改正行政書士法19条「報酬」の考え方とは?日行連の通知を読み解く

令和8年6月4日、日本行政書士会連合会(日行連)は、「行政書士法第19条第1項の『報酬』の考え方について」と題する資料を取りまとめました。
令和8年1月1日に施行された改正行政書士法では、第19条第1項に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。行政書士又は行政書士法人でない者が、「手数料」「コンサルタント料」「会費」「商品代金」など、どのような名目であっても、対価を受け取って、業として官公署に提出する書類等を作成することはできないという趣旨が、より明確になったものです。
法改正の趣旨については、施行前の令和7年11月にも、日行連の会長談話において説明されていました。
しかし、今回の資料が特に注目されるのは、単に改正内容を説明しただけではなく、「手数料型」「本来業務対価一体型」「会費(サブスクリプション)型」という具体的な取引類型を挙げ、さらに紹介対価や行政書士側の受任方法にまで踏み込んで整理している点です。
公表資料として確認できる範囲では、令和8年1月1日の改正法施行後、日行連が「報酬」の該当性について、ここまで具体的な業務形態に踏み込んで示した実務資料は今回が初めてとみられます。
これは、単なる法改正のお知らせではありません。
「申請書作成料は取っていないから問題ない」
「コンサルティング契約の一部として無料で対応している」
「会員向けサービスなので個別料金は発生していない」
「許認可に詳しい行政書士を紹介しているだけである」
このような、実務上生じやすい説明に対し、料金の名目ではなく、実際の業務内容と対価関係を見て判断されることを、日行連が具体的に示した資料といえます。
では、なぜ日行連は、改正法の施行から約半年が経過したこの時期に、ここまで踏み込んだ整理を示したのでしょうか。
本記事では、今回の資料の内容を確認しながら、許認可や行政手続に関わる事業者、そして行政書士に求められる対応について考えてみます。
改正行政書士法第19条で明確になったこと
行政書士法第19条第1項は、行政書士又は行政書士法人でない者について、業として行政書士の独占業務を行うことを制限する規定です。
改正後の条文では、行政書士又は行政書士法人でない者は、
他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。
と定められています。
ここでいう法第1条の3に規定する業務には、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成などが含まれます。
そして、今回の改正で重要なのが、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言です。
たとえば、行政書士でない事業者が、顧客に代わって許認可申請書類や届出書類を作成しているにもかかわらず、料金の名目を次のようにしていたとしても、それだけで問題を回避できるわけではありません。
- 事務手数料
- 代行料
- コンサルタント料
- 仲介手数料
- 媒介報酬
- 工事費
- 商品代金
- 会費
- 顧問料
- サブスクリプション利用料
受け取った金銭等の全部又は一部が、実質的に書類作成の対価であると認められる場合には、「報酬を得て」に該当し得るということです。
また、改正法では両罰規定も整備されました。法人の社員等が、その法人の業務に関して違反行為を行った場合、実際に書類を作成した本人だけでなく、その法人も罰金刑の対象となる場合があります。
無資格者が法第19条第1項に違反した場合、違反行為をした者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処される可能性があります。
つまり、許認可や行政手続に関わるサービスを提供する事業者にとって、この問題は担当者レベルの注意事項ではありません。サービス設計、料金体系、外部専門家との連携方法を含めた、法人全体のコンプライアンスの問題となります。
改正の背景にあった「名目を変えた有償代行」

日行連は、令和7年11月の会長談話において、法改正の背景の一つとして、コロナ禍における給付金等の代理申請を挙げています。
