に負担が偏っていないか
- 勤務時間外の連絡が常態化していないか
- 本人に裁量がある仕事と、そうでない仕事を整理できているか
- 責任と処遇のバランスが取れているか
こうした確認をしておくだけでも、今後の法改正や制度見直しに対応しやすくなります。
裁量労働制は、適切に使えば柔軟な働き方につながる制度です。
しかし、安易に使えば、長時間労働や労務トラブルの原因にもなります。
大切なのは、制度を都合よく使うことではなく、会社と従業員の双方にとって無理のない働き方を作ることです。
労働時間規制の議論は、少し難しく見えるかもしれません。
しかし、中小企業にとっては、採用、定着、生産性、利益率に直結する身近な経営課題です。
今のうちに働き方の土台を整えておくことが、結果として会社を守り、従業員を守り、これからの成長につながっていきます。
本記事は、裁量労働制の見直し議論について、中小企業の経営者向けに一般的な情報提供と経営上の注意点を整理したものです。
裁量労働制の具体的な導入、労使協定・労使委員会の手続、就業規則の整備、労働基準監督署への届出、その他労働社会保険関係法令に基づく書類作成・提出代行等については、社会保険労務士の専門領域となります。
実際に制度導入を検討される場合は、社会保険労務士などの専門家へご相談ください。
お問い合わせ
ご相談は、どんな段階でも大丈夫です。
「手続きの流れを知りたい」「自分のケースで進められるか確認したい」「期限までに間に合うかだけ聞きたい」といった内容だけでもお気軽にお知らせください。
つむぎ行政書士事務所では、茨城県全域(水戸市・ひたちなか市・県央エリアを中心に、つくば・土浦など県南エリア、日立など県北エリアも含めて対応)で、建設業許可・産業廃棄物収集運搬業許可などの許認可申請、創業支援、補助金・経営相談をお手伝いしています。
内容をうかがった上で、「対応可能か」「どのように進めるか」「おおまかな費用感」をご案内いたします。
この時点では正式なご依頼(契約)にはなりませんのでご安心ください。
初回のご相談は無料です。