当時、行政書士又は行政書士法人でない者が、給付金等の申請書類を本人に代わって作成し、多額の報酬を受け取る事例が見られました。
もちろん、制度の概要を説明することや、一般的な相談に応じることまでが、直ちに行政書士法上の問題となるわけではありません。
しかし、実際に官公署へ提出する書類を顧客に代わって作成しながら、その対価を「申請書作成料」ではなく、「コンサルタント料」「成功報酬」「支援手数料」などとして受け取る場合には、料金名目だけを見て適法性を判断することはできません。
改正法は、こうした「名目を変えれば問題にならないのではないか」という誤解や抜け道を防ぐため、従来からの解釈を条文上明確にしたものです。
もっとも、法律に文言を追加しただけでは、実際の現場における判断が直ちに明確になるわけではありません。
現在の事業サービスは、単純な「書類作成代行」という形よりも、経営コンサルティング、開業支援、設備販売、会員向けサービス、外国人雇用支援、民泊運営支援などの一部として、行政手続への対応が組み込まれる形が増えています。
そのため、改正法施行後の実務では、
- どのようなサービス形態が問題となり得るのか
- 個別の書類作成料金を取らなければ問題はないのか
- 会費や顧問料の中で対応する場合はどうなるのか
- 行政書士を紹介する形であれば問題はないのか
といった、より具体的な境界整理が必要になります。
今回の日行連資料は、まさにこの部分に踏み込んだものです。
施行後初めて、具体的な取引類型にまで踏み込んだ意味
今回の資料を読むうえでは、「行政書士法第19条の考え方が、今回初めて示されたわけではない」という点にも注意が必要です。
令和7年11月の日行連会長談話では、改正法について、無資格者が「会費」「手数料」「コンサルタント料」「商品代金」等の名目で対価を収受し、業として官公署提出書類等を作成する行為が違反となることを明確にする趣旨であると説明されていました。
つまり、名目を変えても、実質的に書類作成の対価であれば問題となり得るという基本姿勢は、施行前から示されていました。
しかし、今回の資料は、そこからさらに一歩進んでいます。
問題となり得る対価のあり方について、次の三つの具体的類型に分けて整理しました。
- 「手数料」「代行料」などの名目で料金を受け取る手数料型
- 本来業務の報酬や商品代金の中に書類作成が組み込まれる本来業務対価一体型
- 「会費」「組合費」「顧問料」などを支払った利用者に書類作成を提供する会費(サブスクリプション)型
さらに、今回の資料は、無資格者側の料金体系だけでなく、事業者が行政書士を紹介する場合の紹介対価や、行政書士が顧客から直接依頼を受けるべきことにまで言及しています。
この点から見ると、今回の資料は、改正法の趣旨を説明する段階から、実際のサービス内容や業務提携のあり方を点検する段階へ移ったことを示すものと考えられます。
違反が疑われる事案への対応を見据えたものという側面はあるでしょう。
一方で、それだけではなく、関係事業者や行政書士に対して、事前に業務フローを確認し、適法な役割分担へ見直すよう促す意味も大きいと考えられます。
日行連資料が示した三つの「報酬」類型
1.手数料型

第一の類型は、事業者が顧客に代わって申請書や届出書等を作成し、その対価を「手数料」「代行料」などの名目で徴収するケースです。
たとえば、許認可が必要な事業の開業支援を行う会社が、顧客から必要事項を聞き取り、顧客に代わって申請書類を作成しながら、料金表上は「申請書作成費」ではなく「事務手数料」として費用を受け取るような場合です。
この場合、名目が「手数料」であっても、実質的に書類作成という役務への対価であれば、行政書士法第19条第1項の「報酬を得て」に該当し得ます。
今回の資料では、事業者が自ら関与する取引関係から派生する手続であったとしても、顧客に代わって官公署提出書類等を作成することは認められず、当該書類作成業務については、行政書士に現実に委任する必要があると整理されています。
つまり、「当社の商品を買ったお客様のために、付随手続として対応しているだけです」という事情があったとしても、顧客に代わって対象書類を作成することまで当然に許されるわけではありません。
2.本来業務対価一体型

第二の類型は、事業者の本来業務の報酬や商品代金の中に、行政手続に関する書類作成が組み込まれているケースです。
今回の資料では、この類型に関連する事業者として、次のような業種が例示されています。
- 不動産業関連事業者
- 各種コンサルタント業
- 各種設備機器等の販売・設置業
- 国際業務の代行業
たとえば、次のような場合が考えられます。
- 民泊開業支援会社が、開業コンサルティングの一環として届出書類まで作成する
- 設備販売会社が、設備の導入に必要な許認可書類を顧客に代わって作成する
- 不動産関連事業者が、取引や運用支援に付随して行政手続の書類まで作成する
- 外国人雇用支援事業者が、支援サービスの一環として在留資格関係の提出書類を作成する
- 経営コンサルティング会社が、許認可申請書類を「サービス」として作成する
このような場合、顧客から受け取る金銭は、「仲介手数料」「媒介報酬」「コンサルタント料」「設置工事費」「相談費用」「商品代金」などの名目になっているかもしれません。
しかし、書類作成が本来業務と一体となって提供され、受領する金銭の全部又は一部が書類作成の対価と評価される場合には、「報酬を得て」に該当し得ます。
特に注意したいのは、「書類作成については無料です」と説明していたとしても、それだけで安全になるわけではないという点です。
有償の本体サービスを契約した顧客だけが書類作成を受けられる場合や、書類作成を含むことがサービスの魅力の一部となっている場合には、書類作成と対価との間に実質的な関係が認められる可能性があります。
「無料」という言葉は、ときに料金表の上だけで無料です。法律上は、サービス全体の中で何が提供され、何に対してお金が支払われているのかが見られます。
3.会費・サブスクリプション型

第三の類型は、会費、組合費、顧問料、サブスクリプション利用料などを支払った会員や利用者に対し、書類作成サービスを提供するケースです。
たとえば、次のような形が考えられます。
- 業界団体が、会員向けに許認可更新書類を作成する
- 会員制の開業支援サービスが、加入者向けに申請書類を作成する
- 月額制の事業者支援サービスが、利用者の届出書類を作成する
- 顧問料を受け取る事業者が、顧問先の許認可関係書類を作成する
この場合、申請の都度、個別に書類作成料を請求していないこともあります。
しかし、会費や利用料を支払った者だけが書類作成サービスを利用できるのであれば、その会費等の一部が書類作成の対価とみなされる可能性があります。
今回の資料では、過去に、会費を徴収する団体が会員のために官公署提出書類を作成していた事例について、個々の書類作成業務で現実に報酬を得ていなくても、業務全体として報酬を得ているとみられる場合には「報酬を得て」に該当するという考え方が確認されています。
サブスクリプション型のサービスが一般化した現在、この整理は決して古い問題ではありません。
むしろ、「個別料金は取らず、月額サービスの中に各種支援を組み込む」という事業モデルが増えているからこそ、今回あらためて明示する意味があったと考えられます。
なぜ施行直後ではなく、約半年後の今だったのか
今回の資料が令和8年6月に示されたことにも、意味があるように思われます。
施行前の段階では、まず、法改正の趣旨を広く周知する必要がありました。日行連は令和7年11月の会長談話において、無資格者による書類作成の問題や、両罰規定の整備について説明しています。
その後、令和8年1月1日に改正法が施行されました。施行後には、行政書士業界の外側でも、改正法を踏まえた注意喚起が見られるようになりました。
たとえば、一般社団法人日本環境測定分析協会は、令和8年1月に会員向けの情報提供を行い、無資格者による官公署提出書類作成について、誤解や抜け道が生じないよう条文上明確化されたこと、法人業務として違反が行われた場合に両罰規定が整備されたことを案内しています。
つまり、施行直後は、「法律が変わったことを知ってもらう段階」でした。
しかし、一定期間が経過すると、次に問題になるのは、各事業者のサービスや契約が、実際に改正法との関係で問題を抱えていないかという点です。
- コンサルティング会社が、どこまで顧客の申請を支援できるのか
- 設備販売や不動産取引に付随して、どこまで手続対応ができるのか
- 会員向けサービスに書類作成を含めてよいのか
- 専門家紹介と紹介料の境界はどこにあるのか
- 顧客と行政書士の契約・連絡関係はどう設計すべきか
このような実務上の疑問に対しては、「報酬は名目を問いません」という条文の説明だけでは十分ではありません。
どのような事業形態が問題となり得るのかを、類型として示す必要があります。
今回の日行連資料は、改正法の周知段階から、具体的な業務点検・運用段階へ移ったことを示す資料と考えることができます。
また、今後、関係団体への説明や、問題が疑われるサービスへの対応を進めるにあたって、各都道府県行政書士会や行政書士が共通して用いることのできる説明材料を整備する意味もあったのではないでしょうか。
補助金コンサルティングとの境界整理も背景にあるのか

今回の資料を考えるうえで、補助金活用支援に関する動きも無視できません。
令和7年10月、経済産業省のグレーゾーン解消制度において、「補助金活用型経営コンサルティングの提供」に関する総務省回答が公表されました。
この事例では、コンサルティング事業者が、補助金制度の調査、顧客へのヒアリング、市場調査、競合分析、収益計画等の整理、事業計画策定に関する助言などを行う一方で、最終的な申請書類の作成及び提出は、顧客本人が自らの責任と操作により行うことが前提とされていました。
これについて、総務省は、コンサルティング事業者の業務が、顧客による書類作成のための基礎又は参考となる個別資料の提供にとどまる限り、行政書士法上の官公署提出書類の作成には当たらないと考えられる旨を回答しています。
一方で、官公署提出書類を作成できるのは、顧客本人又は行政書士若しくは行政書士法人に限られることを、顧客に対して明確に案内することも求められています。
この整理は、経営コンサルティングや事業計画支援そのものを否定するものではありません。
事業者の経営状況を分析すること、補助金制度を案内すること、投資計画や収益計画について助言すること、顧客自身が作成する事業計画の内容を検討することは、適法に行い得る支援です。
しかし、「コンサルティング」と称しながら、実際には顧客に代わって官公署へ提出する書類そのものを作成する場合には、別の問題が生じます。
今回の日行連資料で、コンサルタント料を含む「本来業務対価一体型」が具体的に取り上げられた背景には、適法な経営支援と、無資格者による書類作成との境界を、改正法施行後の実務においてより明確にしておく必要があったことも影響しているのではないでしょうか。
紹介料や業務提携にも踏み込んだ理由

今回の資料で特に注目したいのは、無資格者が自ら書類を作成する場面だけでなく、周辺事業者と行政書士との紹介関係にまで言及していることです。
資料では、事業者が、必要な許認可申請や届出等に精通した行政書士を顧客に紹介すること自体は妨げられないとしています。
顧客にとって、必要な専門家に速やかにつながることは有益です。また、民泊、建設業、外国人雇用、事業承継、補助金活用などの分野では、一つの専門職だけで支援が完結しない場面も少なくありません。
したがって、事業者と行政書士が適正に連携すること自体は、むしろ望ましい場合があります。
しかし、資料は同時に、紹介元の事業者が行政書士に対して顧客紹介の対価を要求することについて、行政書士倫理との関係で疑義を生ずる余地があるため、避けるべきであると整理しています。
また、行政書士側についても、
- 顧客と行政書士との間の直接の連絡を確保すること
- 顧客から直接依頼を受けること
- 紹介を受けた対価を依頼者への報酬に上乗せしないこと
- 自ら依頼者を紹介したことについて対価を要求しないこと
が求められるとしています。
ここには、二つの問題意識があると考えられます。
一つは、紹介料を前提とした提携が広がると、行政書士業務が事業者による顧客囲い込みの一部になり、依頼者が誰に何を依頼しているのか分かりにくくなることです。
もう一つは、表面的には行政書士が書類を作成していたとしても、実質的には周辺事業者が受任や料金を支配する形になれば、適正な受任関係が損なわれるおそれがあることです。
適正な専門家連携と、紹介料ビジネスや名義貸しに近い関係は、同じものではありません。
今回の資料は、無資格者側に対する警告であると同時に、行政書士自身にも、連携方法を慎重に設計するよう求める内容となっています。
民泊・建設業・外国人支援などにも影響する可能性
今回の日行連資料は、補助金やコンサルティングだけに関係するものではありません。
許認可や行政手続が関係するさまざまなサービスで、同じような問題が生じる可能性があります。

民泊・宿泊事業の開業支援
民泊の開業支援では、物件選定、収支計画、消防対応、清掃体制、駆け付け体制、運営代行など、多様な支援が一体で提供されることがあります。
その中で、報酬を受け取る開業支援会社や管理関連事業者が、顧客に代わって住宅宿泊事業の届出書類や住宅宿泊管理業の登録関係書類まで作成している場合には、行政書士法との関係を慎重に確認する必要があります。
事業計画や運営体制について助言することと、顧客に代わって官公署提出書類を作成することは、同じではありません。
建設業・産業廃棄物関連事業
建設業者や産業廃棄物処理業者向けには、許可管理、更新時期の案内、経営事項審査への対応支援、顧問サービスなどが提供される場合があります。
必要書類の案内や制度の説明にとどまるのか、それとも顧客に代わって申請書類を作成しているのかにより、法的な位置付けは異なります。
特に、会費や顧問料を受け取りながら、会員や顧問先のために許認可関係書類を作成する形は、今回示された会費・サブスクリプション型との関係で点検が必要です。
外国人雇用・国際業務支援
外国人雇用の分野では、人材紹介会社、登録支援機関、生活支援サービス事業者などが、受入れ企業や外国人本人を支援する場面があります。
しかし、生活支援、通訳、就労環境の整備、相談対応などと、在留資格申請に関する提出書類の作成とは、明確に区別しなければなりません。
国際業務の代行業が今回の資料の例示に含まれていることからも、日行連がこの分野を実務上の重要な論点として見ていることがうかがえます。
自動車登録関係
自動車販売、整備、運送事業支援などの分野でも、車庫証明や登録関係の手続が、本体サービスと一体で扱われることがあります。
ただし、自動車関係手続については、行政書士法第19条ただし書及び施行規則により、一定の電子申請手続について例外が設けられています。
したがって、自動車手続に関しては、手続の種類、電子申請かどうか、取り扱う団体が総務省令で定められた者に該当するかなどを確認せずに、一律に適法又は違法と判断することは適切ではありません。
事業者が確認すべきなのは、サービス名ではなく実際の業務内容

今回の資料を受けて、許認可や行政手続に関わるサービスを提供している事業者は、自社のサービス内容を改めて点検することが望まれます。
その際に確認すべきなのは、料金表の名称だけではありません。
たとえば、次のような点を確認する必要があります。
- 顧客に代わって官公署提出書類等を作成していないか
- 「無料サービス」として行っている書類作成が、有償契約の利用者だけに提供されていないか
- コンサルタント料、商品代金、工事費、仲介手数料等の中に、実質的に書類作成の対価が含まれていないか
- 会費、顧問料、サブスクリプション利用料を支払った者に対してのみ書類作成を提供していないか
- 行政書士を紹介する場合に、紹介料その他の対価を求めていないか
- 顧客が行政書士と直接連絡し、直接依頼できる関係になっているか
重要なのは、「申請代行という名前ではないから問題ない」と考えないことです。
法的に問題となるかどうかは、サービスの名称よりも、実際に誰が書類を作成しているのか、どのような金銭が支払われているのか、その金銭と書類作成との間に実質的な対価関係があるのかによって判断されます。
また、自社で判断が難しい場合には、業務を開始してから問題が発覚するよりも、サービス設計や契約書、料金体系を検討する段階で、専門家に確認しておく方が安全です。
適正な専門家連携まで否定されるものではない
行政書士法の業務制限について説明すると、周辺事業者と行政書士の連携まで難しくなるように感じられるかもしれません。
しかし、今回の資料は、適正な専門家連携まで否定するものではありません。
たとえば、民泊の開業支援会社が、施設運営の計画、清掃体制、管理方法、集客方法について助言し、行政手続については顧客が行政書士へ直接依頼する形で連携することは考えられます。
経営コンサルタントが、補助金活用に向けた経営分析、投資計画、収益計画、事業の方向性について支援し、官公署提出書類の作成については顧客本人又は行政書士が担うという役割分担も可能です。
設備販売会社が、設備の性能や導入工程について説明し、必要となる許認可申請については行政書士を案内することも、適正な連携となり得ます。
大切なのは、
- 誰が相談や本来業務を担当するのか
- 誰が官公署提出書類を作成するのか
- 顧客は誰と契約するのか
- 料金は何の対価として支払われるのか
- 誰が責任を負うのか
を明確にすることです。
役割分担と料金体系が透明であれば、周辺事業者と行政書士は、それぞれの専門性を活かしながら、利用者にとって質の高い支援を提供できます。
今回の資料は、連携を拒むためのものではなく、適正な連携の前提条件を明確にするためのものと捉えるべきでしょう。
今回の資料は、取締りのためだけではなく、業務設計を見直すための資料
日行連が、改正行政書士法の施行から約半年後の段階で、「報酬」の考え方をここまで具体的に示した背景には、改正法の趣旨を実際のサービス設計や業務提携の場面に反映させる必要があったことが考えられます。
現在のサービスでは、書類作成に対する対価が、単純に「申請書作成料」として請求されるとは限りません。
コンサルタント料、商品代金、工事費、仲介手数料、会費、顧問料、サブスクリプション利用料など、別の料金に書類作成が組み込まれる形もあります。
また、行政書士を紹介する形を取りながら、紹介元の事業者が料金や依頼関係を実質的に支配するような形になれば、利用者にとっても、責任の所在や費用の内容が分かりにくくなります。
令和8年1月1日の改正法施行後、日行連が初めて具体的な取引類型にまで踏み込んだ今回の資料は、無資格者による書類作成を防止するための注意喚起であると同時に、行政手続を取り巻く事業者と行政書士に対し、料金体系、契約関係、業務の分担を見直すよう促す資料といえます。
法律の境界を曖昧にしたまま、便利さだけを優先してサービスを提供することは、結果として利用者にも事業者にも大きな不利益を生じさせかねません。
一方で、それぞれの専門分野を尊重し、役割分担を明確にした連携であれば、利用者にとってより安心で、より実効性のある支援を実現できます。
今回の資料を機に、許認可や行政手続に関係するサービスを提供する事業者は、自社のサービスが「何を支援し、誰が書類を作成し、どの費用が何の対価となっているのか」を、改めて確認しておくことが重要です。
許認可手続や専門家連携に不安がある事業者の皆様へ
許認可や行政手続が関係するサービスでは、顧客の利便性を考えて提供していた付随サービスが、結果として法令上の問題につながる場合があります。
特に、民泊・宿泊事業の開業支援、建設業・産業廃棄物事業者向け支援、外国人雇用支援、設備導入支援、補助金活用支援などに関わる事業者の方は、自社のサービスに官公署提出書類等の作成が含まれていないか、料金体系や提携関係とあわせて確認しておくことをおすすめします。
つむぎ行政書士事務所では、許認可申請に関するご相談のほか、周辺事業者の皆様との適正な役割分担や連携方法についてもご相談を承っております。また、経営支援や事業計画の整理と、許認可手続との役割分担を意識しながら、事業者の皆様の実務に寄り添った支援を行っています。
業務の境界や提携方法に不安がある場合には、問題が表面化してから対応するのではなく、サービス設計や契約関係を検討する段階で確認しておくことが、安心して事業を進めるための第一歩となります。
参考資料
- 日本行政書士会連合会「行政書士法第19条第1項の『報酬』の考え方について」(令和8年6月)
- 日本行政書士会連合会「行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について」(令和7年11月1日会長談話)
- 経済産業省・グレーゾーン解消制度「補助金活用型経営コンサルティングの提供」(令和7年10月10日回答)
※本記事は、令和8年6月時点で公表・確認できる資料をもとに、改正行政書士法及び日行連資料の趣旨について一般的な考察を行ったものです。個別のサービスや業務が行政書士法に抵触するかどうかは、具体的な業務内容、契約関係、金銭の支払状況その他の事情により判断されます。
